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ピーダスンが3年ぶり4度目の優勝!ヴィンゲゴーが首位を堅持して最終週へ|ブエルタ・ア・エスパ-ニャ2025 レースレポート:第15ステージ
サイクルロードレースレポート by 山口 和幸ブエルタで3年ぶり、通算4度目となるステージ優勝を果たしたピーダスン
第80回ブエルタ・ア・エスパーニャは9月7日、ア・ベイガ/ベガデオ〜モンフォルテ・デ・レモス間の167.8kmで第15ステージが行われ、リドル・トレックのマッズ・ピーダスン(デンマーク)が少人数のスプリント勝負を制して、3年ぶり4度目の優勝を果たした。首位ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、チーム ヴィスマ・リースアバイク)、48秒遅れの総合2位ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ・XRG)らは13分31秒遅れの同一集団の中でゴールし、総合8位までの順位は変動しなかった。
山岳賞のヴァインがチームとして8勝目を懸けて長いエスケープ
アストゥリアス州のベガデオは、この地域の言語であるエオナヴィア語でア・ベイガ。2つの読み方が並列で表記される例はドノスティア/サンセバスティアン、ビトリア/ガスティスなどスペインではよく見られる事例だ。この日のコースは16.5km地点にカテゴリー1級山岳のプエルト・ア・ガルガンタ、54.7km地点にカテゴリー2級山岳のアルト・デ・バルベイトスがある。アップダウンはあるが、直近の2ステージと比べると難易度は高くない。中間スプリントポイントは133.1km地点に設定された。
アストゥリアス州ベガデオからスタートを待ちわびる選手たち
ポイント賞のリーダージャージを大会4日目に獲得したピーダスンは、ポイント賞争いでは着実に得点を積み重ね、2位ヴィンゲゴーとの差を徐々に広げていくことに成功している。しかしステージ優勝がなかなかつかめない。リドル・トレックは総合上位を狙うエース、ジュリオ・チッコーネ(イタリア)を含めてここまでトップ3入りを9回果たしながらステージ優勝を逃していた。
前日に動かずに体力を温存していたピーダスンは、チームメートのジュリアン・ベルナール(フランス)、チッコーネ、アマヌエル・ゲブレイグザビエル(エリトリア)、カルロス・ベローナ(スペイン)とともに序盤に形成された47人の第1集団に加わった。チームとしてはステージ優勝を取りに行くために総力を結集させた作戦だ。
スタートから激しい上り坂が出現し、カハルラル・セグロスRGAのヤコブ・オトルバ(チェコ)がスタートダッシュを決め、あっという間に1分以上の差を広げる。それを追って猛烈なアタックが続く。山岳賞ジャージを着るUAEチームエミレーツ・XRGのジェイ・ヴァイン(オーストラリア)は2つの山岳ポイントでの得点獲得を目指して抜け出した。イヴォ・オリヴェイラ(ポルトガル)も加わり、UAEチームエミレーツ・XRGの驚異的な連勝記録更新を目指す。
UAEの連勝記録更新に挑むヴァイン
5選手を送り込んだリドル・トレックに加え、モビスター チームのオールイス・アウラール(ベネズエラ)、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエのニコ・デンツ(ドイツ)、イネオス・グレナディアーズのマグナス・シェフィールド(アメリカ)とエガン・ベルナル(コロンビア)とミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド)、EFエデュケーション・イージーポストのショーン・クイン(アメリカ)、バーレーン・ヴィクトリアスのサンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア)、グルパマ・FDJのシュテファン・キュング(スイス)、チーム ジェイコ・アルウラーのエディ・ダンバー(アイルランド)、チーム ピクニック・ポストNLのケヴィン・ヴェルマーク(アメリカ)、スーダル・クイックステップのルイス・フェルヴァーケ(ベルギー)、イスラエル・プレミアテックのマルコ・フリーゴ(イタリア)らが第1集団を形成した。
このなかで総合順位が最も高いのは、18分57秒遅れの13位、スーダル・クイックステップのウィリアムジュニア・ルセルフ(ベルギー)だ。ルセルフはヤング・ライダー賞の対象選手でもあり、同賞3位につけている。さらに25分29秒遅れの16位チッコーネ、29分13秒遅れの18位ベルナルといった大物が第1集団に加わっていた。
リドル・トレックがついに念願のステージ勝利をゲット
1つ目の山岳ポイントをトップ通過したヴァインは、山岳賞ランキングで6位につけるフェルヴァーケとともに2つ目の山頂を目指して先行した。ヴァインがここもトップ通過し、フェルヴァーケが2位。2選手はその後もさらに逃げ続け、残り60kmで逃げ集団に3分差、メイン集団との差を10分以上に広げた。
「2回目の山岳ポイントを獲得して、ルイス(フェルヴァーケ)と一緒にプッシュしようと決めた。もしもう一人、モビスターのライダーとか、集団の中にチームメートが複数いるライダーが加わってくれたら、僕たちはもっと協力して、負荷を分担して逃げ切れたかもしれない。本当に長くて、本当に厳しい1日だった」というヴァイン。
