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サイクル ロードレース コラム 2025年10月15日

【輪生相談】長くサイクリングを楽しむ上で気を付けておくと良いことをお教えいただけますでしょうか?

輪生相談 by 栗村 修
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いつも楽しくコラム拝読してます。50歳過ぎに、20年ぶりに乗り始めたロードバイクにハマっています。大分体も絞れてきて、モチベーションアップのためにもレースやブルベにも参加したいと思っています。ここで気になるのが体のケアです。特に持病なし、サイクリング以外特に運動習慣無しなのですが、長くサイクリングを楽しむ上で気を付けておくと良いことをお教えいただけますでしょうか?

(男性 会社員)

 

50歳すぎ、20年ぶりのカムバック、そしてこれから各種イベントなどにも挑む。僕と重なるところが多く、とても共感します。

たしかに、50代ともなると衰えが加速するなどと言われますが、一方で工夫次第でまだまだ伸びしろがあることは僕自身も実感しています。ただ、そのためには体のケアに代表される工夫が欠かせません。

トレーニングを積めばまだまだ速くなれるわけですが、故障したときの落ち込みの大きさや、日々のトレーニングからの回復力の低下、さらに判断力の衰えなどにより落車リスクが高まるなど、若いころとは違う制約がかかってくるからです。

これは、ホビーレーサーとしてトレーニングを再開した最近の僕は痛感しています。今の僕のトレーニング量は大したことはありません。週3~4回のライドが多く、具体的には、Zwiftでの60~90分のSST(スイートスポット・トレーニング/中~高強度有酸素トレーニング)×1、同じくZwiftでの60~90分のZone2(低強度有酸素トレーニング)×1、60~90分の通勤&週末ライド(強度全部入り)×1~2、あとジムで全身筋トレ1時間×1、とこんな具合です。外ライドができない時はZwiftレースに出ていたりもします。

正直なところ、今の僕の回復力では、仕事や日常生活と両立するには、このくらいがちょうど均衡点になると感じています。もちろん、世の中には「体力オバケ」のようなおじさまたちはたくさんいますが、選手時代のフルタイムでの活動と、仕事で心身をすり減らすホビーレーサーとでは、やはり回復のしやすさにはっきりと違いを感じますね。

これ以上トレーニングボリュームを増やすのは、なかなか厳しい印象です。もしチャレンジするのであれば、回復の工夫により力を入れなければ、オーバートレーニングに陥りそうだという気がします。

自分の経験から感じることは、強度の緩急が大事だということです。たとえば、SSTはとても効果がありますが、50代の体にはダメージも大きいので、やり過ぎには注意。また、トレーニング前・中・後の補給にも気を遣います。この部分をおろそかにすると、回復に大きな差が出ますからね。もし疲れが溜まっていることを感じたら、1週間はトレーニングの強度を下げる工夫も欲しいですね。その点では、「3週間しっかりとトレーニングをやり、1週間は強度を落とす」というサイクルはおすすめです。

一方で、上にも書きましたが、SSTやそれ以上の高強度トレーニングの価値も強く感じます。パフォーマンスを上げるのはもちろん、VO2max(最大酸素摂取量)の低下を穏やかにするなど、もっと広いアンチエイジング効果もあるようです。VO2maxは、アスリートだけでなく一般の人にとっても心臓と肺の健康状態や死亡リスクを測る指標であり、向上させることで健康寿命の改善や生活習慣病の予防につながります。これも僕自身が実感しています。

ですので、50代以上のトレーニングのキーワードは「面の低強度+点の高強度」かなと思っています。低強度トレーニングでベースを作りつつ、ピンポイントで効果的に高強度を入れる。これが重要なポイントです。

ただし、高強度での運動は循環器系に負担をかけるのも事実ですので、血管の状態や健康診断などでの心電図のチェック、さらにはスマートウォッチなどでの心拍データの監視は決して怠らないでくださいね。「休む勇気」が必要な年齢であることはお忘れなく。

こうしたモニタリングを日常化すること自体が、健康管理につながります。スマートウォッチの健康管理機能を活用すると、健康への意識がガラッと変わりますね。

それと、自転車では鍛えられない筋肉や骨、腱なども放置していると弱っていきますから、自転車以外の運動も取り入れると良いでしょう。ウォーキングはすごく効果を感じますし、筋トレもおすすめです。

最後に最も重要な点ですが、事故や落車にはとにかく注意してください。「慎重に、無理をしない」。これはトレーニングでもレースでも同じです。私たちはプロではありません。ですから、停滞しても、負けても、まったく問題ないのです。

トレーニングを再開して思うのですが、歳を重ねることの有利さもあって、それは人生経験や知識の蓄積によってベースが賢くなっていることです。僕の現役時代に比べてトレーニング情報が爆発的に増えていることもありますが、今の僕は、昔の僕よりもかなり効果的なトレーニングができている実感があります。正直、ガジェットやデータが好きな僕としては、今の環境で若いころに戻れたらなあ……と思うこともしばしばです。

まあ、ないものねだりはできません。知恵はないけれどがむしゃらに走っていた若いころも楽しかったですが、そこで得た生の経験や知恵を研ぎ澄ませて精密なトレーニングを行えるのも僕らの年代の楽しさです。ぜひ回復と健康を大事にしながら、自転車を楽しんでください。

中年サイクリストにとって重要なのは、飽くなき向上心ではなく、飽きない(無理なく続けるための)平常心だと思います。

文:栗村 修・佐藤 喬

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栗村 修

中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。 17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。 引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。

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