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サイクル ロードレース コラム 2025年9月11日

純白ジャージのペリツァーリがグランツール初優勝!ヴィンゲゴーとアルメイダの差は48秒から50秒へ|ブエルタ・ア・エスパ-ニャ2025 レースレポート:第17ステージ

サイクルロードレースレポート by 山口 和幸
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キャリア初勝利をブエルタで飾ったジュリオ・ペリツァーリ

キャリア初勝利をブエルタで飾ったジュリオ・ペリツァーリ

第80回ブエルタ・ア・エスパーニャは9月10日、オ・バルコ・デ・バルデオラス〜アルト・デ・エル・モレデロ間の143.2kmで第17ステージが行われ、ヤング・ライダー賞の純白ジャージを着たジュリオ・ペリツァーリ(イタリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)が残り4kmでアタックして初優勝。首位ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、チーム ヴィスマ・リースアバイク)は、48秒遅れの総合2位ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ・XRG)に2秒先着し、その差は50秒になった。

山火事で黒焦げになった山頂を目指し、残り少ないチャンスを懸けてアタック!

ブエルタ・ア・エスパーニャは山岳レース。今大会なんと9回目、そしてラストから2番目の山頂フィニッシュだ。しかも区間距離は短く、高速化することが予想される。ゴールは大会初登場のアルト・デ・エル・モレデロだが、今夏に大規模な山火事が発生し、一面黒焦げの異様な景観を見せる。獲得標高はこの日も3500m近くある。

自転車レース初登場となるオ・バルコ・デ・バルデオラスをスタートした選手たち

自転車レース初登場となるオ・バルコ・デ・バルデオラスをスタートした選手たち

自転車レースがこれまで訪問したことがなかったオ・バルコ・デ・バルデオラスをスタートした。幾度となくアタックとカウンターアタックが繰り広げられた後、25km地点で8選手、さらに4選手が飛び出して、12人の第1集団が形成された。

イネオス・グレナディアーズのブランドン・リベラ(コロンビア)、EFエデュケーション・イージーポストのマディス・ミケルス(エストニア)、バーレーン・ヴィクトリアスアントニオ・ティベーリ(イタリア)、XDS・アスタナ チームのアロルド・テハダ(コロンビア)、チーム ジェイコ・アルウラーのパトリック・ガンパー(オーストリア)、アンテルマルシェ・ワンティのルーカ・ファンボーヴェン(ベルギー)、チーム ピクニック・ポストNLのティモ・ローセン(オランダ)、ロットのヨナス・グレゴー(デンマーク)の8人が最初に抜け出した。

さらに15kmほどかけてカハルラル・セグロスRGAのジョエル・ニコラウ(スペイン)、アルケア・B&Bホテルズのレアンドル・ロズエ(フランス)、コフィディスのセルヒオ・サミティエル(スペイン)、チーム ピクニック・ポストNLのハイス・レイムライゼ(オランダ)の4人が合流する。ブルゴス・ブルペレットBHのマリオ・アパリシオ(スペイン)も追いかけたが、ヴィンゲゴーのチーム ヴィスマ・リースアバイクが先頭を引くメイン集団に吸収されてしまう。

この日最初の山岳ポイントは75.1km地点を頂上とするカテゴリー3級のパソ・デ・ラス・トラベシアス。その麓で第1集団とメイン集団との差は1分50秒になった。第4ステージと第5ステージで山岳賞ジャージを獲得したニコラウが先頭に立ち、アタッカーたちは連携して逃げ続ける。それを追ってチーム ヴィスマ・リースアバイクのディラン・ファンバーレ(オランダ)とディラン・ファン・バールレとウィルコ・ケルデルマン(オランダ)がメイン集団を牽引し続ける。

今大会の山岳ステージもこの日を含めて残すところあと2ステージ

今大会の山岳ステージもこの日を含めて残すところあと2ステージ

この日の中間スプリントポイントは100km地点、残り43.2km地点のアルマスカラに設定されていて、ここでファンボーヴェンとローセンがスパート。残されたアタッカーたちは5kmを要して2人に追いついていく。この加速によってメイン集団との差はいったん2分に広がった。

レースが残り30kmに差しかかると、バーレーン・ヴィクトリアスのエース、ティベーリが何度か加速した。テハダが集団の先頭でそれに続く。サミティエルとレイムライゼもその差を埋めた。しかし第1集団に加わったすべての選手は、残り11.9kmでレッドブル・ボーラ・ハンスグローエが牽引するメイン集団に捕まってしまう。ステージ優勝争いは振り出しに戻った。

レッドブル・ボーラ・ハンスグローエがメイン集団で果敢に攻撃を仕掛けた

レッドブル・ボーラ・ハンスグローエは3分10秒遅れの総合4位につけるジャイ・ヒンドレー(オーストラリア)を最終的な表彰台まで押し上げたい。ターゲットは2分38秒遅れの総合3位トーマス・ピドコック(イギリス、Q36.5プロサイクリング チーム)だ。