この2人を追いかける逃げ集団は残り32kmの上り坂で爆発的な勢いを見せた。ピーダスンがブイトラゴ、ベルナルとともに先頭を走る。アウラール、シェフィールド、ダンバー、フリーゴがこれに加わる。7人の追走集団は残り7kmで先頭2人に追いついた。
最後は9選手となり、ステージ優勝を目指して激しいアタックが飛び交うが、ピーダスンはそれをコントロールする。フリーゴがゴールスプリントを仕掛け、シェフィールドは最終コーナーで転倒。最終的にピーダスンが混戦を抜け出してガッツポーズでトップフィニッシュした。ピーダスンは2022年のブエルタで3度のステージ優勝を果たし、ポイント賞も受賞している。今回の勝利でブエルタのステージ優勝数を4に伸ばし、さらに、ジロ・デ・イタリアでの4勝を含めて今年5度目のグランツールステージ優勝を飾った。
「今日のチームの走りは勝利をさらに素晴らしいものにしてくれた。最初のグループには5人がいた。ヴァインとフェルヴァーケの2人が2つ目の山岳で抜け出したけど、彼らは本当に力強くて多くのタイムを稼いでいた。残された選手たちは2人に追いつくために本当に一生懸命働いた」とピーダスン。
勝利の喜びをチームメイトのジュリアン・ベルナールと分かち合うピーダスン
「最終的に勝利することができてうれしい。チーム全員が作戦を理解していて、他のチームも僕たちの動きを把握していたが、それでも私たちは勝利を収めた。他に選択肢はなかった。ゴール手前で誰も逃げられないスピードを維持する必要があった。残り700~800mでフリーゴが飛び出したが、いわばリードアウトとしてそれに追従した。ゆっくりと彼に追いつき、コーナーを抜けると残り220mになり、スプリントを開始するポイントになった。本当に勝ちたかったので、今日はそれを達成できたことが素晴らしい」(ピーダスン)
メイン集団はトースタイン・トレーエン(ノルウェー)の総合順位を守りたいバーレーン・ヴィクトリアスが先頭になって13分31秒遅れでゴールした。大差で先着していたルセルフは前日の総合13位から9位に浮上。しかも総合8位のセップ・クス(アメリカ、チーム ヴィスマ・リースアバイク)までわずか3秒差だ。第6ステージから4日間マイヨ・ロホを着用していたトレーエンはこの日総合10位に落ちた。
疲れている脚を休息日に回復させて最終週に臨みたい(ヴィンゲゴー)
第6ステージでヤング・ライダー賞の純白ジャージを獲得したペリツァーリは、一時はルセルフにジャージを奪われるかもしれないと思ったという。
「スタートから本当に厳しかった。何人かのライダーが猛スピードで加速し、一気に逃げ切りを仕掛けてきた。その後の序盤はかなり楽になって集団の中で走っていた。終盤はバーレーン・ヴィクトリアスがルセルフとのタイム差を縮めるためにプッシュしてくれて、最終的にはいい1日になった。チームの目標はジャイ・ヒンドレーの表彰台だと常に言っているし、そのために戦っている。白いジャージはプラスだ。休息日で回復して3週目に向けて準備を整えたい。来週は非常に厳しいものになるだろう。今週もすでに厳しかったけど、マドリードは近いのでそこに行くのが待ちどおしい」(ペリツァーリ)
この日は難なく首位を守ったヴィンゲゴーは「もちろん、マッズ(ピーダスン)のことはよく知っている」と同じデンマーク選手のステージ勝利についてコメントした。
「今回のブエルタ・ア・エスパーニャでも他のレースでも、集団の中でよく話している。彼はナイスガイで、正直言って今日の彼の勝利はうれしい。彼は勝つに値するし、心からお祝いしたい」
安定した走りでマイヨ・ロホをキープしたヴィンゲゴー
「今日は脚を少し休ませたかった。残念ながらチームメートのディラン・ファンバーレ(オランダ)とウィルコ・ケルデルマン(オランダ)は相当頑張らなければならず、彼らにとって楽な1日ではなかったと思う。そのおかげで今日は思い通りに1日を乗り切ることができた。休息日はいい1日にしたい。脚が疲れているからね」(ヴィンゲゴー)
9月8日は大会2回目の休息日を大西洋に面したポンテベドラで過ごす。残るは6ステージ。第16、17ステージが中程度の山岳、第18ステージがバリャドリードでの27.2km個人タイムトライアル。第20ステージが総合優勝をほぼ確実にさせる超難関山岳。そして最終日となる14日に首都マドリードに凱旋する。
首位ヴィンゲゴーに対して、総合2位アルメイダはまだ48秒しか離されていない。2分38秒遅れの3位にQ36.5プロサイクリング チームのトーマス・ピドコック(イギリス)、3分10秒遅れの4位にレッドブル・ボーラ・ハンスグローエのジャイ・ヒンドレー(オーストラリア)、3分30秒遅れの5位にデカトロン・AG2Rラモンディアール チームのフェリックス・ガル(オーストリア)がいる。15ステージを終えてなお真紅のリーダージャージ、マイヨ・ロホの行方は決まっていない。最後の6日間決戦も見逃せない。
文:山口 和幸
山口 和幸
ツール・ド・フランス取材歴30年超のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、東京中日スポーツ、ダイヤモンド・オンライン、LINEニュース、Pressportsなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)、講談社現代新書『ツール・ド・フランス』。青山学院大学文学部フランス文学科卒。
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