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ソレルが大会通算4勝目を独走で決める!UAEは今大会7勝目、4人目の区間勝者|ブエルタ・ア・エスパ-ニャ2025 レースレポート:第14ステージ
サイクルロードレースレポート by 山口 和幸地元スペイン、カタルーニャ出身のマルク・ソレルが第14ステージを制す
第80回ブエルタ・ア・エスパーニャは9月6日、アビレス〜ラ・ファラポナ ラゴス・デ・ソミエド間の135.9kmで第14ステージが行われ、UAEチームエミレーツ・XRGのマルク・ソレル(スペイン)が最後の16kmを独走し、2020・2022・2024年に続く大会通算4勝目を挙げた。UAEチームエミレーツ・XRGはこれで7勝目。首位ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、チーム ヴィスマ・リースアバイク)が39秒遅れの2位、46秒遅れの総合2位ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ・XRG)が同タイムで3位。ヴィンゲゴーは2位のボーナスタイム6秒、アルメイダは3位の4秒を獲得し、総合成績でその差は48秒に広がった。
アシスト役のソレルがこの日は序盤戦から逃げ集団に
前日の激坂アングリルに続き、アストゥリアス山脈での2戦連続となる山岳フィニッシュ。157選手がアビレスを出発し、比較的平坦なルートで戦いを始めた。わずか20kmほどでこの日の逃げ集団が形成されたのだ。
UAEチームエミレーツ・XRGのミッケル・ビョーグ(デンマーク)とソレル、チーム ヴィスマ・リースアバイクのヴィクトル・カンペナールツ(ベルギー)、リドル・トレックのアンドレア・バジオーリ(イタリア)とカルロス・ベローナ(スペイン)、モビスター チームのジェフェルソン・セペダ(エクアドル)、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエのニコ・デンツ(ドイツ)とティム・ファンダイケ(オランダ)、スーダル・クイックステップのジャンマルコ・ガロフォリ(イタリア)、EFエデュケーション・イージーポストのジェームズ・ショー(英国)、デカトロン・AG2Rラモンディアール チームのブリュノ・アルミライユ(フランス)とレオ・ビジオー(フランス)とジョルダン・ラブロッス(フランス)とヨハネス・スターンミッテ(ノルウェー)、バーレーン・ヴィクトリアスのフィンレー・ピカリング(英国)、チーム ピクニック・ポストNLのハイス・レイムライゼ(オランダ)とケヴィン・ヴェルマーク(米国)、イスラエル・プレミアテックのヤン・ヒルト(チェコ)が第1集団を形成。69.5km地点にあるこの日の最初の山岳ポイント、カテゴリー3級のラルト・テネブレオに上り始めた。
「逃げ集団に入ることは考えていなかった。考えていたことと違ってしまったが、アタックしたカンペナールツの後を追うことができた」というソレルが第1集団に加わったきっかけをゴール後にコメントしている。ソレルにはこのステージで勝ちにいきたい理由があった。
前日のアングリルに続きこの日も厳しい山岳が選手たちを待ち受ける
中間スプリントポイントで連日トップ通過を狙ってきたリドル・トレックのマッズ・ピーダスン(デンマーク)は、「昨日言ったように、今日はゆっくり走って集団に留まる日にした。明日に体力を残したい。確かに厳しいステージになるだろうが、勝ちたいステージだから」と、この日はお役御免の1日となった。
ラルト・テネブレオを通過した24人の逃げ集団は、89.9km地点のエントラグに設定された中間スプリントポイントで最大約6分のリードをヴィンゲゴーのいるメイン集団から奪った。この日2つ目の山岳、102.1km地点にあるプエルト・デ・サン・ロレンソ(カテゴリー1級)ではショーがトップ通過。追いかけるメイン集団では、2日前にステージ優勝、前日に区間3位に入っているアルメイダが好調なペースを見せ、総合トップ10を争うリドル・トレックのジュリオ・チッコーネ(イタリア)やイネオス・グレナディアーズのエガン・ベルナル(コロンビア)が苦戦を強いられることになった。
5年前のリベンジをラ・ファラポナでソレルが果たす
山頂ゴールとなるラ・ファラポナは距離16.9kmで平均勾配5.9%。ここで、カタルーニャ出身のソレルが2度にわたり逃げ集団からアタックし、単独で先頭に立ってゴールを目指した。ソレルは追いかける選手たちに1分以上のリードを素早く築き上げ、2020年の第2ステージ(レクンベリ)、2022年の第5ステージ(ビルバオ)、2024年第16ステージ(ラゴス・デ・コバドンガ)に続く、ブエルタ4度目のステージ優勝に向けてゴールを目指す。
クライマーのソレルにとって、この日のラ・ファラポナは苦い経験がある。コロナ禍で秋に延期開催となった2020年ブエルタ・ア・エスパーニャ。10月31日にビジャビシオサをスタートした距離170kmの第11ステージが・ラファラポナにゴールするコースだった。勝負は上りで決着がつかず、残り200mからのスプリント勝負となったが、グルパマ・FDJのダヴィド・ゴデュ(フランス)がスパートしてメジャー初優勝。当時は地元モビスターに所属していたソレルは2位に甘んじていた。ソレルはその後の2022年、デビュー以来所属していたモビスターから現チームに移った。
