人気ランキング

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

コラム一覧

サイクルロードレース コラム 2026年1月21日

【輪生相談】ハイエンドのロードバイクは何処まで高騰し、ユーザーは甘んじて受け入れなければならないのでしょうか?

輪生相談 by 栗村 修
  • Line

 

自転車に乗り始めて、35年程になる60代の中高年サイクリストです。自分が自転車を始めて数年後、最初に手に入れたハイエンドの国産カーボンロードは定価の34万8000円でした。職場の同僚から、“225CCのオフロードオートバイと同じ値段なんて高いねー!”と言われた事を覚えています。
さて、2025年に成り国産ハイエンドロードは幾ら出せば買えるでしょうか? 答えは120万円位でしょうか、ざっと3倍強ですね。競技用の機材なんだから高いのは当然と言えば当然でしょう。では昔34万8000円だったオフロードオートバイは2025年現在幾らするでしょうか。国産メーカーの250CCのオフロードオートバイは、49万9000円で販売されているのです。確かに250CCのオフロードオートバイは競技用の機材では無いので、メーカーがコストカットした結果このプライスタグが付けられ尚且つ利益が出ているのでしょうが、これこそ企業努力というものでは無いでしょうか? この先ハイエンドのロードバイクは何処まで高騰し、ユーザーは甘んじて受け入れなければならないのでしょうか?

(男性 その他)

 

まず前提として、コロナ禍後の世界的なインフレに加え、日本固有の要因として円安や実質所得の伸びの停滞があります。一方で、価格高騰には自転車業界特有の理由もあると感じています。その一つが、「高くても売れる」状況を業界全体が経験してしまった、いわば成功体験ではないでしょうか。

コロナ禍の直前くらいでしょうか。ブランド力があるメーカーのハイエンドバイクや高級ウェアが、かなりの勢いで売れていた時期があります。今思うと、現在よりはまだ安かったわけですが、少なくとも業界がこの時期に利幅の大きなビジネスが成り立ち得ることを学んでしまった可能性があります。これは日本だけの話しではなくて、世界的な傾向です。

もちろんこれが誤りだったと断言することはできません。高級腕時計やブランドバッグ、高級車などのように、超・超高額の商品がきちんと売れている市場はあちらこちらに存在しているからです。それが良い・悪いという話ではなく、事実として、そういう商売の仕方はむしろ効率的です。

ですがどうやら、スポーツバイクは「そういう分野」ではなかったらしいのです。もちろん、200万円クラスのロードバイクをポンと買える層も一定数存在しますが、ユーザーのマジョリティはそこにはなかった、ということでしょう。それは近年、アジア製の低価格ホイールやウェアが急速に広がっていることからも見て取れます。簡潔に言えば、自転車業界は、ユーザーが本当に求めていた価格帯を、ある意味で見誤った可能性があるのではないでしょうか。

その結果、何が起きているのかと言えば、値下げです。メーカーもショップも、供給過多の状況を打破するため、価格を下げざるを得なくなっています。実際、某欧米メーカーの関係者からも、「値下げを実施したことで、市場が動きはじめた」という話を耳にしました。

要するに、市場原理が働き、価格は下がりはじめているということです。もちろん、インフレを主因とする原材料費や物流コストの上昇は今も続いており、企業努力だけでは吸収しきれない要素もあります。一方で、付加価値を理由に上乗せされてきた部分については、修正しようとする動きが見え始めています。いわゆる「中華系」メーカーの機材を採用する欧米チームや選手が増えてきた結果、価格競争だけでなく、それらとのブランド力の差も縮まりつつあるのが現状でしょう。

機材価格が一つの頂点に達した2020年代前半は、サイクリストが許容できる価格帯の上限が可視化された時期だった、という意味で記憶にとどめる価値があるのかもしれません。今後も、ニーズと価格がどこで収斂するのかを探る時間が続くのでしょう。

そしてもし、ユーザー側から「そこまでの高性能は多くのサイクリストにとって必須ではない。もっと気軽に、安全に楽しめる価格帯と機能を優先してほしい」というメッセージが明確に発せられるなら、いずれ市場はそこに向かって落ち着いていくはずです。

一方で、「お金は出すから、少しでも軽く、速く、刺激的な機材を開発し続けてほしい」という需要が強ければ、そうした尖った市場がさらに深化していくことになるのでしょう。現時点では、市場に残っているユーザーの多くが、後者寄りであることもまた、間違いないように思います。

2020年代前半はロードバイクの価格が一つの頂点に達したが、市場原理が働き価格は下がりはじめている。

文:栗村 修・佐藤 喬

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
ご質問の投稿はこちら

栗村 修

中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。 17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。 引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。

  • Line

あわせて読みたい

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

ジャンル一覧

J SPORTSで
サイクルロードレースを応援しよう!

サイクルロードレースの放送・配信ページへ