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サイクル ロードレース コラム 2025年11月11日

ヴィンゲゴーがかつてのエース、ログリッチをふるい落として初優勝|ツール・ド・フランス さいたまクリテリウム:レビュー

サイクルロードレースレポート by 山口 和幸
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ヨナス・ヴィンゲゴー

ヴィンゲゴーが最後は単独でフィニッシュ

11回目の開催となるツール・ド・フランス さいたまクリテリウムが11月9日、さいたま新都心で開催され、チーム ヴィスマ・リースアバイクヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク)が初優勝した。2013年、世界で初めて「ツール・ド・フランスの名を冠した大会」として始まったイベントは、7月のレースで激闘を展開したスーパースターが来日。コースとその沿道に持ち込まれたものは欧州文化そのもので、テレビの国際映像しか見たことがないファンが本場の雰囲気を日本にいながらにして感じられるさまざまな仕掛けが用意された。

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    優勝者を予想する「サイクル誰クル?」のほか、メンバー同士が好きなテーマで話せる「トークルーム」、投稿された写真の中から辻啓氏が毎月優秀作品を数点セレクトする「写真部」、飯島誠氏によるオンラインライドイベントを開催する「宅トレ部」などコンテンツが盛りだくさん。

さいたまクリテリウム

ログリッチが一番人気だ

メインレースをやっぱり一流どころが盛り上げた!

ヴィンゲゴーは2022、2023ツール・ド・フランス総合優勝者。今季のツール・ド・フランスは総合2位だったが、その後に開催されたブエルタ・ア・エスパーニャを制した。この日、レース中盤で落車したが、チームメート2人のアシストを受けて集団に復帰。残り10kmでUAEチームエミレーツ・XRGのティム・ウェレンス(ベルギー)、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)、ウノエックス・モビリティのヨナス・アブラハムセン(ノルウェー)とともにアタック。残り5kmでヴィンゲゴーは、かつて現チームでエースだったログリッチとともに抜け出し、残り2kmでそのログリッチまでも振り切って単独でフィニッシュした。

ログリッチは前年に最後まで単独で逃げてゴール直前で捕まっていた。そのリベンジを目指して、レース前日には「レースだから勝ちに行く」と意欲を見せていた。「これだけ日本の方が歓迎してくれるので、いい走りを見せたい」と優等生的なコメント。

ヴィンゲゴーは2度目の来日で、「前回のときはほとんど観光する時間がなかったが、今回はレースに勝つのはちょっと難しいところもあって、日本のいいところを探しに出かけたい」と、前日には勝利にこだわらないことを口にしていた。「日本でレースをするのは気分転換になる。新しい国を発見するのはいつも楽しい。ここはサイクリングをするのに素晴らしい国だと知っている」

さいたまクリテリウム

さいたま市を走り抜けるプロトン

レース終盤でヴィンゲゴーは濡れた路面と段差の影響で落車。メイン集団から脱落してしまったが、チームヴィスマ・リースアバイクのアシスト2選手がヴィンゲゴーを牽引し、およそ1周回をかけて集団復帰を果たした。「シーズン最後を勝利で締めくくることができたのは幸いだった」とレース後の記者会見でヴィンゲゴーは語った。

JSPORTSコラボレーションステージイベント

大会前日にはメイン会場となるさいたまスーパーアリーナのステージでさまざまな催しが行われた。来日選手が日本の伝統文化である「手描き友禅」を体験。ファン感謝祭に入場した観覧者のうち、抽選に当たった人たちが選手と一緒に写真を撮ったり、室内トレーニングマシンのZwiftを使ってツール・ド・フランスを走ったプロ選手と対戦するなどのふれあいの場がセッティングされた。

JSPORTSとコラボしたステージイベントにはヴィンゲゴー、ログリッチ、リドル・トレックジョナタン・ミラン(イタリア)、チームフランスのヴァランタン・パレパントル(スーダル・クイックステップ所属)が登壇し、レースでの真剣な表情とは異なる選手たちの一面を楽しめるトークやゲームが行われた。

イベントの合間にはアリーナ内で選手インタビューも行われ、2025ツール・ド・フランスでモン・バントゥを制して一躍伝説の仲間入りを果たしたパレパントルは、「来年はラルプデュエズで優勝したい」と取材陣の質問に応じていた。

