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サイクル ロードレース コラム 2025年9月12日

トップガンナがタイムトライアル最速!総合2位アルメイダが好タイムで首位との差を詰める|ブエルタ・ア・エスパ-ニャ2025 レースレポート:第18ステージ

サイクルロードレースレポート by 山口 和幸
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圧巻の走りでTTステージを制覇したガンナ

圧巻の走りでTTステージを制覇したガンナ

第80回ブエルタ・ア・エスパーニャは9月11日、バリャドリードを発着とする個人タイムトライアル(距離12.2km)が第18ステージとして行われ、“トップガンナ”のニックネームで知られるイネオス・グレナディアーズフィリッポ・ガンナ(イタリア)が最速タイムで優勝。50秒遅れの総合2位ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ・XRG)が8秒遅れの3位と好走し、首位ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、チーム ヴィスマ・リースアバイク)との差を40秒に縮めた。

大会唯一の個人タイムトライアルは急きょ距離12.2kmに短縮されて開催

今大会唯一の個人タイムトライアルは当初、距離27.2kmで行われる予定だったが、親パレスチナ活動家による妨害行為が想定されるため、コースを走る選手らの安全確保を強化するため、12.2kmと短縮。沿道に警備員を配置して断行された。

今大会唯一の個人TTはバリャドリード発着で開催

今大会唯一の個人TTはバリャドリード発着で開催

バリャドリードはスペインの首都マドリードから180kmほどの位置にある大都市で、かつてはカスティーリャ王国やスペイン王国の宮廷が置かれた。サッカー、バレーボール、ラグビーなどの強豪クラブチームも拠点としていて、サッカーのレアル・バリャドリードには日本の城彰二が所属していたことがある。2023年もブエルタ・ア・エスパーニャの個人タイムトライアルが開催され、このときはガンナが世界チャンピオンのレムコ・エヴェネプールを制してステージ優勝している。

バリャドリードがブエルタ・ア・エスパーニャのスタート地点となるのは36回目、ゴールとなるのは37回目だ。直近の優勝者は2023年のガンナで、このときの個人タイムトライアルは距離25.8kmで行われた。今回は全長が半分以下の12.2kmで、平坦な地形ながらペースを崩すコーナーが複数存在する。選手たちはパワー、テクニック、そしてマシンと装具品の空力性能を巧みに組み合わせて勝利をつかむ必要がある。だれがトップタイムで優勝するかという興味のほかに、総合順位のトップ2、ヴィンゲゴーとアルメイダの50秒差がどうなるか。さらに総合3位トーマス・ピドコック(イギリス、Q36.5プロサイクリング チーム)と総合4位ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)の36秒差、ヤング・ライダー賞で争うジュリオ・ペリツァーリ(イタリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)とマシュー・リッチテッロ(アメリカ、イスラエル・プレミアテック)の1分08秒差がどうなるかが見どころだった。

ガンナがグランツール9勝目、このうち個人タイムトライアルは8勝

この日はガンナを含めて個人タイムトライアルのナショナルチャンピオンが14人もいた。オランダチャンピオンのダーン・ホーレ(リドル・トレック)が最初にスタートして13分19秒でゴール。まずはこれがターゲットタイムとなった。17番目とスタート順が早かったガンナは、平均時速56.2kmで13分00秒をマークしてホーレを抜き去った。UAEチームエミレーツ・XRGのイヴォ・オリヴェイラ(ポルトガル)はガンナに11秒届かず。リドル・トレックのマッズ・ピーダスン(デンマーク)も21秒遅れで、ガンナの記録を打ち破るのはかなり難しいことがうかがえた。

最初の出走者となったリドル・トレックのダーン・ホーレ

最初の出走者となったリドル・トレックのダーン・ホーレ

優勝候補のシュテファン・キュング(スイス、グルパマ・FDJ)も積極果敢に走ったが、ガンナに12秒及ばず。さらにデカトロン・AG2Rラモンディアルのブリュノ・アルミライユ(フランス)が10秒遅れでゴール。山岳賞ジャージを着たジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツ・XRG)は、わずか0.90秒差(記録は1秒遅れ)でステージ優勝を逃した。

2020・2021年の個人タイムトライアル世界チャンピオンであるガンナは、こうして最後までホットシートと呼ばれる暫定1位の椅子に座り続けた。ガンナはブエルタ・ア・エスパーニャで2勝目となるが、いずれも個人タイムトライアルでの勝利だ。さらにはグランツール9勝目となるが、そのうち個人タイムトライアルでは8勝目。タイムトライアルでの強さを今も見せつける結果となった。

「バイクに乗っている時よりも、3時間にわたってホットシートに座っていた時の方がツラかった(笑)。前半は正しいリズムを見つけられず、後半は数字などなにも考えずにプッシュした。今日は本当にうれしい。この1週間はチームメートのベルナルが優勝するなど私たちにとって本当にいい日々が続いたが、まだ終わりではない。最高の結果を目指して、また数日戦いたいと思う」と笑顔のガンナ。

2025ツール・ド・フランスの第1ステージで大クラッシュして初日でリタイアした。怪我を負い、自転車にまたがるのは容易ではなかったという。それでも自転車に乗るたびに日々調子を上げ、コンディションを改善しようと全力を尽くした。こうして臨んだのが今回のブエルタ・ア・エスパーニャだ。

