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サイクル ロードレース コラム 2025年9月5日

アユソが一騎打ちを制して今大会2勝目!総合上位は不動でヴィンゲゴーが首位堅持|ブエルタ・ア・エスパ-ニャ2025 レースレポート:第12ステージ

サイクルロードレースレポート by 山口 和幸
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ゴールスプリントでロモを下し今大会2勝目のアユソ

ゴールスプリントでロモを下し今大会2勝目のアユソ

第80回ブエルタ・ア・エスパーニャは9月4日、ラレド〜ス・コラレス・デ・ブエルナ間の144.9kmで第12ステージが行われ、UAEチームエミレーツ・XRGフアン・アユソ(スペイン)がモビスター チームのハビエル・ロモ(スペイン)をゴールスプリント勝負で破って、第7ステージに続いて今大会2勝目を挙げた。総合優勝をねらう有力選手は翌日に超激坂のアングリル峠が待ち構えているだけに、この日は静観して6分22秒遅れの同一集団でゴール。チーム ヴィスマ・リースアバイクヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク)が難なく首位を守った。

第1集団は伏兵ばかり52人!UAEチームはアユソとソレルが加わる

前日のビルバオでは中東紛争に関わる過激なレース妨害行動が発生し、ゴール手前3km地点でレース打ち切り。ステージ優勝者を決めることができなかった。標的となったイスラエル・プレミアテックは、「我々はプロのサイクリングチーム。ブエルタ・ア・エスパーニャへの参戦を継続する決意を固めている。それ以外の行動は、イスラエル・プレミアテックだけでなく、すべての自転車競技チームにとって悪しき前例となる」と表明。
「抗議活動が平和的で集団の安全を損なわない限り、すべての人の抗議活動の権利を尊重する。しかし、今日のビルバオの抗議者の行動は危険なだけでなく、彼らの大義に逆効果であり、世界でも最高の自転車ファンの一部であるバスクの人たちが当然得るべきステージのフィニッシュを奪った。ブエルタ・ア・エスパーニャの運営組織と警察は安全な環境づくりに全力を尽くしており、レース主催者とUCIの継続的なサポートと協力、公私にわたってサポートを表明してくれたチームとライダー、そしてもちろんファンに深く感謝している」として、第12ステージは平穏に開始された。

第12ステージのスタート地点・ラレドを出発した選手たち

第12ステージのスタート地点・ラレドを出発した選手たち

こうして164選手がラレドを出発した。翌日に長くて過酷な山岳ステージが控えるので、有力選手は動かないことが予想され、アタッカーにはステージ優勝のチャンスがある。大規模な逃げ切りが想定されたのだが、予想をはるかに上回る50人以上が勝利を目指して第1集団を形成することになる。

レースがスタートして、41.4km地点を頂上とするカテゴリー2級山岳のプエルト・デ・アリサスへ。この上り坂を前に20人以上の逃げ選手が出現。UAEチームエミレーツ・XRGはカタルーニャ出身のマルク・ソレル(スペイン)がチームメイトのアユソとともに動いた。その後、上り坂と下り坂で集団からのカウンターアタックが連続し、このレースの70km以上を走行した時点で、先頭集団を構成する52選手が決定的になった。

首位のマイヨ・ロホを着るヴィンゲゴーを擁するチーム ヴィスマ・リースアバイクは、第2集団で常にペースをコントロール。先行する第1集団は各チームから複数の選手が送り込まれ、その中にはグランツールの優勝経験がある15人の実力選手がいる。ただし無理に吸収する必要はなく、総合成績に影響しないタイム差を維持してゴールを目指せばいいという考えだ。

逃げ集団の主な選手はソレルとアユソ、チーム ヴィスマ・リースアバイクのヴィクトル・カンペナールツ(ベルギー)、リドル・トレックのセーアン・クラーウアナスン(デンマーク)とマッズ・ピーダスン(デンマーク)、モビスター チームのパブロ・カストリーリョ(スペイン)、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエのニコ・デンツ(ドイツ)、スーダル・クイックステップミケル・ランダ(スペイン)、イネオス・グレナディアーズのミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド)、バーレーン・ヴィクトリアスのサンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア)、Q36.5プロサイクリング チームのダビ・デラクルス(スペイン)、XDS・アスタナ チームのロレンツォ・フォルトゥナート(イタリア)、グルパマ・FDJシュテファン・キュング(スイス)、チーム ジェイコ・アルウラーのエディ・ダンバー(アイルランド)、コフィディスのヘスス・エラダ(スペイン)など。

