人気ランキング

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

コラム一覧

サイクル ロードレース コラム 2025年9月13日

最終局面を迎えたブエルタ。ヴィンゲゴーとアルメイダの戦いの行方は?|ブエルタ・ア・エスパーニャ2025

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
  • Line
シーズン最後のグランツールも残すところあと2ステージ

シーズン最後のグランツールも残すところあと2ステージ

サイクルロードレース2025年シーズン最後のグランツール、ブエルタ・ア・エスパーニャは大詰めを迎えている。泣いても笑っても、残すは2ステージ。うち1ステージは首都マドリードでの市街地サーキットとなるので、総合争いとの観点でいけば最終日前日の第20ステージが「最終決戦」の意味合いを持つ。その舞台は、標高2251mの秀峰ボラ・デル・ムンド。そのてっぺんでマイヨ・ロホに袖を落とした者が、ブエルタ2025の王者に実質決定する。そして、戴冠できる高い可能性を持つ“有資格者”はここに来て、2人に絞られている。

ディフェンシブに走るヴィンゲゴー、ボラ・デル・ムンドでは攻めるか?

大会前の評判通り、ヨナス・ヴィンゲゴーチーム ヴィスマ・リースアバイク)が初のマイヨ・ロホに向けて首位を走り続けている。

第1週にステージ2勝を挙げ、「いつでもマイヨ・ロホが着られる状態」としながら、意図的にジャージを他選手に譲るなどして大会前半はスマートにレースを展開。リーダーとして本格稼働したのは第2週に入ってから。

現地での評価としては、「予想以上にディフェンシブな走りに徹している」。総合成績に関係しない逃げをやり過ごし、チーム総出でメイン集団をコントロールする姿はもはや今大会おなじみの光景。山岳ステージにおいては、要所までアシスト陣がペースメイクをして、その後はヴィンゲゴーみずからライバルたちの動きを見ながら出方を調整している。ジョアン・アルメイダ(UAEチームエミレーツ)との総合タイム差は、数字のうえでは大きな開きこそないが、その走りからして「マドリードで表彰台の頂点に立てれば大成功」との意識が働いているといえよう。こうした走りがなせるのも、ヴィンゲゴーの強さと経験、そしてアシスト陣の充実度あってこそ。

前評判通りの走りで2位に44秒の差をつけるヴィンゲゴー

前評判通りの走りで2位に44秒の差をつけるヴィンゲゴー

12.2kmに距離短縮された第18ステージの個人タイムトライアルでは、最大のライバルであるアルメイダに総合タイムで10秒縮められた。「もし予定通りの27.2kmで行われていたら、何秒縮まっていただろうか」といった論評も現地では展開されるほどで、ヴィンゲゴーにとってはある意味、距離短縮に救われた面もあった。このステージを終えた段階での両者の差は40秒。第19ステージでボーナスタイムを獲ったことで44秒差に広げて、山岳最終決戦へと向かう。

まだヴィンゲゴー優勢は変わらない。勝負に徹する、という意味ではアルメイダから後れを取らなければ“勝利”である。あくまでアルメイダをマークする形で走るのか、はたまた「ステージを獲ってマイヨ・ロホを決める」スタンスで第20ステージを勝ちにいくのか。ヴィンゲゴー、そしてチーム ヴィスマ・リースアバイクの判断が楽しみなところである。

総合大逆転へアルメイダ ポイントはチーム戦か

こちらも前評判に違わない走り。アルメイダはプロトン最高チームであるUAEの総合エースにふさわしい戦いぶりを続けている。

大会前にはフアン・アユソとの共闘が注目されていたが、チームは早い段階で総合エースをアルメイダに一本化。アユソやジェイ・ヴァインがたびたびの山岳逃げでステージ優勝を挙げているが、アルメイダはマイヨ・ロホにフォーカスし戦いを続けてきた。

第13ステージのアングリルではヴィンゲゴーとの競り合いに勝ったが、それ以外ではヴィンゲゴーの先着を許すこともあり、数秒ずつ刻まれるような形で総合タイム差は広がっていった。1級山岳アルト・デ・エル・モレデロの頂上を目指した第17ステージでは、ライバルのアタックに反応が遅れがちとなるなど、コンディションが下がっているのでは…との不安も。実際、レース後には「勝負できるほどの脚はなかった」と認めている。

アルメイダの逆転優勝にはチームの働きが必要不可欠か

アルメイダの逆転優勝にはチームの働きが必要不可欠か

しかし、得意の個人タイムトライアルで挽回した。前述のとおりヴィンゲゴーとの総合タイム差を縮め、まだ勝負できる状態をキープ。第20ステージだけで44秒差をひっくり返すのは決して簡単ではないが、チャレンジする価値は大いにある。

