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新鋭ヤン・クリステンが落車とペナルティを乗り越え総合V 最終日に独走勝利でリーダージャージたぐり寄せる|Cycle*2026 アルウラー・ツアー:レビュー
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介最終日にステージ優勝をしたヤン・クリステン
UAEチームエミレーツ・XRGの底力を象徴する戦いだった。1月27日から31日まで行われたステージレース、アルウラー・ツアーは最終・第5ステージでヤン・クリステンがステージ優勝と合わせて個人総合でもトップに。最後の最後での大逆転で、21歳のスイス人ライダーが表彰台の頂点に立った。
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「最終日まで勝負は決まらないと分かっていた。チームのみんなが“君ならできる”と励ましてくれて、僕が勝負できるようたくさんの仕事をしてくれていたんだ。どうしても応えたくて、フィニッシュラインまで全力で走ったよ。勝てて最高の気分だ!」(クリステン)
ミランが前評判通りのスプリントで2連勝
ユネスコ世界遺産に登録される美しき景観に、中東らしさを感じさせる市街地。少し視野を広げてみると、その周りには近代的な建造物も。時代を生きる街、アルウラーを基点に5日間の戦いが行われた。今年からはUCIプロシリーズとなり、よりステータスの高いレースに仕上がった。
序盤戦はスプリンターが主役。第1ステージでは、中東レースではおなじみの横風分断が随所で発生。いくつにも集団が割れた中で、最前線に生き残ったメンバーによるスプリント勝負。昨年のツール・ド・フランスでポイント賞を獲り、今季は2年ぶりのジロ・デ・イタリアの同賞を狙うジョナタン・ミラン(リドル・トレック)がシーズン最初のレースで勝利を挙げる。
スプリントステージで強さを見せたジョナタン・ミラン
ミランは続く第2ステージでも強さを発揮。中盤に一度は集団が分断しながら、最終盤を前にふりだしに戻ったレースにあって、しっかりとスプリントを制した。チームとしてエーススプリンターを盛り立て、最終局面では何枚ものリードアウトマンがミランの発射に向けて状勢を整えていた。
個人総合争いが動いたのは、第3ステージだった。今大会唯一の山頂フィニッシュとして、ビル・ジャイダ・マウンテンに選手たちは挑んだ。フィニッシュ前6kmから始まった最終登坂で散発的にアタックがかかり、応戦するメンツの中にはクリステンの姿もあった。フィニッシュを目前にセルヒオ・イギータ(XDS・アスタナ チーム)が加速すると、反応できたのはヤニス・ヴォワザール(チューダー・プロサイクリングチーム)とアフォンソ・エウラリオ(バーレーン・ヴィクトリアス)の2人。最後はヴォワザールがエウラリオとイギータを引き離し、一番に頂上のフィニッシュへ。レースリーダーとしての役目を終えたミランに替わり、ヴォワザールが個人総合で首位に立った。
ヤニス・ヴォワザールが大金星
アタックタイミングを定めたクリステンが大逆転へ渾身の独走>
平坦基調のルートに戻った第4ステージも、やはり集団は横風によって分断。とりわけハイスピードの展開となったなか(平均時速49.374km!)、2日ぶりとなるスプリント決着。ミラン有利かと見られた勝負は、マッテオ・マルチェッリ(XDS・アスタナ チーム)が大勝利。リードアウトの枚数が減り、スプリントのタイミングに幾分苦慮したミランの隙を見逃さなかった。
このステージでは、個人総合上位陣の一部が一時的に分断の後方に取り残される局面があったものの、何とか前線復帰しタイムロスを免れている。ヴォワザールが首位で最終日へと進んだ。
そして、運命の最終・第5ステージ。終盤まで平坦区間が続くが、フィニッシュ前14kmからその趣きは一転。最大勾配20%超のハラッド・ウワイリドが大きくそびえたつ。登坂距離こそ2.5kmだが、集団を崩すには十二分な難コースである。さらに、頂上からフィニッシュまでの8.3kmは強風。この日は向かい風が選手たちを苦しめると予想された。
逃げグループを射程圏内に捉えながら、集団は満を持してハラッド・ウワイリドを上り始める。主導権を獲ったのはUAEチームエミレーツ・XRG。すると、彼らのペースにリーダージャージを着るヴォワザールがついていけなくなった。
さらにはエウラリオも遅れ、バーチャルリーダーはイギータとなる。ただ、クリステンでの逆転に執念を見せるUAEは一貫してハイペースを刻み続ける。数人がアタックしたのを見てクリステンがみずから追走すると、頂上通過直後に先頭合流。牽制気味になったと見るや、クリステンは渾身のアタック。フィニッシュまで6kmを残して独走を試みた。
「向かい風が強いことは理解していた。だから、上りでは無理をせず、頂上通過後が肝心だと考えていたんだ。平坦でアタックを決められれば、クライマーより先を行けるだろうと思っていたからね」(クリステン)
その読みが的中した。終盤の独走という得意のシチュエーションとあらば、後続が抵抗を試みようともグラつかない。遠くに、追走を図る動きがかすかに見えるけれど、クリステンのペースは落ちることはなかった。
ステージ優勝はもとより、2位に11秒差、3位以下に32秒差をつけ、ボーナスタイム10秒と合わせて個人総合トップへジャンプアップ。最終日での大逆転で、クリステンの大会制覇が決まった。
総合優勝のヤン・クリステン
UAEチームエミレーツ・XRGはワン・スリーフィニッシュ
2023年のシーズン途中に現チームでデビューし、今季は実質プロ4年目。小さなレースで勝利を積み重ねてきたが、昨年はクラシカ・サン・セバスティアンで2位となり、ツール・ド・ポローニュでは総合表彰台争いにも加わった。今年はプロ入り初めてとなるグランツールとしてジロ出走を予定。ワンデークラシックではタデイ・ポガチャルとの共闘も見込まれる。順調な成長曲線を描き、その期待度は2030年までの長期契約をチームと結んでいることからも分かる。
「ステージレースの個人総合優勝はジュニアのとき以来だよ。この5日間は本当に楽しくて、最後まで勝つことを諦めなかった。チームからの信頼も感じていて、素晴らしいチームワークのもとで走ることができたよ」(クリステン)
大会前から上位進出を期待されていたクリステンだが、振り返ってみれば激動の5日間だった。第1ステージでは2度も落車に見舞われ、集団復帰時にチームカーを使って風よけしたとして20秒のペナルティが課されていた。
挽回を図った第3ステージでも不発。最終・第5ステージをスタートする時点では、トップとの総合タイム差は33秒あった。
「完璧に走らないと逆転は難しいと思っていたから、勝てて信じられない気分だよ。うまくいって本当に良かった。僕のキャリアにとって大きな意味を持つ総合優勝に成るだろうね」(クリステン)
劇的勝利のクリステンに続き、23歳のイゴール・アリエタも第5ステージ3位のボーナス4秒を活かして個人総合でも3位入賞。UAEチームエミレーツ・XRGの若武者たちがワン・スリーフィニッシュを果たしている。
これほどのハイレベルの戦いに交じり、日本籍のチーム右京も奮闘。第2ステージでは寺田吉騎と山本哲央がスプリントに参戦したほか、毎ステージ逃げにトライ。ニコロ・ガッブロがチーム最上位となる個人総合13位となったほか、チーム総合では4位で大会を終えている。
文:福光 俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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