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落車、最強のライバル……逆境を跳ね返したポガチャル 待望の「春」をつかむ|Cycle*2026 ミラノ〜サンレモ:レビュー
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介優勝ポガチャル、2位ピドコック、3位ファンアールト
レース終わりからどれだけ時間が経っても、この驚きと感動を言葉で表現するのは難しい。目の肥えたヨーロッパのサイクルファンやメディアでさえも、それを「史上最高の“ラ・プリマヴェーラ”」と評する。われわれが目にしたものをひとつずつ理解し、味わう。やはり驚きと感動しかない。
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Cycle*2026 ボルタ・ア・カタルーニャ 第2ステージ
配信日時 : 2026年3月24日(火)午後11:20 ~
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Cycle*2026 ボルタ・ア・カタルーニャ 第3ステージ
配信日時 : 2026年3月25日(水)午後11:50 ~
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Cycle*2026 ボルタ・ア・カタルーニャ 第4ステージ
配信日時 : 2026年3月26日(木)午後11:20 ~
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至高のワンデーレース、ミラノ〜サンレモの2026年大会は298km、6時間35分に及ぶ激闘の末、タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ・XRG)が初制覇。要所での落車から驚異的な集団復帰、勝負どころのチプレッサとポッジオでのアタック、そしてトーマス・ピドコック(ピナレロ・Q36.5プロサイクリング チーム)とのマッチスプリント。
長く語り継がれるであろう歴史的なレースを、主役たちの言葉とともに振り返ってみたい。
ポガチャル「間違いなくキャリア最大の勝利のひとつ」
プロトン最高のライダーにしても、手に入れられていなった勲章。それをつかむためのキャリア最大の挑戦こそが、ミラノ〜サンレモだった。
途中で落車に巻き込まれ、傷を負った。さらには、この日最大のライバルとなったピドコックには最後の最後まで食い下がられた。初のミラノ〜サンレモのタイトルは、そんな逆境を乗り越えて得たものとなった。
「間違いなくキャリア最大の勝利のひとつだよ。やっと勝つことができた。ミラノ〜サンレモは何よりも予測不可能なレース。今日だってどうやって勝ったのかあまりよく覚えていないんだ。ただただ全力を出し切っただけ。この事実を実感するまでは当分時間がかかりそうだよ」(ポガチャル)
混沌としたプロトン、予想外の展開、それさえも打ち破ったポガチャル。ミラノ〜サンレモの歴史にまたひとつ、伝説が加わった。
ポガチャルは初制覇に咆哮
第117回目のミラノ〜サンレモは、レース距離298km、不動の勝負ポイントであるチプレッサとポッジオが待つ海沿いのコースが用意された。
リアルスタートと同時に飛び出した選手へのコース誘導ミスが発生するなど、序盤は慌ただしくしながらも、やがて9人が先行を開始。ほどなくしてメイン集団ではアルペシン・プレミアテックがペーシングを担い、3分前後のタイム差で進行した。
前半は今年もアルペシン・プレミアテックが集団を牽引
長いこと構図はそのままだったが、フィニッシュまで80kmを切ろうかというタイミングでUAEチームエミレーツ・XRGが集団の牽引役を引き受け、少しずつペースが上がっていく。いくぶん拡大傾向だった先頭グループとのタイム差はあっという間に縮まり、射程圏内に。この間、イネオス・グレナディアーズの複数人が落車するなど、集団内の緊張感が高まっていく。
カーポ・ベルタを上る残り40km地点で先頭グループは崩壊。その約1分30秒後ろではUAEやイネオスが前を固め、ポガチャルも姿がはっきりと見える位置へと上がってきた。その後ろにはマチュー・ファンデルプール(アルペシン・プレミアテック)やフィリッポ・ガンナ(イネオス・グレナディアーズ)が続いている。
重要局面へ向け、メイン集団では各チームが隊列を組んで前方を固めつつあった。そんな状況下で大きなアクシデントが発生。マイヨ・アルカンシエルが地面に叩きつけられてしまった。
「正直、あの瞬間は終わったかと思った。レースの一番重要な局面が見えている状況だったからね。理想的ではなかったけど、幸運だったのは僕の体もパイクも大きなダメージがなかったことだった」(ポガチャル)
このクラッシュには、マチューのほかワウト・ファンアールト(チーム ヴィスマ・リースアバイク)らも巻き込まれた。マチューは早い段階で集団に戻り、ポガチャルはフロリアン・フェルミールスとフェリックス・グロスシャートナーのアシストを受けながら、ワウトはバイク交換に時間を要しながらも何とか前線へと復帰した。
その間も集団のペースは上がる一方。残り27kmでのチプレッサ突入と同時に逃げていた選手たちを捕らえると、イネオスが主となって集団を縦長にする。そのはるか後ろで上り始めたポガチャルだったが、ブランドン・マクナルティの高速牽引で猛然とポジションアップ。1kmも行かずして先頭に立つと、イサーク・デルトロの引き上げを受けて頂上手前2.5kmでアタックした。
チプレッサで集団復帰するとそのまま集団先頭へ
「できることなら独走したかったのだけれど、トム(ピドコック)とマチューがとても強かった。この先どうしようかと思ったけど、彼らも攻めていたし、ポッジオでの勝負に気持ちを切り替えた」(ポガチャル)
