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2026シーズンもUAEチームエミレーツ・XRGは強い!ヴァインがツアー・ダウンアンダーで3年ぶり総合優勝|Cycle*2026 ツアー・ダウンアンダー:レビュー
サイクルロードレースレポート by 山口 和幸ジェイ・ヴァインが3年ぶり総合優勝
2026年のサイクルロードレースが南半球のオーストラリアで本格的にシーズンイン。UCIワールドツアー緒戦としてツアー・ダウンアンダーが1月20日から25日まで開催され、UAEチームエミレーツ・XRGのジェイ・ヴァイン(オーストラリア)が3年ぶり2度目の総合優勝を達成した。
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真夏の南半球で熱くて暑いレースのゴングが鳴った
地球儀が作られた時代、世界の中心だった英国から見て南半球のオーストラリアは球形をした地図の下の下、ダウンアンダーという愛称で呼ばれるようになり、それをそのままレース名にしたステージレースが行なわれるようになった。開催時期は南半球の夏場で、そのせいか南半球出身選手のモチベーションが高い。2025年の総合優勝者はUAEチームエミレーツ・XRGのジョナタン・ナルバエス(エクアドル)で、今回はナンバーカード1番で登場した。
1999年の第1回大会から日程は6日間。初日は南オーストラリア州の州都アデレードで距離3.6kmの個人タイムトライアルがプロローグとして行なわれ、イネオス・グレナディアーズのサムエル・ワトソン(英国)がトップタイムで優勝。まずは首位に立ち、オレンジ色のリーダージャージを集中にした。
翌日の第1ステージはタヌンダ〜タヌンダ間の120.6kmコースで、デカトロン・CMA CGMチームのトビアスルンド・アンドレースン(デンマーク)がゴールスプリント勝負を制して優勝するとともに、区間1位のボーナスタイム10秒を獲得。アンドレースンは前日のプロローグで9秒遅れの22位でゴールしていて、第1ステージを終えてワトソンを1秒差で逆転して総合トップになった。
トビアスルンド・アンドレースンがワールドツアー初勝利
23歳のアンドレースンはスプリンターで、2024年に6勝、2025年に1勝。これまではツアー・オブ・デンマークやツアー・オブ・ターキーなどの区間勝利ばかりだったが、この日についにワールドツアー初勝利を挙げた。
「優勝できて本当にうれしい。正直言って、こんな気持ちになったのはいつ以来か思い出せない。信じられない気持ちだ。バイクは信じられないほど速く、チームメートも今日は素晴らしい仕事をしてくれた」とアンドレースン。
「最後のフィニッシュは心から楽しんだ。チームディレクターのマーク・レンショーとルーク・ロバーツとの準備は完璧だった。これほど綿密に計画を実行できることは滅多にないけど、今日はそれをやり遂げることができた。明日はまた違ったチャレンジになるが、オープニングステージ優勝はチーム全体の大きな自信となる。ワールドツアーレースでリーダージャージを着ることができて本当に光栄。チームでこの栄誉を維持できればと思う」(アンドレースン)
前年王者のナルバエスがチームメートのヴァインをアシスト
キーポイントとなったのは1月22日、ノーウッド~ウレイドラ間の148.1kmで行なわれた第2ステージだった。コークスクリューロードと呼ばれる短い上り坂((距離2.5km/平均9.7%)を二度上るレイアウトで、フィニッシュはさらに起伏があるコースをこなした先にあった。そんな舞台で、オーストラリアのタイムトライアルチャンピオンになったばかりのヴァインがライバル集団を粉砕し、チームエースとして総合優勝をねらえるコンディションにあることを証明することになる
21km地点で7選手がメイン集団に2分02秒差をつけて先行。エクアドルチャンピオンジャージを着るナルバエスは1回目のコークスクリューの直前でメカトラブルに見舞われたため、チームメートは上りの途中でナルバエスをメイン集団に戻す動きを見せる。そして2回目のコークスクリューが近づくとUAEチームエミレーツ・XRGはヴァインとナルバエスをメイン集団の前方に配置させた。
南半球は真夏の気候
すべての逃げはコークスクリューの手前で捕まえられた。コークスクリューのピークでUAEチームエミレーツ・XRGのアダム・イェーツ(英国)がレースの先頭に立った。前日に首位に立ったアンドレースンはこの上りで脱落。イェーツがメイン集団の人数を減らしたことで、ヴァインが絶妙のタイミングで攻撃し、ナルバエスがそれに追従した。2選手は後続に差をつけ、最後はディフェンディングチャンピオンのナルバエスがヴァインに先を譲る形でフィニッシュ。2人とも同タイムで、ヴァインがボーナスタイム10秒、ナルバエスが6秒を獲得。これにより総合成績でヴァインが首位、ナルバエスが6秒差の2位になった。
ジェイコ・アルウラーのマウロ・シュミット(スイス)が58秒遅れの小集団の先頭でフィニッシュし、総合成績では1分05秒遅れの3位になった。
「アダムはコークスクリューロードの上りで素晴らしい仕事をした。チーム全員が一生懸命に働いて、最後もすべて計画通りに進んで本当によかった」とヴァイン。ブエルタ・ア・エスパーニャ通算4勝と2年連続の山岳王という戦績を持つが、ツアー・ダウンアンダーでは初のステージ優勝だった。
