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サイクル ロードレース コラム 2025年11月21日

五輪採用へ重要なシーズンに? 激戦必至のワールドカップが開幕|シクロクロス2025/26 WC第1戦・第2戦:プレビュー

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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シクロクロス

冬季も自転車競技はお楽しみがいっぱい

着々と軌道に乗るシクロクロスシーズン。この冬も(というには日本はまだ気温が高いけれど……)国内外を問わず芝・土・砂……ときには泥の上を走る選手たちに人々は熱狂する。

ヨーロッパでは、3つある大型シリーズ戦のうちのひとつ「UCIシクロクロスワールドカップ」が他の2つを追うようにして、いよいよ開幕を迎える。ここからの3戦はチェコ、フランス、イタリアとめぐっていく。本記では11月に開催される第1戦ターボル、第2戦フラマンヴィルを展望。また、今季のシクロクロスシーズンにまつわるいくつかの話題もお届けする。

シクロクロスが冬季五輪採用へ!?

2025年から2026年にかけてのシクロクロスシーズンは、自転車競技の枠を超えてスポーツ界全体の注目を集めることになりそうだ。

というのも、「シクロクロスを五輪競技に」との機運が高まっているのだ。複数の海外メディアでは、2030年にフランス・アルプス地域で開催される冬季オリンピックの一競技にシクロクロスが追加される可能性の高さを指摘する報道がなされており、国際オリンピック委員会(IOC)もそれらが事実であることを認めている。

フランス・レキップ紙は、「五輪での競技開催が実現された場合はラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユがその地となる」と報じている。ラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユといえば、2020年のツール・ド・フランスでタデイ・ポガチャル(当時UAEチームエミレーツ)が、プリモシュ・ログリッチ(当時チーム ユンボ・ヴィスマ)を山岳個人TTで大逆転しマイヨ・ジョーヌを手繰り寄せた伝説の山。2030年は金メダルをかけた戦いの場となるのか。

ちなみに、シクロクロスの冬季五輪採用は必ずしも賛成多数というわけではなく、「伝統を損なう」として冬季スポーツの競技団体が総じて反対の姿勢を見せている。スポーツ界全体の多様性を謳うIOCと確たるアイデンティティーを有する冬季競技団体、双方の姿勢は今後の注目点でもある。

そして何より、その渦中にシクロクロスが存在しているのである。

シクロクロス

チェコ、フランス、イタリアと転戦していく

名所ターボルでワールドカップ開幕

さて、本題へ。

2025-2026シーズンのワールドカップは、昨季同様12戦で構成される。12月に入ると“シクロクロス王国”ベルギーでの開催が主となるが、その前に数カ国を選手たちは転戦する。開幕戦は11月23日のチェコ・ターボル、第2戦は同30日のフランス・フラマンヴィル開催が控えている。

ターボルはシクロクロスファンにはおなじみ。2シーズン前には世界選手権の舞台にもなり、これまで数多くの名勝負が生まれている。コースは全体的に芝生面が多いながらも、周回途中の林や2カ所の階段上り、キャンバー(下り)が大きなアクセントに。前述の世界選手権ではパワーとテクニックを必要とするコースになったとの評価で、同地でのワールドカップは3シーズンぶりとなるがやはりその声に違わない難易度となりそうだ。

チェコ・ターボル

チェコ・ターボルのコース

ターボルから1週間おいて行われるフラマンヴィルは、ノルマンディー北部・コタンタン半島に位置する小さな村。フランスではかねてから国内シリーズなどが開催されてきた場所で、この数年でワールドカップに名を連ねるようになった。フラマンヴィル城を囲むように描かれるコースは、一見芝生面が多いように見せかけて周回を経るごとに掘れて泥が浮き出てくるようなイメージ。2シーズン前のワールドカップ開催時には落車が多発しており、今回もハードワークが求められるレースとなる。

フランス・フラマンヴィル

フランス・フラマンヴィルのコース

本記執筆時点で第1戦ターボルのエントリーが公開されている。10月のシーズンインから混戦続きで、特定の選手が圧倒しているムードにはない。シリーズ戦のひとつ「スーパープレステージュ」ではUCIランキングトップに立っているマイケル・ファントゥレンハウト(パウェルスサウゼン・アルテスインダストリーバウ)が開幕2連勝。もうひとつのシリーズ戦「X2Oバットカームルス・トロフェー」ではヨリス・ニューエンハイス(リドレーレーシングチーム)が第2戦を勝利。勢いに乗って、直近のスーパープレステージュでも勝利。今季は出場するレースのほとんどで上位フィニッシュを果たしている点も見逃せない。

11月9日に行われたヨーロッパ選手権では、トゥーン・アールツ(デスハフト・ヘンスCXチーム)がティボー・ネイス(バロワーズ・グローウィ・ライオンズ)を振り切り優勝。アールツはヨーロッパチャンピオンジャージでワールドカップのスタートラインにつく。ロードと並行で活動するネイスは、X2Oバットカームルス・トロフェーで今季2勝。父・スヴェン氏の血を引くサラブレッドが少しずつ調子を上げてきている。

ベルギーと並ぶシクロクロス王国オランダのベテラン、ラルス・ファンデルハール(バロワーズ・グローウィ・ライオンズ)は今季がキャリア最終シーズン。ジュニア、アンダー23とタイトルを欲しいままにし、今もなお一線級の走りを見せ続ける34歳のラストダンスを目に焼き付けよう。

ワールドカップのシステムは、1位から25位までに順位に応じたポイントが付与され、最終戦を終えた時点で総得点の最も高い選手がシーズン総合優勝となる。男子エリートはレース時間60分で争われる。

マチュー、ワウトのシーズンインも間近か

混戦のレースが続いていると前述したが、彼らが参戦するようだとその構図は大幅に変化する。10年以上にわたってシクロクロスシーンを牽引する3選手、マチュー・ファンデルプールアルペシン・ドゥクーニンク)、ワウト・ファンアールトチーム ヴィスマ・リースアバイク)、トーマス・ピドコック(Q36.5プロサイクリングチーム)。その動静は果たして。

このほどマチューがアクションを起こした。チームオーナーのクリストフ・ルードフート氏が「クリスマス頃にマチューにお目にかかれるはず」と述べ、12月20日から続くベルギー開催のレースへの参戦を示唆。シクロクロスの世界王者に長く君臨しているが、その座を防衛するべく年明けには世界選手権への出場も見据える。勝てば同種目のマイヨ・アルカンシエル獲得は8度目だ。

ワウトも近々“シーズンイン”しそう。具体的なレース名こそ明言を避けているが、「あと数週間トレーニングをすればレースに臨めるんじゃないかな」と述べており、こちらも12月中のレース出場が期待できる状況にある。

2人とは対照的に、ピドコックは昨季に続いてシクロクロス全休となる公算が高い。今年のロードシーズン終了後にはグラベルレースに参戦したが、冬場は休養する意向を示しており、ピドコック本人もチームもシクロクロスの話題には触れていない。

しばらくは、レースとともに彼らがどんな判断を下すかも待ち望む日々が続く。

文:福光 俊介

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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