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サイクルロードレース コラム 2026年2月24日

イサーク・デルトロがチームにホームレースのタイトルもたらす 名物ジェベル・ハフィートでは従来の登坂タイムを塗り替える|Cycle*2026 UAEツアー:レビュー

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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UAEツアー

総合優勝デルトロ、2位ティベーリ、3位プラップ

2月16日から22日の日程で開催されたUAEツアー。個人総合争いは今回も2つの山岳ステージがポイントとなり、最終日前日・第6ステージで会心の走りを見せたイサーク・デルトロ(UAEチームエミレーツ・XRG)がリーダージャージを手に。最後までその座を守り切り、第8回大会の覇者に輝くとともに、ホームチームとして臨んだUAEチームエミレーツ・XRGにタイトルをもたらした。

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ジェベル・ハフィートでの驚異的登坂で勝利を引き寄せたデルトロ

UAEチームエミレーツ・XRGにとって、この大会はときに「ツール・ド・フランスに次ぐ重要レース」と首脳陣が口にするほど外すことが許されない一戦である。それもそのはず、チーム本拠でのレースであり、事実上の国家プロジェクトであるこの組織に携わる面々が間近で選手たちの走りを観る機会にもなっているのだ。絶対エースであり、現在のプロトンにおいて最高のライダーであるタデイ・ポガチャルが過去3度この大会を制していることこそが、何よりの証明でもある。

今年はポガチャルに代わり、デルトロがチームの牽引役を担った。昨シーズン、数々のレースで表彰台の一番高いところへ上がり、ジロ・デ・イタリアでも初のグランツール総合表彰台となる2位獲得。すっかりスーパースターの仲間入りを果たした22歳がホームレースの総合エースを務めた。

今大会に臨むにあたり、ポガチャルから「プレッシャーに思う必要はない」と声をかけられていたという。「大事なのは全力を出し切ること。そうすれば、どんな結果であってもチーム一丸となって戦ったことを誇りに思えるから」とも。

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背中を押されたデルトロは、第1ステージから奮起。リワ宮殿前の上りスプリントで一気に踏み込んで一番にフィニッシュ。今季初レースだったこともあり、どこまでやれるか疑問だったというが、確かな手ごたえをつかんで続くステージへと進んでいった。

第2ステージの個人タイムトライアルで順位こそ下げたものの、続く第3ステージ、ジェベル・モブラ登坂で挽回。上り始めてすぐに一度集団内のポジションを下げてしまうが、先制攻撃に出たアントニオ・ティベーリ(バーレーン・ヴィクトリアス)を冷静に追走。結果的にティベーリには届かずも、総合タイム差を21秒として大会後半戦へ。

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母国応援団が駆けつけたイサーク・デルトロ

圧巻は第6ステージだった。名物ジェベル・ハフィート登坂で、その力を見せつけることとなる。かつてこの大会を制したことのあるアダム・イェーツのペースメイクを受けて、デルトロは残り4km手前でアタック。これを読んでいたティベーリが食らいついたが、1.5kmほど進んだところで再アタック。粘るティベーリを引き離すと、独走で頂上のフィニッシュラインへと飛び込んだ。

「勝てると信じて上り続けた。メンタル勝負だったよ。最後の2.5kmは全力で走り続けた。キャリア最高のレースができたと感じている」(デルトロ)

登坂距離10.8kmのジェベル・ハフィートを25分15秒で走破。イェーツが持っていた25分53秒の登坂記録を大きく更新した。今シーズンの活躍を予感させる、驚異的なクライミングだった。

奪還したリーダージャージを最終日も守り切り、初めてとなるUAEツアー戴冠。チーム目標も無事達成となった。

「この大会を勝つことはチームの夢でもあり、僕の夢でもあったんだ。全力を尽くして本当に良かった。リーダージャージで大都市アブダビの街に到達できるなんてどれだけ幸せなことか…。ライダーとしてはまだまだ学ぶことが多いから、一歩一歩着実にキャリアを積み重ねていきたいね。UAEツアー勝利はその第一歩だよ」(デルトロ)

3月に入り、ストラーデ・ビアンケ、ティレーノ~アドリアティコ、ミラノ~サンレモとビッグレース連戦を予定。かねてから「ポガチャルと一緒にツール・ド・フランスを走れることが楽しみ」と公言するが、ストラーデ・ビアンケとミラノ~サンレモはその試運転の場にもなる。UAEでの快走によって、先のレースへ楽しみが一層膨らんでいる。

不発のレムコ 要因はビッグギア? エアコン?

