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栗村さん、こんにちは。10年程ロードバイクにご無沙汰していますが、久々に乗りたいと思っています。最近はディスクブレーキが主流になっているようですが、リムブレーキとそんなに違うものでしょうか。一般ライダーでも違いが感じられる程の違いでしょうか。また、ディスクブレーキの導入以降、ツール・ド・フランスなどプロのレースシーンにはどのような影響がもたらされたのでしょうか。
(男性 管理職)
僕自身も、長いブランクを経てロードバイクに復帰したら、周囲がみなディスクブレーキバイクに変わっていて「浦島太郎」状態になった一人なので、率直にお答えしますね。
まず、ブレーキとしての性能は、明らかにディスクブレーキの方が上です。純粋な制動力だけでなく、速度コントロールのしやすさという点でもそうですし、特に雨天時の制動力に関しては雲泥の差があります。一方で、ドライコンディションにおける通常のブレーキングであれば、致命的な差が出るほどではありません。また、輪行のしやすさや車載時の取り回しといった扱いやすさの面では、リムブレーキバイクのほうが優れていると感じています。さらに、メンテナンス性については、僕がリムブレーキ世代ということもあって余計にそう感じるのかもしれませんが、油圧ディスクはなかなか難易度が高いと感じます。もはや自分で気軽に整備するというより、専門店に任せる前提の機材になりつつあるのかもしれません。
ただし、ディスクブレーキバイクの強みは、ブレーキ性能そのものだけではありません。ブレーキシステムの変更に伴い、より太いタイヤを装着できるようになったことや、フレーム剛性の向上といったメリットもあります。また、油圧ブレーキであればホースの取り回しが自由なため、エアロ形状のフレーム設計を採用しやすくなった点も大きな特徴です。
こういう細かな変化の結果、「速さ」に関しても、ディスクブレーキバイクがリムブレーキバイクを上回ってきたのは間違いありません。唯一、軽さだけはリムブレーキバイクのほうが有利でしたが、近年のディスクブレーキバイクは軽量化が進んでいるので、そこも互角になりつつあります。
こういう差を質問者さんが感じられるかどうかですが、もちろん感じられるでしょう。とくに、タイヤが太く、低圧になった快適さは、すぐにわかるはずです。ただ、僕の印象としては、「絶対にディスクブレーキバイクに買い替えるべし!」というレベルではありません。競技としてロードバイクに乗るならディスクブレーキがオススメですが、晴れた週末にサイクリングロードを流す程度だったら、リムブレーキでも何の問題もないでしょう。
ディスクブレーキバイクがリムブレーキのバイクよりも有利な面が多いのは間違いありません。それは、もともと速度域が高く、エアロの恩恵を強く受けるプロのレースを見ていればはっきりわかります。近年のレースで多い逃げ切り勝利も、機材のエアロ化と無関係ではないでしょう。
でも、忘れてはならないのは、人体そのものの強度は変わっていないという点です。皮肉なことに、ブレーキ性能が向上し、タイヤが太くなってグリップも高まっているはずにもかかわらず、プロレースにおける重大事故は減るどころか、むしろ増えているようにも感じられます。レース中継を見ていても、カメラモトが映し出す下りの走行速度が100km/hを軽く超える場面は、もはや珍しくありません。しかも、選手たちは脚を止めています。
私が現役だった頃は、プロレースであっても100km/h超という数字は、そこまで頻繁に目にするものではありませんでした。もちろん、レースの高速化はさまざまな要因が積み重なった結果ですが、その一因として、本来は安全装置であるはずのブレーキシステムの進化がバイク全体の高速化に寄与し、結果として制動力向上のメリットを上回るリスクをレース界にもたらしている側面も否定できません。しかも、防具といえば依然として軽量なヘルメットが中心です。つまり、かつてのリムブレーキバイク時代であれば55km/hで転倒していた状況が、ディスクエアロロードでは70km/hでの転倒に変わっている可能性もあるのです。その増大したダメージは、最終的には人体が受け止めるしかありません。
話を戻しますと、ディスクブレーキバイクの方が、より安全に、より快適で、より速く、ブレーキ性能にも優れていることは間違いありません。質問者さんも実際に乗れば、その違いをはっきりと感じ取れるはずです。ただし、すべての人にとってマストな選択かといえば、そこにはやや疑問も残ります。リムブレーキのバイクを大切に乗り続けるという選択も、十分に価値のあるものだと思いますよ。
ブレーキシステムの進化はバイク全体の高速化をもたらしたが、すべての人にとってマストな選択ではない。
文:栗村 修・佐藤 喬
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栗村 修
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。 17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。 引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。
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