山岳賞で2位に位置するスーダル・クイックステップのルイス・フェルヴァーケ(ベルギー)と、同4位のカハルラル・セグロスRGAのジョエル・ニコラウ(スペイン)は山岳賞ポイントを狙っての第1集団入りだ。

この日の中間スプリントポイントは2つの山岳ポイントの間、103.2km地点にあるバロスに設定されていた。ポイント賞の1位であるピーダスンはこの中間スプリントポイントで1着通過の20点を取るために最初の峠から第1集団に加わっていた。作戦通りにピーダスンは1着通過することに成功。

中間スプリントを制し、ポイント賞のリードを広げたピーダスン

中間スプリントを制し、ポイント賞のリードを広げたピーダスン

ピーダスンは結果的にゴールでも5位に入っていて、さらに17点を獲得。ポイント賞争いでのリードを広げるステージとなった。
「本当にいい1日になった。ゴールは3選手が先行していたので4位を目指したが、カンペナールツがとても強かった。このステージにはとても満足している。逃げ集団に入るのは非常に難しかったが、今は上りでとてもいい感触をつかんでいる。頭で考えた通りに脚が動くと、本当に気持ちがいい。明日はまた違ったレースになると思うので、とにかくフィニッシュを目指したい」とピーダスン。

1勝目は逃げ切り勝ちのアユソ、今度は一騎打ちの勝負を制す

この中間スプリントポイントから、ステージ優勝争いが本格的に始まった。モビスター チームのミハエル・ヘスマン(ドイツ)、バーレーン・ヴィクトリアスのフィンレー・ピカリング(イギリス)、イネオス・グレナディアーズのマグナス・シェフィールド(アメリカ)、EFエデュケーション・イージーポストのジェームズ・ショー(イギリス)、アルケア・B&Bホテルズのヴィクトール・ゲルナレック(フランス)、グルパマ・FDJのブリユー・ロラン(フランス)が122km地点を頂点とするカテゴリー1級山岳のコジャダ・デ・ブレネスへの上りで先行を狙い、他の選手に30秒以上のリードをつけた。

しかし、ソレルが素晴らしい働きでその動きを抑制し、その助けを得たアユソがゴールまで26kmの地点、山頂まであと3kmの地点でアタック。「上りの一番難しい部分でアタックしたが、風が強かった。ソレルが素晴らしい仕事をしてくれて、ペースを設定し、大集団に匹敵するほどの逃げをコントロールしてくれた。おかげでアタックを決意するまで、レースをほぼコントロールすることができた」とアユソ。ロモが唯一これに反応することができて2人でゴールを目指した。

最後は追いかけるフランスのロランが13秒後ろに位置していたが、ステージ優勝はアユソとロモのスペイン勢直接対決となり、アユソがスプリントで打ち負かした。今大会2勝目はスプリンターのヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)、総合1位のヴィンゲゴー、チームメートで山岳王のジェイ・ヴァイン(オーストラリア)に続く4人目。UAEチームエミレーツ・XRGとしては第5ステージのチームタイムトライアルも勝っているので、11ステージ(第11ステージは優勝者なし)でなんと5勝だ。

絶好調のUAEチームは今大会5勝目を達成

絶好調のUAEチームは今大会5勝目を達成

「ここで勝てて本当にうれしい。ジュニア時代にベサヤ・サイクリングクラブで2年間、ロス・コラレス・デ・ブエルナという町にいた。2回の夏はチームメートと一緒にここで過ごした。私は別のハベア出身だけど、実はここは私にとってとても愛着のある場所。親友がたくさんいて、数週間後に一緒に休暇に行く予定なんだ」とアユソ。

「こんなにタフなステージの最後にどっちが一番速いのか分からない。私は自分の戦略を練る必要があった。ロモをナーバスにし、最後の数kmでもっとプッシュしないと追いつかれてしまうと思わせる必要があった。チームも無線で私にそうするように指示していた。ローテーションしないのは好きではないけど、時にはそうしなければならないこともある」

