【輪生相談】自転車は車道を走るということが原則になってきていますが、事故に遭わないための指導も重要だと思いますがどう思われますでしょうか。

とくに問題なのは、「自転車は車道が『原則』」という部分が独り歩きし、「自転車は歩道を通行できなくなってしまう」と誤解している人がいることです。

改めて、自転車の歩道通行に関する主なルールをまとめてみましょう。

1. 自転車は車道の左側を走るのが原則
2. 自転車に乗っているのが子どもやお年寄り、身体の不自由な方だったり、車道の左側部分を通行するのが困難な場所、そして「普通自転車歩道通行可」の標識がある場合など、例外で歩道通行が可能になる場合もある
3. 2.の場合は、自転車は徐行しなければいけない。また、歩行者が優先になるなどの制限も多い

大事なのは、歩道通行が例外的に認められていること、そして歩道を通行する際には必ず徐行が義務付けられているという点です。徐行とは「直ちに停止できる速度」のことで、その目安は、警視庁HPに「時速に換算すると8キロメートルないし10キロメートル毎時程度」とあります。
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kotsu/jikoboshi/bicycle/menu/rule.html

今の日本の車道は、自転車にとって必ずしも走りやすい環境とは言えませんので、歩道を歩行者感覚で選ぶ人も多く、結果として徐行せずに歩道を通行する自転車をしばしば目にします。

本来、車道通行が危険な場合であれば、自転車は歩行者に注意しつつ徐行すれば歩道を利用できると解釈できますが、いわゆる「ママチャリ」と呼ばれる自転車の電動アシスト化が進み、容易に時速15km/h以上に加速できるようになってしまったため、実際には歩行者に恐怖感を与えながら通行しているケースが少なくありません。

一方で、自転車による信号無視や逆走、一時停止無視は、残念ながら日常的に見られ、こうした運転者が検挙されるのは当然のことです。

改めてご質問に戻ると、厳密に「指導」というほどではありませんが、先に書いた自転車の走行ルールをしっかりと認識するのが第一歩ですね。その上で、どうしても歩道を通行したいときは、歩道通行が認められている場所か、あるいは「車道通行が危険」という例外に該当するかを確認し、その上でいずれの場合も各種制限を守り、時速8～10km/hを上限として慎重に通行することが求められます。

また、質問者さんが指摘されている「歩行者が歩いていない地方の広い歩道」は、「普通自転車通行指定部分（歩道上の普通自転車通行帯）」を行政が順次整備していけば、歩行者がいなければ自転車には徐行義務が発生しなくなります。こうした点については、早急な改善を要望していきたいと思います。

ここからはご質問の内容から少し逸れますが、大切なのは人々の意識改革だと感じています。自動車のドライバーは「車道は自動車が優先される場所」という誤った認識を改める必要がありますし、サイクリストも、例外的に歩道を徐行している状況でも歩行者が広がっていても「邪魔だな」と思ってはいけません。

日本の道路行政が自転車にとって良い方向に進んでいるのは確かですが、人々の意識の変化はまだ十分に追いついていません。サイクリストなら誰しも、危険な運転をしてくる自動車にイラっとした経験があると思いますが、自転車が歩道を通行するときには、自分自身がその逆の立場に立っていることを忘れてはいけません。

「思いやり」というと月並みな表現になってしまいますが、自動車にとっての自転車、自転車にとっての歩行者といった「他者」の立場に想像をはせることこそが、共存への王道にして最短ルートだと思います。とくに自転車は、被害者にも加害者にもなり得る存在だからこそ、なおさらこういった意識が求められるのです。

自動車から自転車、自転車から歩行者の立場に想像をはせることこそが必要だ

文：栗村 修・佐藤 喬

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