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このブログについて

プロフィール写真【栗村修】
一般財団法人日本自転車普及協会
1971年神奈川県生まれ
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。豊富な経験を生かしたユニークな解説で多くの人たちをロードレースの世界に引き込む。現在は国内最大規模のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」の組織委員会委員長としてレース運営の仕事に就いている。 「栗村修の"輪"生相談」では、日頃のライドのお悩みからトレーニング方法、メンタル面の相談など、サイクリストからの様々な相談にお答えしております。栗村修に聞いてみたい、相談してみたいことを募集中。相談の投稿はこちらから。

2022年03月02日

【輪生相談】乗鞍75分切りを目指してトレーニングしています。強くなれるアドバイスをいただけますでしょうか

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いつも楽しく拝見させてもらってます。質問と言いますか相談です。54歳にして乗鞍75分切りを目指してトレーニングしてますがぜんぜん強くなれません。もう限界でしょうかね...何かアドバイスくだされば幸いです。宜しくお願いします。

(会社員 男性)

栗村さんからの回答

栗村さん

そのご年齢で75分切りというと、かなりのレベルですね。ハードにトレーニングされている様子が浮かびます。

まずお伝えしなければいけないのは、年齢とは無関係に、人間の肉体には限界があるということです。その限界が75分なのか60分なのかは生まれ持った資質や年齢などで決まります。だから、質問者さんが75分を切れるかどうかは僕にはわかりません。

寿命を縮めるような極端なことはせず、常識的な取り組みの範囲内では76分が質問者さんの限界かもしれませんし、追い込む余地が残されていれば70分を切れるかもしれない。もっとも、専属トレーナーなどを雇って様々なテストを行わないと、正確なことはわからないでしょう。

その一方で、正しいトレーニングを続ければ限界近くまで伸びていくのも事実です。だから人々はトレーニングを頑張るわけですが、ここで非常に重要なのが「頭打ち」という概念です。

トレーニングをはじめたばかりならぐんぐんと伸びますが、やがて伸びのスピードは鈍り、いつかは頭打ちする。それは質問者さんでも世界トッププロでも変わりません。

ただ、頭打ちには2種類あるんです。1つ目は、さっき書いたように、肉体的資質による頭打ち。年齢による限界をここに含めてもいいとも思いますが、いずれにしても、こればかりはどうしようもありません。

でも、もう1つの頭打ちは乗り越えられる可能性があるんです。それはメンタル面での頭打ちです。平たくいうと、マンネリですね。スランプとか、燃え尽きと言ってもいいでしょう。そして質問者さんのいう「限界」がメンタル面での頭打ちの場合、肉体的な限界はまだ先にあるかもしれません。

マンネリの原因はいろいろありますが、多いのは、「決めたことをやらなければ」という強迫観念に駆られて、ただ漠然と同じことを繰り返してしまっているケースです。いったん頭を冷やして、アプローチの方法を検証してみてください。少なくとも確実に言えるのは、質問者さんの場合、今の方法を続けても現状維持がやっとだということです。

今年42歳を迎えるも未だ世界のトップで活躍し続けるアレハンドロ・バルベルデ

じゃあどうすればいいのかですが、1つはトレーニングの方法を大きく変えること。メンタル面でのリセットも忘れないでください。

例えば、ウェイトトレーニングや他の有酸素運動など、身体の「基本性能」を向上させる運動を取り入れてはどうでしょうか。一時的にヒルクライムのタイムは落ちてしまうかもしれませんが、半年ほど続けて基本性能がアップした身体で再び自転車のトレーニングに戻ればタイムが伸びていく可能性があります。また、一時的に自転車のトレーニングを中断、もしくは減らすことで、自転車に対するモチベーションを回復させることも可能でしょう。

もう1つのやり方は、楽しみ方そのものを変えることです。質問者さんのように数字だけを追求し続けるのは、正直、かなりリスクがあると思います。ならばロードバイクとの向かい合い方を変えて、大自然の中で仲間と戯れあいながら競争したり、数字に囚われない自然な追い込み方を探してみてはいかがでしょうか?

トレーニングで成績を上げたい人にとっても、単に長くロードバイクを楽しみたい人にとっても、「頭打ち」という名のマンネリが敵になります。そこを乗り越えるには、近視眼的になってしまっている自分を見つめなおして少しリフレッシュしたり、やり方を変えるのがいいでしょう。楽しむことと速くなることは、実はイコールなんですね。

文:栗村 修・佐藤 喬

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