■栗村さんからの回答

シクロクロスは、近年熱いジャンルですね。マチュー＆ワウト＆ピドコックはじめ、シクロクロス出身のロードレース選手の活躍も目立っています。

とはいえ、今回のご質問はシクロクロスの専門家ではない僕だと回答者として物足りないかと思いますので、かつて僕が監督をしていた宇都宮ブリッツェンの小坂光選手に聞いてみました。小坂選手は宇都宮市の職員としてフルタイムで働きつつ、ブリッツェンではロードレースとシクロクロスの二足のわらじを履き、しかもシクロクロス全日本選手権を二度も勝っているという、才能にあふれた努力家の選手です。

宇都宮ブリッツェン 小坂光選手

「ちょっと一言もらえませんか」というお願いだったのですが、びっくりするほど丁寧なアドバイスをいただきましたので、なるべく原文のままご紹介いたします。

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大学で日本一になるということは、すなわちU23の全日本チャンピオンになるということです。私もシクロクロスの全日本チャンピオンになることを目標に競技を始めたので、同じ目標を持ってくれる若者がいることを嬉しく思います。U23全日本チャンピオンになるためにすべきことを考えてみましょう。

まずはシクロクロスレースで求められる能力を知っておきましょう。シクロクロスのレースでは、絶対的なパワーはもちろん、それを1時間（U23は50分）繰り返すインターバル耐性、スタミナ、バイクコントロール、と様々な能力が求められます。

また、シクロクロスを始めたらいつか必ず実感する日がくると思いますが、パワーがいくらあってもテクニックが無ければそれを発揮できませんし、テクニックが優れていてもパワーが無ければ勝負には加わることができません。ですから、レースで勝負をするためには、前提として、フィジカルとテクニックを兼ね備えた選手になる必要があります。

質問者様はまだ若いので、フィジカルはこれから十分に高めていくことができると思いますが、テクニックは早いうちに身につけておくことをおすすめします。可能であればすぐにでもシクロクロスバイクを用意し、自由に操れるようになることが最優先事項だと思います。

シクロクロスのチームやコミュニティのライドに参加するのも良いですし、各地のレースでスクールが併催されていることも多いので、そこでスキルアップすることもできます。ライディングテクニックだけでなく、スムーズなバイクの乗り降りや、可能であればバニーホップも早めに習得しておくべきでしょう（私はバニーホップを習得してこなかったため困る場面が増えてきました......）。

また、ランニングと併せて部活動でスポーツをされているのであれば基礎的な体力はついてくると思いますが、競技としてシクロクロスを走るのであれば、自転車に乗る時間を伸ばしていく必要があります。自転車での長距離トレーニングやインターバルトレーニングも始められると良いと思います。

フィジカルとテクニックがある程度身に付いたら、レースに出場してみましょう。レース経験を積むことも非常に重要です。レース自体に慣れることも必要ですし、様々なコースを走ることで自分の引き出しが増えていきます。おそらくレースを経るごとに成長を感じることができるでしょう。私はそれがシクロクロスの魅力の一つだと思っています。機材への理解や、メカニック、ピットクルーとのチームワークなど必要な要素は他にもありますが、長くなるので割愛します。

2点目のシクロクロス選手のオフシーズンの過ごし方についてですが、シクロクロスのレースがない時期でも常にトレーニングやレースをしています。選手によって異なりますが、春～夏はロードレースやMTBレースを走っています。質問者様も来シーズンのシクロクロスに向けてオフシーズンのトレーニングとしてロードレースやMTBレースに参加できると理想的です。

最後に、少し現実的な話もしておきます。

私の場合、高校時代はサッカー部に所属し、毎年秋～冬にかけて、サッカーの試合がない週末だけシクロクロスのレースに参加していました。質問者様より少しだけシクロクロスを始めるのは早かったことになります。

本格的に自転車競技を始めたのは大学に入ってからで、競技歴が浅い割には早く結果が出始めたため、大学3年生になるタイミングで宇都宮ブリッツェンに加入するなど順調に力を付けていきましたが、U23全日本選手権で勝つことはできませんでした。

質問者様の世代で考えてみましょう。現U23全日本チャンピオンの選手は、高校3年生ながら、エリートカテゴリーの選手と走っても勝負できる実力を持っており、実際に今シーズンは国内AJOCCレースのC1でも優勝しています。

質問者様と年齢が一つしか変わらないことを考えると、今後3年間はU23全日本選手権で彼と戦う可能性が高いです。質問者様がU23全日本チャンピオンになるためには、この先3～4シーズン以内にシクロクロスの国内トップ選手達と勝負できる実力を身につける必要があります。

こう考えるとハードルは高く、意外と時間が無いことがわかると思います。

もし本気で日本一を目指すのであれば、そのための第一歩を今すぐにでも踏み出してみてください。

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なんと素晴らしい回答でしょう。トレーニングの進め方から将来の展望まで、完璧です。小坂選手、ありがとうございます。そして質問者さん、小坂選手のアドバイスを参考に、まずはできることを一つずつ積み上げていってくださいね。

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