「ブエルタ・ア・エスパーニャの最初の2週間は脚に負担がかかり、何度も上り坂で遅れ、苦しい日々を過ごしたが、今日ようやくレースレベルにたどり着いた。本当にうれしい。残り数日、どうなるか楽しみだ」(ガンナ)

総合優勝争いは依然として40秒差!最後の3日間決戦で決着する

初の総合優勝を目指すヴィンゲゴー対アルメイダ。7月のツール・ド・フランスで行われた第5ステージの個人タイムトライアルでは、アルメイダは8番目のタイムで、13番目のタイムだったヴィンゲゴーに距離33kmで7秒勝っていた。今回の第18ステージも接戦となる予想で、ヴィンゲゴーは最大のライバルであるアルメイダとのタイムロスを最小限にしたいと願っていた。

ヴィンゲゴーとアルメイダの差が40秒に縮まり、総合優勝争いはいよいよ激化

ヴィンゲゴーとアルメイダの差が40秒に縮まり、総合優勝争いはいよいよ激化

その結果、アルメイダはチームメートのヴァインに続く区間3位でゴール。ヴィンゲゴーはアルメイダから10秒遅れの9位でゴールした。大会はあと3日を残し、総合順位のトップ2人の差はわずか40秒に縮まった。それでもヴィンゲゴーはまだ有利な立場にいることを力説した。

「今日の結果にはかなり満足している。こういう平坦なタイムトライアルは、体格の大きい選手の方が得意だと思うので、そんな状況でもいい結果を残せたのは自分にとっていいことだと思う。タイムトライアルで平均時速55kmを記録したことは初めてなので、今日のパフォーマンスには満足している。2位と40秒というタイム差には満足しないといけない。いいタイムトライアルができたので」

さらに続けるヴィンゲゴー。2日後の天王山に向けて揺るぎない自信があることをコメントする。

「まだトップを走っているので、明日と明後日に集中しなければならない。2日間とも厳しいレースになるので、集中力を維持する必要がある。かなり自信がある。今日はいい1日だったので、どうなるか楽しみ」(ヴィンゲゴー)

1秒未満の差でステージ優勝を逃したヴァインは、「タイム的にはおそらく私にとって最高のタイムトライアルの一つだった。でもフィーリング的には昨年のクロノ・デ・ナシオンが最高のタイムトライアルだったと思う。ガンナに次ぐ2位になれたことは信じられない。世界最高のタイムトライアル選手の一人に負けただけだ。もうなにもできなかった。ワット数だけを見つめていて、これ以上速く走れないと思っていた。スタート前にテレビを見たら、ガンナが時速67kmで走っていた。確かに彼はスムーズだった。僕はその数字に近づくことすらできなかった」

ヴァインにとっては2日後にエースのアルメイダをアシストして、総合成績で逆転させる仕事が残っている。

「次の挑戦は第20ステージなので、そこでなにができるか見てみよう。ジョアン(アルメイダ)は明らかにいい調子で、首位との差は少しずつ縮まってきている。本当に厳しいステージになるだろうから、全力で挑むつもりだ。実際、最後の上りはレースの決定的な部分ではないと思う。むしろ、これまでの積み重ねが全てだと思っている。3週間もかかって、ステージ自体も本当に厳しい。最後の上りはボーナスみたいなものだと思う」(ヴァイン)

アルメイダの総合優勝に向けて、ジェイ・ヴァインは全力のサポートを誓う

アルメイダの総合優勝に向けて、ジェイ・ヴァインは全力のサポートを誓う

ピドコックとヒンドレーの戦いは、ピドコックが13分29秒遅れの22位、ヒンドレーが13分32秒遅れの23位と大激戦。その差は36秒から39秒になった。ペリツァーリは13分46秒遅れの36位、リッチテッロは13分36秒遅れの28位で、その差は1分08秒から58秒になった。

「今日は僕にとって短すぎたと思う。昨日のレースで少し疲れていて、もっといい結果を期待していたが、順位を守ることが重要だった。だから、これからも戦い続ける。結局、昨日はヤング・ライダー賞ジャージを争うライバルに30秒差をつけ、今日は10秒差を縮められたので、いい結果だ。まだ山岳ステージが1つ残っているので、脚の状態を見極める必要がある。チームメートのジャイ・ヒンドレーとともに2人で総合順トップ5に入っているが、必ずどちらかが表彰台に上がるように全力を尽くす」とペリツァーリ。

9月12日の第19ステージはルエダ〜ギフエロ間の161.9km。大会の大詰めに設定された平坦ステージだ。そして最終日前日となる13日は第20ステージ。ロブレド・デ・チャベラ〜ボラ・デル・ムンド プエルト・デ・ナバセラダ間の165.6kmで雌雄を決する難関山岳である。

最後の決戦の舞台はボラ・デル・ムンド プエルト・デ・ナバセラダ。プエルト・デ・ナバセラダはこれまで34回もコースとなっているが、2025年は異なるアプローチで2回上る。まずセゴビア側のシエテ・レブエルタス(7つの急カーブ)を上り、最後にマドリード側から、大会史上3度目の登場となるボラ・デル・ムンド(世界一周)という厳しいコンクリート舗装路を上る。ここにゴールしたときに2025ブエルタ・ア・エスパーニャの総合優勝者はほぼ確実になるはずだ。

文:山口 和幸

山口 和幸

ツール・ド・フランス取材歴30年超のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、東京中日スポーツ、ダイヤモンド・オンライン、LINEニュース、Pressportsなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)、講談社現代新書『ツール・ド・フランス』。青山学院大学文学部フランス文学科卒。

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