■栗村さんからの回答

新しい切り口でのご質問ありがとうございます。そしていつも国内レースを盛り上げていただき感謝いたします。

意外と最近なんですよね、レースでのコスプレ観戦。私見では、アメリカのツアー・オブ・カリフォルニアあたりでコスプレのお客さんが目立つなあと思っていたら、その文化がいつの間にかヨーロッパに輸入された印象です。ただ、始祖は言うまでもなく「悪魔おじさん」ですね。最近はもう「悪魔おじいさん」ですが、ドイツのフレームビルダーさんだそうです。

そのコスプレ観戦ですが、レースの真剣勝負の場面ではコスプレのお客さんを邪魔に感じる選手は意外と多いかもしれません。というのも、選手からすると怖いんですよね。コスプレをしている人は視界や動きが制限されがちなので、衝突リスクがあるからです。

沿道でレース観戦をする悪魔おじさん

ですので、逆に言うと、選手に恐怖感を与えないコスプレ・動きができていれば問題ないでしょう。走行ラインに入らないとか、急な動きをしないとかですね。レースが急展開して、選手がピリピリしているタイミングでは自重するのもポイントです。まったり展開のときの安全なコスプレなら、選手もきっと楽しんでくれるでしょう。

コスプレ観戦の是非ですが、思うに、コスプレの目的が問われているのではないでしょうか。自己顕示が目的だと、どうしてもカメラに映ろうとするので結果的に危険な動きになりがちです。しかし、質問者さんのようにおもてなしの気持ちがメインならば、問題ないと思います。結局のところ突き詰めればレースもエンターテイメントであり、お客さんから楽しみを奪ってしまうと興行として成り立たなくなる可能性もあります。

その微妙なバランスについては、先述の悪魔おじさんが参考になります。彼がコスプレをはじめたころは、珍しかったのもあって国際映像にもバンバン映っていたんですね。コスプレが純粋にエンターテイメントだったわけです。ところがやがて、彼が映像を利用して自分の会社の宣伝をしはじめると、途端にカメラに抜かれなくなりました。利他心を利己心が上回ってしまったからです。

そのせいか、最近の悪魔おじさんは原点回帰したので再び国際映像でも見かけるようになりました。ツール・ド・フランスさいたまクリテリウムにも来日していますよね。

というわけで、コスプレは周囲を楽しませるおもてなしマインドが大切だという結論に至りました。目立ちたがりマインドが前面に出てしまったとき、周囲は冷めた目で見始めるのかもしれません。まあ、コスプレは目立ってナンボなのでそのあたりのバランスとりは難しいのですが、70歳になり悟りの境地に達したようにも見える悪魔おじいさんを、ぜひ参考にしてみてください。

最後に念のため観戦時の基本的な注意事項をお伝えしておきますね。

1.コーナーのイン側には立たない
2.常に選手の動きを注視して近付き過ぎない
3.他のお客さんの観戦の邪魔にならないようにする
4.突起物などのアイテムはなるべく持たない
5.カメラに映ろうとしない
6.セルフィーは禁止
7.飲酒時は遠目からレースを見守る

などです。

さらに皆さんがレース後のゴミ拾いなどを軽くでも行うことで、コスプレイヤーの地位向上に繋がっていくかもしれませんね。

文：栗村 修・佐藤 喬

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