「最終日までなにが起こるか分からないが、2023年に総合優勝したときよりも大きなリードがあるのでちょっと安心できる。ジョニー(ナルバエス)も現在6秒差の2位で、我々は非常に強い位置にいる」
総合2位のナルバエスがまさかのクラッシュリタイア
1月23日の第3ステージ(ヘンリービーチ~ネアン、140.8km)はイネオス・グレナディアーズのスプリンター、サム・ウェルスフォード(オーストラリア)が大集団のゴールスプリント勝負を制して優勝。ヴァインが首位堅持。6秒差の総合2位ナルバエス、1分05秒遅れの同3位シュミットは変わらず。
ウェルスフォードは通算7回目のステージ優勝となったが、「私にとって、これは最も特別な勝利の一つ」と語った。
「昨年は怪我や骨折で本当に厳しい一年を過ごしたので、自信をかなり失っていた。また、昨年はレッドブル・ボーラ・ハンスグローエチームにいていいシーズンを過ごせなかった。スプリンターとして多くの機会を失った。スプリンターには信念と勢いが必要だが、昨年は少し道に迷っていた。今日はコースマップの上では自分にはあまり向いていないと思ったけど、ここに来て勝利することができて本当にうれしい」
そして難なく首位を守ったかのように思えたヴァインだが、「最後の50kmは本当にストレスがたまった」と告白している。
「スプリントポイントを通過してサーキットに入ったとき、みんながアタックを始めた。でも、ボクの周りにはチームメートがいて助けてくれた。残り4kmからはメイン集団から遅れないように心がけ、クラッシュを避けるだけに集中した」
ぶどう畑の間をひた走る
結束力を見せつけるUAEチームエミレーツ・XRGだったが、ブライトンをスタートする第4ステージで事態が大きく転換した。大会を象徴するウィランガ・ヒルにフィニッシュするステージの予定だったものの、最高気温43度という予報。そのため森林火災注意報が発令され、ウィランガ・ヒルはコースから除外された。ステージ距離も176kmから130.8kmに短縮された。
最終的にはNSNサイクリングチームのイーサン・ヴァーノン(英国)が優勝することになった。25歳のヴァーノンは、短縮されたステージでの集団スプリントとやや上り坂のフィニッシュで驚異的なスピードを見せてキャリア最大の勝利に狂喜した。
「本当に勝ちたかったし、シーズンを力強くスタートしたかった。新しくなったジャージを着る選手の中で最初の優勝者になれて本当に特別だ」とヴァーノン。「拠点とするアンドラを出発した時は氷点下15度だったので、気候の違いにショックを受けた。仲間たちが涼しなるようにサポートしてくれたのでありがたかった。
その一方でUAEチームエミレーツ・XRGにとっては試練の1日に。レース開始からわずか13分、20km地点手前でナルバエスが落車してケガを負い、病院に搬送。リタイアを余儀なくされたのである。総合3位から2位に繰り上がるシュミットが中間スプリントポイントでボーナスタイムを獲得。ヴァインとの差を1分05秒から1分03秒に詰めてきた。チームは総合2位を一瞬のうちに失ったため、新たな戦術を練るために再集結する必要があった。
ここはオーストラリア。ワンワン落車じゃなくてカンガルー!
クイーンステージ(最難関)となるはずだった前日のコースが距離短縮の平坦路となり、勝負は最終日の第5ステージへ。スターリングを発着とする169.8kmのコース途中で、3年ぶり2度目の総合優勝を目指すヴァインに最後の試練が訪れた。
「どうして地面に倒れたのかわからなかった。心臓が口から飛び出しそうになるほど不安な時間が訪れた」(ヴァイン)
なんとコース脇からカンガルーが飛び出し、メイン集団に落車が発生。リーダージャージを着るヴァインもその影響でアスファルトの上に横たわる羽目に陥ったのだ。
「ここ数日、どれほどの不運に見舞われたのか想像もつかない。入院しているチームメートもいる。この日私は無事だったが、そんなことは絶対に避けたいよ」とヴァイン。
「ヨーロッパのライダーたちはみな、オーストラリアで一番危険な動物はなにかといつも私に尋ねるので私はカンガルーだと答える。ヤツらはレーサーが止まれなくなるまで茂みの中で待ち、次の瞬間に目の前に飛び出してくるんだから」
マシュー・ブレナンが区間優勝
結局、最終ステージはヴィスマ・リースアバイクのマシュー・ブレナン(英国)がスプリント勝利。タイム差なしでヴァインがフィニッシュして総合優勝を飾った。総合2位に1分03秒遅れでシュミット。随所にUAEチームエミレーツ・XRGの強さは見られたが、栄冠をつかむか取り逃すかは紙一重だった。ヴァインはこの後、2月16日開幕のUAEツアーに参戦予定で、ジロ・デ・イタリアでもジョアン・アルメイダ(ポルトガル)とともに参戦することが想定される。
文:山口和幸
山口 和幸
ツール・ド・フランス取材歴30年超のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、東京中日スポーツ、ダイヤモンド・オンライン、LINEニュース、Pressportsなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)、講談社現代新書『ツール・ド・フランス』。青山学院大学文学部フランス文学科卒。
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