「第1集団に加わったら、あとはどう攻めればいいか分かっていた。プエルト・デ・サン・ロレンソの上り坂は前を走る選手の後輪から離れずに上った。最後の渓谷は2020年にコースとなっているから分かっていた。とてもタフな渓谷だけど、途中で差をつければ最後までいける。あとは単独走だけに風の強さがどうなるかだ」とソレル。
ゴールまで16kmの地点で決定的なアタックを決めたソレルは、そのまま単独で逃げ切った。ブエルタ・ア・エスパーニャではこれで自身4勝目。そしてチームとしてはフィゲレスで行われた第5ステージのチームタイムトライアルを含めて7勝目。14ステージで7勝なので勝率は5割となるが、ビルバオの第11ステージが過激派による妨害行動で勝利者なしとなっているので、実際の勝率はそれ以上。この第11ステージをなしと考えるとチームは4区間連勝。そしてフアン・アユソ(スペイン)が2勝、ジェイ・ヴァイン(オーストラリア)が2勝、アルメイダが1勝、そしてソレルが勝って出場8選手のうち4選手がステージ優勝者に。
ラスト16kmを独走し見事5年前のリベンジを果たしたソレル
「予想外の1日だったけど、とてもうれしい。チームとしてブエルタ・ア・エスパーニャのここまでのステージ50%を制覇できたのは信じられないこと。本当に素晴らしい」とソレル。
UAEチームエミレーツ・XRGのジェイ・ヴァイン(オーストラリア)は山岳賞を守った表彰式のあとに次のように語った。
「14ステージ中7ステージ制覇は信じられないよね?(笑) 信じられないくらい素晴らしい。4人の優勝者、チームタイムトライアル。今年はチームとして本当にいいパフォーマンスを発揮できている。チームメートとの相性も抜群で、ジョアン(アルメイダ)とともに総合優勝を目指している。個人的には全力を尽くしているし、これからもジョアンをサポートするために全力を尽くしていきたい」
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総合4位のヒンドレーがマドリードの表彰台を狙って勝負に出る
総合優勝候補の中でレッドブル・ボーラ・ハンスグローエのジャイ・ヒンドレー(オーストラリア)が果敢な走りを見せた。ラ・ファラポナの最後の数kmで、チームメートでヤング・ライダー賞ジャージを着るジュリオ・ペリツァーリ(イタリア)のアシストをうまく利用してアタックを仕掛けた。首位のヴィンゲゴーと2位のアルメイダだけが反応することができ、最後はヴィンゲゴー、アルメイダの順でゴール。ヒンドレーはこの2選手から4秒離されて4位でゴールし、ボーナスポイントは獲得できず。それでも総合3位のトーマス・ピドコック(英国、Q36.5プロサイクリング チーム)には10秒の差をつけた。このステージが終わって総合成績では3位ピドコックが2分38秒遅れ、4位ヒンドレーが3分10秒遅れ。今後もマドリードの表彰台を狙った2人の戦いが続きそうだ。
「今日はジャイ(ヒンドレー)とともにベストを尽くした。表彰台に上がるにはピドコックを抑えなければならないことは分かっている。だから、ジャイは10秒差を縮めることができた。これからも戦い続ける」というペリツァーリはさらにこう続けた。
「休息日まであと1日。第3週になにができるか試してみる。私とチームにとって白いジャージは目標だが、それよりもジャイと表彰台に立ちたいし、それを達成できると確信している。だからまずは総合の表彰台を目指し、それから私と結果を検証したい。今日は全員が懸命にプッシュして、最後には限界まで追い込んだ選手もいた。明日もスタートから厳しいレースになるけど、逃げが決まったら集団の中で楽に走れることを願っている」
首位を守ったヴィンゲゴーは、「今日の2位は昨日よりもいい気分。今日は優勝を狙っていなかったので、この2位はいわばうれしいボーナス。ボーナスのおかげでジョアン(アルメイダ)との差は2秒増えた。悪くない結果」と語る。
この日はアルメイダを差し切った総合首位のヴィンゲゴー
「UAEは昨日とても強かったので、今日もハードワークしてくるだろうと予想していた。ソレルは勝利を掴むのに十分なリードを持っていたので、追いかける立場のメイン集団でもUAEが攻めてきたのも驚きではなかった。うまく切り抜けられたと思う」
アストゥリアス山脈での2連続の山岳フィニッシュの後、ブエルタ・ア・エスパーニャの2週目は、7日の日曜日にア・ベイガ/ベガデオ〜モンフォルテ・デ・レモス間の167.8kmで難易度中の山岳ステージで終了する。前半に2つの山岳ポイントがあるのでステージ優勝を狙うハンターたちが飛び出していくことはほぼ確実。
ペリツァーリが願っていたように、総合優勝争いとは関係のない選手らが第1集団を形成すればメイン集団は脚を温存しながらのゴールとなる。一方でこの日は体力を使わなかったピーダスンらが勝ちを狙っていくにはもってこいの舞台。そんなレース展開も興味深い。大会第2週のラストステージも注目だ。
山口 和幸
ツール・ド・フランス取材歴30年超のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、東京中日スポーツ、ダイヤモンド・オンライン、LINEニュース、Pressportsなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)、講談社現代新書『ツール・ド・フランス』。青山学院大学文学部フランス文学科卒。
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