友禅染めを体験するログリッチ

友禅染めを体験するログリッチ

大会はワンステップ進んで未来型になってきた。過去10大会はツール・ド・フランスで大活躍した選手たちが日本を走るイベントだった。今回もログリッチやヴィンゲゴーやミランといったスター選手もいるが、1チーム3人編成の枠を埋めるためか傘下の育成チームから将来性のある20歳前後がメンバー入り。ロメット・パユール(エストニア)はチーム傘下のレッドブル・ボーラ・ハンスグローエルーキーズに所属する21歳のスプリンター。UAEチームエミレーツGen Zに所属するアドリア・ペリカス(スペイン)は山岳を得意とする注目の19歳で、来季昇格する。リドル・トレックフューチャーレーシングに所属するエクトル・アルバレスはスペインの18歳だ。この中からポガチャルのような逸材が現れないとも限らない。

24歳のパレパントルに「モン・バントゥを制したよね」と声がけすると、「日本の取材陣がボクのことを知っているのか!」とビックリした。それだけ若くして自分が掴んだ偉業が信じられないというのが本音のようだ。「2026年はラルプデュエズで勝つ!」とパレパントル。自信と不安の半々であることが微笑ましい。

ジェガットとさいたま市の中学生

ジェガットとさいたま市の中学生

総合10位のジェガットが中学生に特別授業

さいたま市内の中学校では、来日選手が先生として授業を行う「ドリームティーチャー」も行われた。2025ツール・ド・フランスでいきなり総合10位になった26歳の若手フランス選手、ジョルダン・ジェガット(トタルエネルジー)が今回の先生役。

全校生徒230人が熱心にツール・ド・フランスを学ぶとともに、期待のフランス選手に素朴な質問を向けた。得意の英語で「強くなるためには何時間練習するんですか」と質問したのは2年生の嶋田晴日さん(14)。「弓道の練習や勉強などで私自身がどのくらい時間を当てたらもっとうまくなったり、勉強できるようになるのかを知りたいので、ツール・ド・フランスで活躍する選手に聞く機会を得られて思い切って質問してみました。とても丁寧に応えてくれて、これからの目安になりました」

ジェガットは「制服姿の中学生を見るのは初めてだった」と感想を語り、「2026年のツール・ド・フランスではステージ優勝を飾りたい。7月14日(革命記念日)に中央山塊の第10ステージがターゲット。山岳ステージだけどアルプスやピレネーよりも厳しいわけではなく、ボクの脚力に向いているからね」と来年の目標を明らかにした。

女子期待の石川七海はフランスアルプス冬季五輪を目指す

ジュニアのシクロクロス日本チャンピオンで2025シクロクロス世界選手権日本代表の石川七海(千葉・八千代松蔭高)も個人タイムトライアルに出場した。
「男子のトッププロ選手を実際に見て、その細さにビックリしました。でも体幹の筋肉はしっかりしているのがスゴいなあと感じました」

フランスのガストロノミーを味わえるエリアも

フランスのガストロノミーを味わえるエリアも

2026年4月からは大学へ。トラック種目が弱いのでそれをカバーできる環境を求める。現段階ではロードやマウンテンバイクなどといった特定の種目に絞り込むことなく、競技選手としての可能性を伸ばしていく時期だと感じている。

「自転車競技は日本ではまだ有名でないので、頑張って多くの人にその魅力を感じてもらえることができたら」という石川。2030年のフランスアルプス冬季五輪では、自転車競技のシクロクロスが正式種目になる可能性が高く、それをにらんでの計画を立てている。

2026ツール・ド・フランスに意欲

ツール・ド・フランスで2つのステージ優勝を果たし、緑色のマイヨ・ヴェールを獲得したミランは、さいたまでもポイント賞、新人賞、チームタイムトライアル優勝と大暴れした。自身の人気の高まりを感じ取ったようで、成功したシーズンをこう振り返った。「素晴らしい1年となった。自分たちで立てた目標はほぼすべて達成できた。最高の結果を残せるよう、常に全力を尽くしてくれたチームメートに感謝している」

2026年のツール・ド・フランスでマイヨ・ヴェールを防衛したいかを問われると、ミランは明言を避けた。「来年の計画はまだない。今はただ楽しむことだけを考えている」と返答し、こう付け加えた。「みんなツール・ド・フランスに出たいからね。休暇を取る前にさいたまの素晴らしい雰囲気を楽しみたいだけ。来季のことは後で考えるよ」

2025ツール・ド・フランス第11ステージを制したアブラハムセンはさいたまでも優勝争いに加わった。「2026ツール・ド・フランスを心待ちにしている。コースを見たが、逃げ切りのチャンスがたくさんあるので、本当に楽しみだ。私にとってもチームにとっても素晴らしいシーズンになるだろう」と締めくくった。

文:山口和幸

山口 和幸

ツール・ド・フランス取材歴30年超のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、東京中日スポーツ、ダイヤモンド・オンライン、LINEニュース、Pressportsなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)、講談社現代新書『ツール・ド・フランス』。青山学院大学文学部フランス文学科卒。

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