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ブエルタ期間中に衝撃発表。アユソが契約返上でシーズン末にUAE離脱|ブエルタ・ア・エスパーニャ2025
サイクルロードレースレポート by 山口 和幸大会期間中に今シーズン限りでUAEを離れるアユソ
スペイン期待の22歳、フアン・アユソがUAEチームエミレーツ・XRGとの2028年までの契約を返上し、2025シーズンを最後に他チームに移籍する。ブエルタ・ア・エスパーニャの最初の休息日となった9月1日にチームが明らかにしたのだが、当人は発表の30分前に今回の移籍話が表沙汰になることを通告され、チームに対してのさらなる不信感をあらわにした。
育成計画のビジョンとスポーツ哲学に両者の食い違いが
タデイ・ポガチャル(スロベニア)の不在により、圧倒的な選手層の厚さを見せつける最強チームが混乱状態にある。他チームならエースとなるようなスター選手たちが連携を欠き、総合優勝をねらうジョアン・アルメイダ(ポルトガル)が重要な場面で孤立する。チームとしての動きが機能していないのは明らかだ。
どうして第6ステージだけで11分51秒も遅れたアユソが第7ステージで一転して独走勝利できたのか? 指で耳の穴を塞いだウイニングポーズの理由は? 戦力としてはチーム ヴィスマ・リースアバイクと互角以上なのに、アルメイダがヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク)にうまく対抗できないのはなぜ? 結構奥が深いチーム内の確執が存在すると想像すれば、これらの問題点の発端がなんとなく理解できる。
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チームが9月1日に明らかにしたアユソ移籍の内容は、「育成計画のビジョンとチームのスポーツ哲学との整合性に関する相違を踏まえ、アユソは2025年末にチームを離れることを決定した」というものだった。
「長年にわたり、チームからのサポートと機会を与えてくれたことに感謝したい」とアユソは発表を受けて表明したということになっている。「成長する機会に恵まれ、最高の選手たちと肩を並べることができた。そこで学んだことは、私のキャリアにおいて常に貴重な財産となる。今こそ、これまでと同じ情熱を持って、新たな道を歩む時だと感じている。UAEチームエミレーツ・XRGの今後の成功を祈っている」と続くのだが、それはアユソの表面的な言葉のような気がする。
離脱が発表された翌日、第10ステージのスタート地点で、アユソが地元スペインのテレビ局のインタビューを受けている場面がYouTubeで公開されている。「まるで独裁政治のようだ。一方的な権力だ。支配されている。UAEがなぜなんの通告もなく声明を発表したのか理解できない」
休息日にリリースが出ることはアユソにとっても寝耳に水だったという
アユソは今回のブエルタ・ア・エスパーニャでツートップのエースとして起用され、チームに貢献しようと決意していたものの、「チーム経営陣から次から次へと無礼な行為をされると、チームの一員であり続けるのは難しくなる。交渉を通して事態を収拾しようと努力したが、独裁政治や一方的な権力闘争のようで、不可能だと感じることもあった」とインタビューで語った。
別のスペインメディアによれば、アルメイダはなにも言わないタイプで、一方のアユソは少し傲慢だと表現している。サイクリングにはそういうところが必要だとフォローしつつ、今回はアユソもアルメイダもヘッドフォンをつけて、自分たちの世界に閉じこもっている。チーム幹部はただそれを容認するだけで、彼らに任せればいいと思っているのだという。
UAEチームエミレーツ・XRGのスター選手たちがチーム全体ではなく自分のためにレースをしていて、総合成績でチーム最上位のアルメイダをめぐって明確な戦略が浮かび上がっていないのは大きな問題だ。
チームとしては第13ステージ終了時点で6勝と好調を維持しているUAEだが…
アユソはプロキャリアの初期段階ですでに高い実力を示してきた。若手選手としてさらなる成長と経験を積むために、より大きなリーダーシップや新たな挑戦を求める気持ちが強くなったことが、移籍の主な動機として考えられる。多くの若手選手は、ワールドツアーのトップチームで経験を積んだ後、自らをより高められる環境や新たな役割を求めて移籍するケースが少なくない。
UAEチームエミレーツ・XRGは、世界屈指の強豪チームであり、多くの実力者が揃っている。そのため、チーム内の競争は非常に激しく、グランツールや大きなレースでエースを任される機会に限りがある。アユソが自身のポテンシャルを最大限に生かし、リーダーとして走りたいという希望が強まったことも、離脱理由の一つとみられる。
「同じ熱意を持って、今こそ違う道を歩むべき時だと感じている」とアユソも語った。
高い評価を受けているアユソには、他の有力チームから魅力的なオファーが提示された可能性も考えられる。契約条件やサポート体制、チーム戦略などがより自身のキャリア目標と合致する場合、移籍を決断する動機となる。現在のところ2026シーズンの所属先はうわさにとどまるだけで発表されていない。今後、アユソがどのような活躍を見せるのか、多くのファンが注目している。
山口 和幸
ツール・ド・フランス取材歴30年超のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、東京中日スポーツ、ダイヤモンド・オンライン、LINEニュース、Pressportsなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)、講談社現代新書『ツール・ド・フランス』。青山学院大学文学部フランス文学科卒。
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