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2025年シーズンもポガチャル選手が無双しました。もはや体調不良などがない限り、他の選手が彼に勝てるイメージが湧きません。ポガチャル選手は他の選手と比べて何がそんなに優れているのでしょうか。身体能力、技術、精神力、チーム力など色々な要素があると思いますが、映像を見ていてもどこが飛び抜けているのかいまいちわかりません。ポガチャル選手の強さがどこに由来するのか教えてください。
(男性 管理職)
世界中のサイクルロードレース関係者が日々、考えているテーマですが、ある程度のヒントは見えているようです。
たとえば、フィジカル能力に関しては、「乳酸クリアランス」すなわち、回復力が異様に高い、という情報が、チームのコーチのインタビューほか、複数の信頼できそうなソースから聞こえてきます。
要するに、回復が早いんですね。ですから、絶対的なパワーが極端に大きいというより、他の選手が3回しかできない強度でのアタックを、ポガチャルは10回できるようなイメージです。あるいは、アタック後にわずかにペースを落とすだけで、その短時間のうちに再びアタック前の状態まで回復してしまう。かつてのピーター・サガンに近いかもしれません。
この回復力を活かし、長い上りでのハイケイデンスのシッティングも、身体をクネクネさせる独特のダンシングでのアタックも、圧倒的です。また、技術面も素晴らしい。なんといっても落車が少ないですし、位置取りも上手いです。
さらに最近では、ポガチャルの「脳」が非常に高性能である、という関係者のコメントも紹介されていました。クルマで言えば高度な電子制御システムのようなもので、要するに、筋肉や身体各部の使い方が極めて効率的だということです。ひと言で書くと「無駄がない」。
いくら心肺機能が優れていても、あるいは筋肉そのものが高性能であっても、それを自転車の推進力へと的確に変換し、なおかつ省エネで運用できなければ、特に長距離のロードレースで勝ち続けることはできません。ポガチャルは、まさにこの能力が生まれつき非常に優れている選手なのだと思います。
そして、最近ではチームもいい。チームメイトとの関係もいいし、それを維持する人間性というか、マネジメント能力もポガチャルは持っています。ライバルに対してもそうで、いい関係を築きつつ、たまに辛辣なことを言って心理戦を仕掛けたりすることもできます。
あと、家庭というチームも良さそうです。というのも、パートナーのウルシュカ・ジガートさんも現役プロ選手で、ポガチャルいわく心の支えだそうですが、実際その通りでしょう。プロ選手どうしのカップルは最近増えていますが、これは互いを高め合い、支え合う意味もありそうです。
というわけで、総合的に見ても最強と言わざるをえないポガチャルですが、結局その最大の理由は何なの?ということを考えると、僕はメンタルコントロールに行きつくと考えています。
フィジカルだけなら、近い能力を持っている選手はいる気がします。チームも、強いチームは他にもありますよね。あと、ボディの空力面はあまりよくないとか、弱点もあります。
それにもかかわらず、圧倒的に勝ち続けている理由は、やはりメンタル面の強さではないでしょうか。仮にポガチャルと同等のフィジカルを持っていたとしても、彼のように連戦連勝を何年にもわたって継続できる選手は、ほとんどいないと思います。
具体的には、いろいろな誘惑があるであろう環境で自分を律する能力や、チームメイト・ライバルとの関係を維持する能力、これだけ勝ち続けていながらもメディアやファンとの距離感を巧みにコントロールし、「アンチ」の増殖を防ぐスキル。失敗してもすぐに修正する能力などなど。調整に失敗しているのをあまり見たことがないですが、それも、メンタル面の強さを示唆しているように思います。
逆に、ポガチャルが負け始めるとしたら、理由はメンタルやモチベーションではないでしょうか。彼って、勝負事が心から好きですよね。
選手は、自転車に乗ることが大好きなタイプと、勝負が好きなタイプとに分かれる気がします。たとえばクリス・フルームなんかは前者に見えます。大けがを負ってかつての強さを失ってしまっても、たぶん自転車が好きだから走り続けているわけです。現役の選手だと、「あと10年走りたい」などと言っているらしいプリモシュ・ログリッチなんかも、同じタイプに見えます。なんというか、自分の「内側に」モチベーションを持っているタイプです。
でも、ポガチャルのモチベーションは内側ではなく「外側」、つまり勝負を楽しむことにあるように見えるんですね。ということは、ふと、何かの理由でレースを楽しめなくなったときに、ポガチャル時代が終わるのかもしれません。この点も、サガンにちょっと似ていますね。
最強ポガチャルの最大の強みは?
文:栗村 修・佐藤 喬
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栗村 修
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。 17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。 引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。
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