チーム戦術が機能するヴィスマに対し、アルメイダ、さらにはUAEとしてはどういった展開にするのが得策だろうか。毎ステージのようにUAE勢の逃げが見られるものの、重要山岳での前待ちというよりは、ステージ優勝狙いに切り替わっているケースが多いあたりは今大会のチーム勝利数を見ても明白。「もう少しアルメイダの総合狙いに比重を置いてよいのではないか」との現地評もあるが、第20ステージのチームスタンスは果たして。

総力戦となるボラ・デル・ムンドでのUAEはどんな動きを見せるか。最終日前日の総合大逆転の可能性は、まだ残されている。

表彰台争いはピドコックvs.レッドブル勢

マイヨ・ロホ争いと並行して、総合表彰台争いも正念場を迎えている。

その構図は、「ピドコックvs.レッドブル勢」。個人総合3位につけるトーマス・ピドコック(Q36.5プロサイクリングチーム)は、ここまで大崩れすることなく上位戦線を走り続ける。マウンテンバイクやシクロクロスでは世界タイトルを総なめにしているが、ロードでもついにグランツール総合表彰台が見えてきた。オフロードからロードへ舞台を広げるマチュー・ファンデルプールアルペシン・ドゥクーニンク)やワウト・ファンアールト(チーム ヴィスマ・リースアバイク)でも成し遂げていない、グランツールの総合表彰台。ピドコックが達成してこそ、その価値は格段と大きなものになる。

ピドコックを追うのは、ジャイ・ヒンドレーとジュリオ・ペリツァーリのレッドブル・ボーラ・ハンスグローエ2選手。3年前にはジロ・デ・イタリアを制するなど百戦錬磨のヒンドレーと、初のグランツール総合戦線に踏み込んでいるペリツァーリ。その歩みは異なれど、今大会はともに勢いに乗る。共闘もうまくバランスがとれ、第17ステージではペリツァーリがステージ優勝。ヒンドレーはピドコックらの抑え役に回った。

ピドコックと同4位ヒンドレーとの総合タイム差は39秒。さらに1分1秒差でペリツァーリが続く。レッドブル勢としてはどちらかが上位に行ければ問題ないので、2人で代わる代わるピドコックに攻撃を仕掛けていきたい。ピドコックは冷静に立ち回りたいところ。

ピドコックとレッドブル勢による表彰台争いからも目が離せない

ピドコックとレッドブル勢による表彰台争いからも目が離せない

ちなみにピドコックは、総合首位ヴィンゲゴーとのタイム差が2分43秒。ヒンドレーやペリツァーリにも言えることだが、まだマイヨ・ロホの可能性もゼロとなったわけではなく、展開次第では思いがけない方向へと戦いが進むことだってあり得る。

すべては、ボラ・デル・ムンドだけが知っている。

大会を締める2ステージを確認

壮大なる戦いを前に、今大会最終の2ステージを押さえておこう。

第20ステージは、前述のボラ・デル・ムンドを含め5つのカテゴリー山岳が165.6kmに詰め込まれている。獲得標高は今大会最高の4226m。前半で3級2つ、2級1つの上りをこなして、勝負は後半戦へ。1級山岳ナバセラダは、登坂距離6.9km・平均勾配7.6%。頂上手前で10%級の急坂区間が控える。

いったん下ったのち、先にナバセラダ頂上からダウンヒルした道を逆走。上りながらルートを変えていよいよボラ・デル・ムンドへ。これらを合わせた登坂距離が12.3kmで、平均勾配は8.6%。最後の3kmは20%前後の激坂で、路面もアスファルトからセメントへ。何度も記しているように、この頂上でマイヨ・ロホ争いはおおむね決着する。

そして、最終・第21ステージでいよいよマドリードへ。レース距離こそ111.6kmだけど、その半分近くはパレード走行で費やされることだろう。3週間を戦い抜いた勇者たちが、健闘を称え合い、走りながらの記念撮影や乾杯で労い合う。ステージ優勝をかけた“レース”はマドリードに入ってから、5.8kmの周回を9周。最後は、コムニカシオネス宮殿を見ながら、シベーレス広場にフィニッシュする。

文:福光 俊介

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

  • Line

あわせて読みたい

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

ジャンル一覧

J SPORTSで
サイクル ロードレースを応援しよう!

サイクル ロードレースの放送・配信ページへ