最後の上りは距離8.8km、平均勾配9.7%。レッドブル・ボーラ・ハンスグローエが集団を牽引して上りに突入するが、最も厳しい最初の勾配でペースを握ったのはチーム ヴィスマ・リースアバイクだった。それでもヒンドレーは残り6kmでアタックを開始。ヴィンゲゴー、ピドコック、総合7位のマシュー・リッチテッロ(アメリカ、イスラエル・プレミアテック)がヒンドレーに反応した。アルメイダとともにペリツァーリも追い上げてきた。

白いジャージをまとったペリツァーリは、残り4km地点でカウンターアタックを仕掛け、あっという間に30秒の差を広げた。リッチテッロはヤング・ライダー賞争いでペリツァーリから32秒遅れ。ペリツァーリを追いかけようとしたが離されてしまった。11月21日に22歳の誕生日を迎えるペリツァーリはそのまま単独で逃げ切ってグランツールで初優勝を遂げる。

ペリツァーリは勝利と共にマイヨ・ブランコ争いでも2位を大きく引き離した

ペリツァーリは勝利と共にマイヨ・ブランコ争いでも2位を大きく引き離した

2019年のブエルタ・ア・エスパーニャ、アンドラのラベリャ〜コルタルスデンカンプス間の94.4kmで行われた第9ステージでタデイ・ポガチャル(スロベニア)が有力選手の集団から抜け出して20歳で三大ステージレース初優勝を遂げているが、ペリツァーリはそれに続くブエルタ・ア・エスパーニャ最年少ステージ優勝者となった。

「これまでの短いキャリアの中で最高の瞬間だ。今日は不思議な感覚だった。今日は私の日になるかもしれないという予感がした。チーム、特にジャイ(ヒンドレー)に感謝しなければならない」とペリツァーリ。

「今日も総合成績の表彰台を目指して戦った。ジャイは表彰台には届かなかったけど、まだ終わっていないと思っている。上りのアプローチとなる谷では全開で走り、トム・ピドコックにプレッシャーをかけようとした。マシュー・リッチテッロは何度もアタックを仕掛けてきた。最後の数kmで先頭の6人のうち私たちのチームは2人いた。『ここで僕が行っても、誰も追いかけてこないだろう』と思っていた。そして、その通りになった。急勾配では本当に全開だった。しかし、道が少し平坦になったところでアタックを試みると、思い描いたような完璧な展開になった」

翌ステージの個人タイムトライアルは妨害行為の警備対策で距離が半減

ペリツァーリの16秒後に区間2位でゴールしたのは、ヒンドレーのアタックを封じ込めたピドコックだった。ヒンドレーはさらに2秒遅れ。その結果ピドコックは6秒、ヒンドレーは4秒のボーナスタイムを獲得し、総合3位ピドコックと4位ヒンドレーとの差は36秒と広がった。

ヴィンゲゴーは20秒遅れの区間4位、アルメイダは22秒遅れの区間5位で、総合差は48秒から50秒に広がった。

このステージを4位で終え変わらず総合首位を走るヴィンゲゴー

このステージを4位で終え変わらず総合首位を走るヴィンゲゴー

「正直に言うと、最後の上りよりも、上りに入る前のほうがツラかったと思う。今日はペースが非常に高く、本当に厳しい1日だった。優勝を狙っていたが、かなわなかった」とマイヨ・ロホを守ったヴィンゲゴー。
「総合成績で2秒差を広げることができたのはもちろんなにもないよりはまし。誰にとっても厳しい1日で、今日は誰も挽回できなかったと思う」

大会は9月11日、バリャドリードを発着とする個人タイムトライアルが第18ステージとして行われる。当初の距離は27.2kmだが、現地10日夜に「ステージの安全確保を強化するため、ブエルタ・ア・エスパーニャ主催者はバリャドリッド市議会と連携し、コミッショナー協会と協議した結果、明日のタイムトライアルを12.2kmのコースで実施し、スタートとフィニッシュは当初の予定通りとすることを決定した」と発表。

第5ステージのチームタイムトライアルでも現在標的となっているイスラエル・プレミアテックの選手が足止めを余儀なくされている。その対策として警備体制を強化するとともに、距離を短縮して沿道をガードする方針だ。

いずれにしても個人タイムトライアルの競技距離が半減。秒差を争う総合優勝と3位までの表彰台、ヤング・ライダー賞、そして第18ステージの優勝のために出場選手は12.2kmという短距離レースに集中する。コーナーでどこまで突っ込むか、安全を担保して走るかなどが見どころ。

「明日の個人タイムトライアルでいい結果が出るならジョアン・アルメイダにいまの50秒差で十分だと思うけど、調子が悪ければ50秒以上失う可能性もある」と首位ヴィンゲゴー。レースはいよいよ最終局面を迎える。

文:山口 和幸

山口 和幸

ツール・ド・フランス取材歴30年超のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、東京中日スポーツ、ダイヤモンド・オンライン、LINEニュース、Pressportsなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)、講談社現代新書『ツール・ド・フランス』。青山学院大学文学部フランス文学科卒。

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