ポガチャル、ピドコック、マチューの3人は集団に対して20秒から30秒差でリードを続ける。メイン集団ではワウト擁するヴィスマや、マッズ・ピーダスンを押し上げたいリドル・トレックなどが追走の意思を見せる。ただ、先頭3人とのタイム差はなかなか縮まらない。
ポガチャル、ピドコック、マチューの3人が抜け出しタイム差をつけ始めた
形勢はそのまま、最終登坂のポッジオへ。残りは9km。再びポガチャルがペースを上げると、今度はピドコックだけが対応。マチューは付き切れず、自身のペースを維持するので精いっぱい。ポガチャルは数回強く踏み込んだが、ピドコックだけは引き離すことができなかった。
頂上からの下りもきっちりこなした2人は、先頭交代を繰り返しながら残り距離を急ぐ。その後ろでは集団がマチューをキャッチし、替わってワウトが単独で追走。少しずつポガチャルとピドコックの姿が大きく見えるようになるが、届きそうにはない。優勝争いはポガチャルとピドコックに絞られた。
マッチスプリントにゆだねられた最後の勝負。ポガチャルが前に立ち、最終ストレートへ。残り200m、ピドコックの動きに合わせてポガチャルもスプリントを始めると、ライバルに一切前を譲らない。わずかな差でポガチャルが先着すると、右こぶしを握り勝利の咆哮を上げた。
右こぶしを握り勝利の咆哮
ミラノ〜サンレモとの別れを示唆
一昨年、昨年と3位で終えており、この大会への並々ならぬ執着を見せていたポガチャル。6度目の挑戦でついに栄冠を手にし、これでクラシック最高峰のモニュメントのタイトルは4つ目に。残すはパリ〜ルーベだけとなった。
「向かい風が強くて、トムとマチューと逃げようにもあまり理想的な状況ではなかった。何よりトムが本当に強くて、2人になってからは“もしかしたら勝てないかも……”と思ってしまったほどだよ。彼にはパンチ力があるし、コンディションも良さそうだった。それでも僕が勝てたのは、ただただ幸運だったからなんだ」(ポガチャル)
優勝後はチームの枠を超えて祝福を受けたポガチャル
過去5回のミラノ〜サンレモ参戦は、ポガチャルにとって敗北の歴史でもあった。そして今、雪辱するとともにこのイベントから解放される時がやってきた。
「やっと勝ててホッとしているよ。毎年のようにこの場所でトレーニングを積んできたから、これからはちょっと寂しくなるかもね。どういう意味かって? 今後サンレモに戻ってくるとしたら、フォカッチャを食べるためになるんじゃないかな……」(ポガチャル)
つまりは、ミラノ〜サンレモからの“卒業”ということか。準備段階で週2回サンレモを走っていて、冬場もモナコの自宅から足を運んでいたのだという。ただライドするだけならまだしも、交通量が多い中を走らねばならず、毎回のようにストレスを感じていた。加えて、300km近い距離を走るレースにはとてつもない負荷が心身にかかっていたとも。
レース後のポディウム前には、ピドコックにも同様の話をしていたというポガチャル。ここ数年こだわり続けた“春”に終止符を打つことになるのだろうか。
「とりあえずは回復に努めて、ベルギーのレースに向かうよ。次はフランドル(ロンド・ファン・フラーンデレン)とルーベ(パリ〜ルーベ)だ。今はこのふたつが待ち遠しいよ」(ポガチャル)
ピドコックとワウトは敗れても前向き
ポガチャルに最後まで食らいついたピドコック。優勝まではあと一歩届かずも、自己最高成績となる2位。マッチスプリントでのラインをバリア側にとったが、ポガチャルと重なったことでわずかに減速。左側に回らざるを得なかったことが敗れた一端になった。
「あと4cm足りなかったよ。本当に惜しいことをした。悔しいけど、できるだけポジティブにとらえたい。タデイとあれだけの勝負ができたんだ。彼は落車していたのに、それでも勝つためのあらゆる手段を尽くしていた。やっぱりすごいよね。次は僕が勝てるかって? そんな単純な話じゃないよ。どんなレースになるのか、そのときにならないと分からない。またチャンスをつかめるよう努力はしていくよ」(ピドコック)
ピドコックはチームメートと共に終始集団前方に位置していた
最終局面でトップ2に迫ったワウトは復活アピールの3位。シクロクロスでの負傷でロードのシーズンインが遅れたが、このレースにしっかりと間に合わせた。ポガチャルと同タイミングでの落車によって劣勢を強いられたが、最終盤は単独追走を試みていた。
「集団スプリントを選んでいたら3位にはなれなかっただろうね。落車後の集団復帰で脚をかなり使っていたんだ。ひとりで追走した理由? 集団を牽引していたのがリドル・トレックだけだったんだ。それも働いていたのはジュリオ・チッコーネだけ。アタックするチャンスかと思ってトライしたんだ。その場の思い付きだよ。優勝できなかったことは残念だけど、全力を尽くしたし3位でもうれしいよ」(ワウト)
ポディウムで晴れやかな表情を見せた3人とは対照的に、8位で終えたマチューは落車を悔やむ。ポガチャルやワウトらのクラッシュに巻き込まれた際に左手の指に裂傷を負っていた。
「誰かが左側から突っ込んできて、手をけがしてしまった。これでハンドルが思うように握れなってしまって……。ポッジオでは限界で、チームの無線に“もうハンドルを握れない”と伝えたんだ。やれるだけのことはやったんだけどね。けが自体はひどくないと思うけど、しばらくは様子を見てみないといけないね」(マチュー)
“ラ・プリマヴェーラ”が終わり、本格的な春を迎えたサイクルロードレースシーン。クラシック戦線はベルギーへと移っていく。その舞台は石畳。ポガチャルやワウト、マチュー、ピーダスンらが引き続きトップの座を争う。ミラノ〜サンレモで喜んだ者、悔いた者、さらには伏兵まで。熱き戦いはより深いところへと進んでいく。
文:福光 俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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