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シーズン終盤にふさわしい伝統レースが目白押し 「今年最後のひと踏み」で栄光を掴むのは?|グラン・ピエモンテ、イル・ロンバルディア、パリ~トゥール:プレビュー
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介イル・ロンバルディアで4連覇中のポガチャル
サイクルロードレース2025年シーズンが終わりに近づきつつあるが、ロスを感じるにはまだまだ早い。なぜなら、ビッグネームが参戦するレースがまだまだ残されているから。そのどれもがシーズン最終盤にふさわしい伝統レースばかりで、「今年最後のひと踏み」に賭ける選手たちの熱い走りに感動を覚えること間違いなし。そこで、チェック必須の3レースをピックアップ。注目ポイントや出場予定選手を押さえていこう。
10月9日(木) グラン・ピエモンテ
伝統的に9月半ばからおおよそ1カ月にわたって集中的に編成されるイタリア開催のワンデーレース。そのひとつにであるグラン・ピエモンテは、後述するイル・ロンバルディアを見据える選手たちの調整レースとしても重要な位置づけとなる。
ただ、このレースを語ろうにも「つかみどころがない」というのが一番に挙がってしまう。というのも、レースコースが固定されず、同じイベントでありながら年々趣きが異なるのだ。ときにはスプリンター向けのレースになり、ときにはクライマー中心の展開が繰り広げられたりと、パターンが一定しない。だから、過去の優勝者にはあらゆる脚質のライダーが名を記している。
イタリア、ピエモンテ州の街並みを駆け抜ける選手たち
ちなみに、近年は逃げ切りが決まる傾向にある。一昨年は4人がリードを守って先着し、昨年はニールソン・パウレス(EFエデュケーション・イージーポスト)が42.5kmを独走する大立ち回りを演じた。
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第109回大会の今年は、ドリャーニからアックイ・テルメまでの179km。序盤を過ぎると大小のアップダウンの連続となり、中盤以降は4つの主要な登坂区間が待ち受ける。最後の約55kmはアックイ・テルメを基点とする周回コースに入り、2回上るカステレット・デッロが勝負を左右するポイントになりそう。上り始めから11%の急勾配で、その後最大勾配15%へ。2回目の登坂を終えるとフィニッシュまでは14km。最後はアックイ・テルメの市街地に入って、450mストレートの先にフィニッシュラインが敷かれている。主催者に言わせれば、今回のコースは「チャレンジングなルートを設定した」とのこと。
出場チームは、13のUCIワールドチームを筆頭に、7の同プロチームを含めた全20チーム。パウレスも2連覇をかけてスタートラインに就く見通しだ。
10月11日(土) イル・ロンバルディア
秋深まるコモ湖畔が激闘の舞台に。シーズンで5つあるモニュメントのうち、最後を飾るのが「イル・ロンバルディア」。“落ち葉のクラシック”との別名もあり、実際に赤く色づいた木の葉の上を選手たちは駆けていく。
毎年スタート地とフィニッシュ地とを入れ替えるのが慣例で、今回はコモをスタートし、ベルガモにフィニッシュ。レースは241kmの長丁場で、獲得標高も4400mと、これまで通りクライマーやパンチャーに適したセッティングだ。
この間、6つの主要な登坂区間を越える。早い段階で聖地マドンナ・デル・ギザッロ教会の脇を通過すると、コモ湖を目指して丘陵地帯を進んでいく。ポイントになる区間は、レース後半に入って迎えるパッソ・デッラ・クロチェッタ(登坂距離11.0km、平均勾配6.2%)とザンブラ・アルタ(9.5km、3.5%)の連続登坂。展開次第では、有力どころが集団を絞り込む可能性がある。
シーズン最後のモニュメントは獲得標高4400mの過酷なレース
そして、昨年は最初の難所だったパッソ・ディ・ガンダ(9.2km、7.3%)が、今度は最後にそびえる。頂上手前で最大勾配15%となる急坂は、勝負を左右するのに不足はない。この頂上からフィニッシュまでは32.5km残されているが、そこからの逃げ切りも、小集団で突き進むことも、一度は遅れた選手たちが猛然と追いついてくることも、あらゆる流れがイメージできる。
この大会へは、世界選手権でロードレース2連覇を果たしたタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ・XRG)が早くから出場意志を表明。もちろん、マイヨ・アルカンシエルで戻ってくる。ポガチャルと激闘を演じたレムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ)も同様に参戦を明かしており、現チームでは最後のレースとなる見込み。また、ブエルタ・ア・エスパーニャで新境地を切り拓いたトーマス・ピドコック(Q36.5プロサイクリングチーム)も参加する予定だ。
10月5日に行われるヨーロッパ選手権ロードレースを勝った選手が、大陸チャンピオンジャージで乗り込んでくることも考えられる。
今年は大会創設120周年。一層エモーショナルなレースとなることだろう。
10月12日(日) パリ~トゥール
フランスではこれが今シーズン最後のラインレース(タイムトライアルレースが翌週に残されている)。長かったシーズンの締めの一戦として恒例で、かつてはスプリンターズクラシックとして選手からも、ファンからも愛されてきた。
2018年からグラベル区間を採用し、一層のクラシック色を打ち出している。今回もレース終盤に10カ所のグラベルセクションを組み込んでいる。総距離にして10km。この間には急坂区間も待っていて、勝負が決定づくポイントになる。
パリ~トゥールは、天候もレースの大きなカギを握る
ぶどう畑を縫うように走るプロトンに観る者は趣きを感じるが、実際に走る選手たちは過酷な条件下でのレースを強いられる。序盤から風の強い区間を走行し、状況によっては前のグループと後方のライダーとが追いかけっこ、なんて展開も。追い風であれば猛烈なハイスピードで突き進んでいく。もし悪天候となれば、グラベルセクションを行く選手たちが泥まみれになってしまう。
今回はレース距離を211.6kmに設定。最後はトゥール市庁舎に向かっての800mストレート。昨年はクリストフ・ラポルト(チーム ヴィスマ・リースアバイク)がマティアス・ヴァチェク(リドル・トレック)とのマッチアップを制して優勝。ラポルトは今年も出場の意向を示しており、2連覇をかけて臨む。今季ブレイクのマシュー・ブレナン(チーム ヴィスマ・リースアバイク)や、昨年3位のヤスペル・フィリプセン(アルペシン・ドゥクーニンク)、夏以降絶好調のアルノー・ドゥリー(ロット)らも出走を予定している。
文:福光 俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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