【輪生相談】栗村さんの目線で今後のショップ業態の未来予想図を教えて下さい

一方、世界的な傾向として、ここ数年、スポーツ自転車業界の景気は回復しきれていないと言われています。

要因は色々ありますが、いちばん大きいのは、コロナ禍での自転車への需要急拡大を、各メーカーが読み誤ったことが挙げられるでしょう。要するに、供給過剰となったスポーツバイクの在庫がだぶついている状況です。スポーツバイクは消耗品ではなく、長く使われるものですし、中古市場も確立しています。ですから、この状況は、すぐに解消されるものではないかもしれません。

それから、特に日本で顕著な要因としては、価格の高騰も挙げられます。通貨である円が安くなっている日本にとって、高額化のダメージは諸外国よりも大きいでしょう。

したがって、新車への需要の観点から見ると、ショップを取り巻く状況は依然として楽観できる段階にはない印象です。ネット売買の広がりも実店舗にとっては厳しさの要因です。

しかし改めて考えてみると、新たな需要が生まれていることも事実です。バイクの高機能化によってユーザーが自分で整備しにくくなったことによるメンテナンス需要、ネット通販の一般化による組み立て・メンテナンス需要などです。

また、クラブ運営や走行会など、リアルの場を提供できるのもショップの強みです。スポーツ自転車は、正しく安全に乗ってはじめて本当に楽しめるアクティビティですからね。

ほかにも、近年はショップオリジナルブランドを展開しやすくなっており、そこに力を入れるお店も増えています。昔からオリジナルフレームを扱うショップはありましたが、最近ではホイールやパーツなどもOEM生産できる時代になりつつあります。これはショップのブランディングにもつながるでしょう。

「メーカーがモノを作る → 問屋がショップへ卸す→ ショップがユーザーへ販売する」という流れが、長らく物販の基本的な流れでしたし、この枠組みから外れることが批判の対象となることさえありました。

しかし時代は変わりました。メーカーは直販をはじめ、問屋やショップはオリジナルブランドを展開し、個人同士でも新古品や中古品を売買して翌日に商品が届く。そんな世界が当たり前になっています。

つまり、今は「何でもあり」の時代に近づいています。その中で「ショップはこうあるべき」という固定観念に縛られてしまうと、未来の可能性をむしろ狭めてしまうかもしれません。

現状は、急拡大しすぎた市場や高くなりすぎた価格の一時的な調整フェーズの中にあります。調整は必要なものの、スポーツバイクの魅力や需要が消えたわけではありませんから、新しい状況に適応できたショップは今後も生き残り発展していくでしょう。そして、その新しいショップのあり方は、次の自転車の楽しみ方を象徴するものになる気がしています。

　

文：栗村 修・佐藤 喬

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