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ヴィンゲゴーが独走で大会2勝目!首位のマイヨ・ロホはトレーエンが死守|ブエルタ・ア・エスパ-ニャ2025 レースレポート:第9ステージ
サイクルロードレースレポート by 山口 和幸今大会2勝目を挙げ、再び輝くヴィンゲゴー
第80回ブエルタ・ア・エスパーニャは8月31日、アルファロ〜エスタンシオン・デ・エスキ・デ・バルデスカレイ間の195.5kmで第9ステージが行われ、2分33秒遅れの総合2位ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、チーム ヴィスマ・リースアバイク)が最後の山岳で独走し、今大会2勝目、大会通算4勝目を挙げた。首位のトースタイン・トレーエン(ノルウェー、バーレーン・ヴィクトリアス)は1分46秒遅れの17位でゴールし、マイヨ・ロホを守った。
勝利を目指すアタッカー5選手が最大の困難を排して飛び出す
開幕から最初の休息日を迎えるまでの9連続ステージもこの日が最後だ。選手たちはリラックスできる月曜日を楽しむ前に、バルデスカレイの山頂ゴールまで、獲得標高3300m超を上らなければならない。エスタンシオンは「スキー場」という意味で、最後は激坂を上りきった先にゴール地点がある。この日が終われば総合優勝を争う選手が上位にラインナップされることが想定される。
第9ステージは、総獲得標高3300m超のバルデスカレイが舞台となった
休息日前の最後の挑戦にステージ勝利をねらうアタッカーたちは奮起するが、なかなか抜け出せなかった。繰り返される動きに絶好のタイミングを取ってようやく抜け出したのが、元世界チャンピオンのミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド、イネオス・グレナディアーズ)とEFエデュケーション・イージーポストのアーチー・ライアン(アイルランド)だ。48km地点でなんとか集団との差を広げた。
集団はすぐ後ろに迫っているが、2人はしっかりと踏ん張り、後ろから加わろうとする選手らを待つ。まず、モビスター チームのミハエル・ヘスマン(ドイツ)とロットのリアム・スロック(ベルギー)が先頭集団に加わる。そして、チーム ピクニック・ポストNLのケヴィン・ヴェルマーク(米国)がやってきて、63km地点で5人の逃げ集団を形成する。
「いや、逃げ集団に追いつこうとはしなかった。ジュリオ・チッコーネのためにレースをコントロールしようとしたんだ。逃げ集団をコントロールするためには、アタックの混戦に加わる必要があった」とピーダスンはこの時の動きをゴール後に説明している。
ピーダスンが所属するリドル・トレックは、Q36.5プロサイクリング チームのトーマス・ピドコック(英国)とともにギャップをコントロールする役割を担う。その動きのお陰で、アタッカーたちのリードは100km地点で最大2分45秒で、それを超えることはなかった。
雨にも負けず、ハイペースを維持するメイン集団
断続的に雨が降り、メイン集団はレインウエアを着るなどの必要があったが、その勢いは衰えず、アタック勢は全力を尽くして抵抗した。残り20km地点で彼らのリードは55秒。しかし最後のバルデスカレイ(距離13.2km、平均勾配5%)の麓で、ついに捕らえられた。レースは振り出しに戻り、リドル・トレックが最もきつい最初の坂でペースを握った。
ヴィンゲゴーは残り距離を誤認するもゴールまで持ちこたえる強さを発揮
残り11km地点で、突然チーム ヴィスマ・リースアバイクのマッテオ・ジョーゲンソン(米国)が猛烈な加速を見せ、続いてヴィンゲゴーが猛攻を開始した。リドル・トレックのジュリオ・チッコーネ(イタリア)も反応したが、頂上まであと10kmの地点で取り残されてしまう。
ヴィンゲゴーはそのままゴールまで独走。第2ステージは間一髪の勝利だったが、この日は独走で決めた。ピドコックとUAEチームエミレーツ・XRGのジョアン・アルメイダ(ポルトガル)が24秒遅れでゴール。デカトロン・AG2Rラモンディアール チームのフェリックス・ガル(オーストリア)は1分02秒遅れ。チッコーネら残りの総合優勝候補は1分46秒遅れ。トレーエンもこの集団にいて、最初の休息日を前に37秒差でマイヨ・ロホを守った。
後続を寄せ付けず独走でゴールしたヴィンゲゴー
「最後の上りでチームを先頭に立たせた瞬間、今日は総合順位争いにしようと決意した。一日中最高の調子だった。スピードを上げてくれないかと頼んだら、彼らはそれを受け入れてくれたので、私も挑戦した。素晴らしいチームワークだった。彼らがいなければ、ゴールまで来られなかった」とヴィンゲゴー。