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大会前はデルトロと並ぶ“2強”と目されていたのが、レムコ・エヴェネプール(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)。1月下旬から2月上旬にかけてスペインのレースで6勝を挙げて、絶好調でUAE入りしているものと誰もが思っていた。

しかし、である。第2ステージの個人タイムトライアルこそ勝ってみせたものの、2つの山岳では、第3ステージ18位、第6ステージ15位と不発。前者ではティベーリに2分4秒遅れ、後者ではデルトロに52秒の差をつけられた。

本人によれば、この敗戦にはさまざまな要因があるという。個人タイムトライアルを勝った際に採用した68Tのチェーンリングが自身のキャパシティを超えており、回復できないまま翌日の山岳ステージを迎えてしまったことがひとつ。また、その夜にはホテルのエアコンが故障し、暑さに耐えながら一晩を送ったことがまたひとつ。

そして何より、総合成績を狙うにはトレーニングが不足していたこと。「高地トレーニングをしていない状態だから、この結果は致し方ない」とはレムコの弁。今大会後にチームの主力ライダーとともに高地トレーニングに出かけるといい、ここから仕上がっていくはずだと本人の自信は揺らいでいない。

本来の強さはレースを追っている者ならみんな知っている。ツール・ド・フランスでの上位進出に向けて、いまは段階を追っているところを見るのが正しいのか。3月のボルタ・ア・カタルーニャが次のレースとなる予定で、そこで改めてレムコの現在地を把握することができるだろう。

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総合10位だったレムコ・エヴェネプール

“非公式”世界スプリント選手権はミランが圧勝

UAEツアーといえば、スプリントも花形。例年トップスプリンターが集結し、平坦ステージでしのぎを削ってきた。

当然今年もスプリンター陣の動向が注目され、その戦いを非公式の「世界スプリント選手権」と位置付ける向きもあったが、ふたを開けてみればジョナタン・ミラン(リドル・トレック)の強さが際立った。

ミランは第1ステージこそ最終局面手前でのクラッシュで勝負に加わることができなかったが、ステージ成績を狙うことのない第2・第3ステージでリカバリー。立て直しを図ると、第4ステージでまず1勝。勢いを取り戻して第5ステージでも勝利を続けた。

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最終日に区間優勝してポイント賞で首位となったミラン(それまではデルトロの繰り下げ着用)

今大会、ミランが特にこだわっていたのが最終・第7ステージのアブダビフィニッシュだった。昨年はアブダビで敗れており、今回は雪辱戦。狙い通りリベンジを果たし、ポイント賞も確定させた。

「チームメートの働きを思えば、勝つことしか自分には求められていなかった。他のスプリンターに先を行かれるわけにはいかなかったし、思っていた通りの結果になって本当にうれしいよ」(ミラン)

大会最終日の舞台となった首都アブダビは2028年のロード世界選手権の開催地に決まっており、近いうちにそのコースが作成される見込みだという。「スプリンター向けのコースになることで大筋は決まっている」とはUCI関係者。UAEツアーとしても2027年と2028年大会ではプレイベントになることを臨んでおり、スプリント戦線は今年以上の顔触れが期待できる状況にあるという。ミランもそのひとりとして、当然リストアップされるはずだ。

自信を得たティベーリ、アウトサイダー的存在へ

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ジェベル・モブラを制したティベーリ

今大会のヒーローのひとりにティベーリも挙げておこう。第3ステージを勝ち、3日間リーダージャージを着用。第6ステージでデルトロに敗れてその座を明け渡したが、最終的な総合タイム差は20秒。総合系ライダーとして注目度が高まる中、いま一度その存在感をアピールする結果を残した。

「個人総合2位は個人的にも、チームとしても大満足の結果。第3ステージではキャリア最高の勝利を挙げられて、特別な経験を得られた。1メートル進むたびに楽しさが増していく感覚だったよ」(ティベーリ)

過去2回のUAEツアー参戦では、その後のシーズンやグランツールにつながる良いレースができた実感があったという。3回目の出場となった今回、これまで以上の成果を挙げ、いよいよ目指すところはより大きなものとなる。

「今年はツール・ド・フランスを最大目標に据える。挑戦するには今が最高のタイミングだと思っているんだ」(ティベーリ)

「キャリアの転機を迎えている」とは、チームを率いるロッド・エリングワース氏。チーム内での信頼度も高まっており、この夏にはティベーリを盛り立てるバーレーン勢の熱い姿が見られるに違いない。

舞台は中東からヨーロッパへ

シーズン序盤恒例の中東諸国のレースは、これでおおむね終了。2月の終わりには、“オープニングウィークエンド”とも呼ばれるベルギーでのセミクラシック、オンループ・ヘット・ニュースブラッドが行われ、本場ヨーロッパでのレース開催が加速していく。ゆっくりと調整を進めていた選手たちも本格的に動き出し、レースレベルは一気に上昇する。

新たな歴史が生まれ、ドラマに心打たれること間違いなしの2026年シーズン。まだまだ始まったばかりである。

文:福光 俊介

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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