栗村さんからの回答

「ロードバイクに乗っている彼女が欲しいです。どうしたら出来ますか？」。

まるで鍛え抜かれたヒルクライマーの身体のような、無駄のない端的な文章。しかし少ない文字数だからこそ、そこには質問者さんの思いつめた感じというか、「オレはとにかく彼女が欲しいんだ」という強い決心が感じられます。いいですね。

かつて存在した産経デジタルのサイト『Cyclist』からこちらに引っ越してから減ってしまったのがこの手のお問い合わせです。さすがJ SPORTSのサイトはマジメな方が多いのかな......と思っていたらこのご質問。少しニヤリとしてしまいました（？）。

では質問者さんの気迫に負けず、本気の質問には本気でお答えしましょう。

ロードバイク乗りの彼女を持つにいたる道は大きく分けて2つ。すでにロードバイクに乗っている女性とお付き合いするか、彼女になった女性をロードバイクの世界に誘（いざな）うかです。

まず前者ですが、簡単ではありません。サイクリストの女性を魅了するすてきな振る舞いは、とても難しいからです。

僕はガッツポーズ評論家なわけですが、実はガッツポーズに限らず、「サイクリストの格好良さ」一般に一家言ある人間です。たとえば......。

「マチューの逞しくも絞り込まれた上腕二頭筋と通常のロード選手よりも発達した前腕伸筋群が最高」
「レース中の力強さとは対照的な、ゴール後のマチューのオールアウトした姿にキュンキュンする」
「ワウトの大臀筋からハムストリングへの美しいラインに萌える」
「78kgの体重で峠を上る際のワウトのハイケイデンスペダリングを斜め後ろから見た時に心臓がドキドキする」

などなど、もはや一般の方々には理解が難しそうな萌えポイントがあります。

ハムストリングが美しいワウト・ファンアールト

僕に限らずサイクリストは上記のような萌えポイントを持っているでしょうから、もし質問者さんが、奇跡的にお相手の方の萌えポイントに訴求できれば、お付き合いは可能でしょう。でもそんなことはまずないでしょうし、サステナビリティはまた別です。現実的ではありません。

もう少し現実的なお話しもしておきます。

今や週末のサイクリングロードに行けば多くのサイクリストが行き交い、女性も頻繁に見かける時代です。だからといって、片っ端からカウンターアタックをしかけるようでは迷惑なサイクリストです。相手の女性もそんなことは求めてないですしね。女性が多いチームやクラブに入る手もありますし、SNS上にもコミュニティはありますが、出会い目的でギラギラしていると落車する可能性が高いです。コミュニティ内での集団落車を引き起こす可能性すらあります。

じゃあ具体的にどうすればいいのかですが、周囲を気遣えるサポート能力と、いざという時の強さ（速さ）をあわせ持ったサイクリストを目指してください。自分の力を誇示する急加速は御法度ですし、仲間がメカトラブルで困っているのにそのまま走っていってしまうような器では女性の心を掴むことはできません。

具体的に例を挙げると、常にチームメイトに寄り添うMクフィアトコフスキみたいな存在を目指してください。もしくは、絶妙なハンドルさばきでスプリンターをゴール前の発射ポイントまで運ぶMモルコフもオススメです。

僕の本気の回答、伝わっていますでしょうか。

一方、彼女になった女性をロードバイクに誘う際も基本は同じで、強さに裏打ちされた優しさを身につけてください。弱さを隠すための表面的な強さはダメです。彼女をロードバイクに誘う理屈として、最近耳にした中でいいなと思ったのが、コロナ禍で出かける機会が減ってメンタルがすり減っている今だからこそ、ロードバイクで大自然の中を走って「心の健康を取り戻そう！」という呼びかけです。そんな感じで、優しさを胸に具体的なメリットや目的を提示して誘ってみてはいかがでしょうか。

昔の人も言ったように、「急がば回れ」なんですよ。モチベーションが高いのはいいことですが、一朝一夕で結果を求めてはいけない。ロードバイクのトレーニングの成果がすぐに出ないのと同じで、目標が遠大なほど、小さな努力を淡々と積み重ねるほうがいいでしょう。有能なアシスト選手を手本にしつつ、他者貢献のマインドをベースに、女性がいるコミュニティにさりげなく身を置くのです。

「彼女を作る」というのは、「レースで優勝する」と同じくらい大きな目標なのかもしれませんね。コツコツとやるべきことをやっていれば、いずれ勝利の女神がほほ笑むでしょう。

文：栗村 修・佐藤 喬

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