「正直に言うと、もしかしたら下調べが足りなかったのかもしれない。アタックした時はフィニッシュに近いと思っていたけど、残り10kmのバナーを見て驚いた。後続との差が開いていたので、そのまま走り続けなければならなかった。この日はマイヨ・ロホを狙っていたわけではなく、ステージ優勝とライバルとの差を広げることの方が重要だった」(ヴィンゲゴー)
なんとヴィンゲゴーは残り距離を誤認していたのだ。ヤング・ライダー賞ジャージを守ったジュリオ・ペリツァーリ(イタリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)も「ヴィンゲゴーが上りのかなり早い段階でアタックしてきた。僕はグループの中で少し遅れていて、少し驚いた」と証言している。
「でも最終的に2分近く遅れたということは、彼があまりにも強すぎたということだ。脚はよかったし、調子もよかった。上りの最後の部分は少し楽だった。チームとともにベストを尽くした」というペリツァーリは自分のヤング・ライダー賞ジャージよりもエースのジャイ・ヒンドレー(オーストラリア)を総合優勝させるほうが重要だと言い切る。
「ジャイとともにベストを尽くしたい。最終日のマドリードでホワイトジャージがついてくることはこれからの走りにかかっているだろう」
ヴィンゲゴーがあんなに速いとは思っていなかった(トレーエン)
総合成績では1分46秒遅れの17位でゴールしたトレーエンだが、前日までの2分33秒のアドバンテージを利してマイヨ・ロホを守った。ヴィンゲゴーが1位のボーナスタイム10秒を獲得したので、そのタイム差は37秒になった。
「最後の上りを終えた時は、マイヨ・ロホは着られないだろうと思っていたので、助けてもらって持ちこたえられたのは本当にうれしい。ヨナス・ヴィンゲゴーがあんなに速いとは思っていなかった。アタックした時はものすごく速くて、あとはとにかく生き残ることだけに集中した」という。
チームの支えでマイヨ・ロホを死守したトレーエン
一方でヴィンゲゴーを擁するチーム ヴィスマ・リースアバイクはこの日にトレーエンを首位から引きずり下ろす考えはなかったようで、「途中、ユンボ(ヴィスマの旧チーム名)の2人の選手に助けてもらったので、もしかしたらヨナスにジャージを着せるのはまだ先だったのかもしれないと少し不安になった」とトレーエンは察したという。いずれにしても「今夜のバーガーが楽しみ!」とマイヨ・ロホ。
山岳賞はUAEチームエミレーツ・XRGのジェイ・ヴァイン(オーストラリア)が守ったが、13分04秒遅れの区間76位と低迷。この日は得点を上積みすることはできなかった。
「今日は誰もが予想していた以上に、勝負の分かれ目となる1日になった。思ったよりは辛くなかったけど、最初の2時間は本当に激しく、天候も悪く、本当に過酷だった。結局、長く厳しい1日になってしまった。タイムロスは決していいことではないが、明日は休息日。気持ちを立て直し、残り2週間でなにができるかを見極めたい。各ステージの山岳ポイントとその内訳をすべて書き留めておく必要がある。30点を獲得できるステージもまだあるから2週間でどう展開していくのか楽しみ」とモチベーションを維持する。
「レースで何が起こったのかさえ分からない。ヴィンゲゴーが勝ったことは知っているけど、詳しくは翌日に聞いてみないと分からない(笑)」と大きく遅れてゴールしたピーダスン。この日はポイント賞の1位を守ったものの、ヴィンゲゴーがゴールの1位に与えられる30点を獲得して近づいてきた。
「ヴィンゲゴーが山岳ステージで勝ち続ければ、その都度30点を獲得してポイント賞のグリーンジャージを着るだろう。それは当然のことだけど、我々はそれを簡単に手放すつもりはない。彼がすべての山岳ステージで勝てるわけではない。だから様子を見ながら戦い続けるつもりだ」(ピーダスン)
大会10日目は最初の休息日を牛追い祭りで有名なパンプローナで過ごす。9月2日からレースが再開され、大会第2週はイヤというほど山岳が用意されている。好調のヴィンゲゴーがどこで首位に躍り出るのか? トレーエンが意地を見せるか? アルメイダ、ピドコック、ガル、チッコーネ、ヒンドレーが逆転をねらって勝負してくるか? レースはいよいよ白熱してきた。
文:山口 和幸
山口 和幸
ツール・ド・フランス取材歴30年超のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、東京中日スポーツ、ダイヤモンド・オンライン、LINEニュース、Pressportsなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)、講談社現代新書『ツール・ド・フランス』。青山学院大学文学部フランス文学科卒。
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