アユソはコースをよく知っていて、ジュニアレースと同じフィニッシュだったことが有利になった。スプリントのタイミングも知っていて、完璧だった。

ヴィンゲゴーがマイヨ・ロホ堅持、天王山アングリルでの勝利もねらう

メイン集団は6分22秒後、チーム ヴィスマ・リースアバイクのベン・トゥレット(イギリス)を先頭に、セップ・クス(アメリカ)、マッテオ・ジョーゲンソン(アメリカ)、ヴィンゲゴーの順でゴール。ライバルたちもタイム差なしの集団でゴールした。第10ステージで3度目の首位に立ったヴィンゲゴーが3日連続で首位を守ったことになる。依然としてUAEチームエミレーツ・XRGのジョアン・アルメイダ(ポルトガル)が50秒遅れの総合2位だ。

「自分たちのことだけに集中している。今のところマイヨ・ロホを持っているし、2つのステージ優勝を果たしている。今日の目標はタイムロスなくステージを完走することだった。だから今日と残りのレース全体を通して、今回の結果には非常に満足している」とヴィンゲゴー。

総合優勝争いはこの日は休戦となったが、翌13ステージは極めて重要な局面を迎える。距離202.7kmのルートはカンタブリア州のカベソン・デ・ラ・サルからスタートして前半戦は平坦路。153.6km地点にカテゴリー1級山岳のラ・モスケタがあり、181.6km地点にカテゴリー1級山岳のエル・コルダルがある。そして最後はアストゥリアス山頂の難関斜面、恐ろしいアングリル峠にゴールする。

3日連続で首位をキープしたヴィンゲゴー

3日連続で首位をキープしたヴィンゲゴー

「アングリルには特別な思いがある。ここは急勾配で、非常に厳しい上りだ。2020年、プリモシュ・ログリッチのアシストとして初めてブエルタ・ア・エスパーニャに参戦し、アングリルにゴールした第12ステージで区間14位に入った。みんなが私のことを本当に理解してくれたのは、おそらくその時が初めてだったと思う。今回で3回目なので、脚の状態も良好だといいけどね。優勝を狙えるかもしれないが、まずは自分の調子を見極める必要がある。アングリルで優勝できれば夢のよう。ブエルタ・ア・エスパーニャを代表する名坂の一つなので」(ヴィンゲゴー)

第12ステージを終えて山岳賞はUAEチームエミレーツ・XRGのジェイ・ヴァイン(オーストラリア)が守った。
「前回ここでレースをした時は霧と曇りがひどくて、ルート全体は把握していなかった。でも、2つ目と最後の上りは数年前から知っていた。入り口はとてもトリッキーで、ジョアン(アルメイダ)をできるだけいい位置につけさせようとしていた。そして、道幅が狭くなったら、どんな動きにもついていけるように気をつけていた」と、アシスト役としての役目に徹した。

「アユソが優勝して、山岳賞でも2位に浮上したって? 本当に最悪だよ。本当に嫌だ」とジョークのつもりで笑い飛ばしつつ、「もちろん信じられないよ! グランツールで5つのステージ優勝なんて信じられないし、アユソにとっても本当に素晴らしいことだ。今夜は祝わなきゃ。明日のアングリルは非常に重要なステージだから、おいしいディナーを食べて、これからの厳しい2日間に備えたい」

レッドブル・ボーラ・ハンスグローエのジュリオ・ペリツァーリ(イタリア)が総合10位を守るとともにヤング・ライダー賞の純白ジャージをキープした。
「今日はスタートがすごく速かったので、全員が逃げ集団に入りたがっていた。集団が抜け出すととても落ち着いていた。最後の上りでは誰もアタックを仕掛けなかったので、集団に紛れて楽々とゴールした」とホッとした表情。
「アングリルは少し怖い。プロフィールを見た限りでは、間違いなく今までで一番厳しい上りになる。でも、ワクワクしている。脚の調子がどうなるか見てみたい」

文:山口 和幸

山口 和幸

ツール・ド・フランス取材歴30年超のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、東京中日スポーツ、ダイヤモンド・オンライン、LINEニュース、Pressportsなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)、講談社現代新書『ツール・ド・フランス』。青山学院大学文学部フランス文学科卒。

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