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サイクル ロードレース コラム 2025年8月31日

フィリプセンが第1ステージに続く2勝目!首位トレーエンら総合上位は動かず|ブエルタ・ア・エスパ-ニャ2025 レースレポート:第8ステージ

サイクルロードレースレポート by 山口 和幸
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開幕ステージに続き今ブエルタ2勝目を挙げたフィリプセン

開幕ステージに続き今ブエルタ2勝目を挙げたフィリプセン

第80回ブエルタ・ア・エスパーニャは8月30日、モンゾン・テンプラリオ〜サラゴサ間の163.5kmで第8ステージが行われ、アルペシン・ドゥクーニンクヤスペル・フィリプセン(ベルギー)が大集団のスプリント勝負を制し、第1ステージに続く今大会2勝目、大会通算5勝目を挙げた。首位のトースタイン・トレーエン(ノルウェー、バーレーン・ヴィクトリアス)、2分33秒遅れの総合2位ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、チーム ヴィスマ・リースアバイク)らはタイム差なしの1位集団の中でゴールし、総合成績の上位は変わらず。

山岳ルートのはざまに置かれた貴重なスプリントステージ

第8ステージは平坦路で、スプリンターにとって数少ないチャンスがあるステージだ。ただし前半は起伏に富んでいてアタッカーが仕掛けるポイントが多い。メイン集団に捕らえられなければ彼らが逃げ切る可能性もある。最後はサラゴサのゴール地点をいったん通過し、1周23.4kmの市街地サーキットを走ってゴールする。スプリンターにとってはゴール地点を一度確認できるだけに自分にとって適切なコースと残り距離を把握できる。あとはアタッカーを逃さないようにチームのアシスト陣の協力を得るだけだ。

この日は121km地点に中間スプリントポイントがあり、ゴール以外でもポイント賞の得点が獲得できる。中間スプリントポイントでは1着20点、2着17点、3着15点、4着13点、5着10点。ゴールは1位30点で15位まで順位に応じた得点が与えられる。中間スプリントポイントは4着や5着でも高得点が付与されるので無視することはできない。

獲得標高差が今大会で最も少ないスプリンター向けの第8ステージ

スプリンター向けのコース設定となった第8ステージ

前日までのポイント賞はリドル・トレックマッズ・ピーダスン(デンマーク)がトップの98点。イスラエル・プレミアテックのイーサン・ヴァーノン(英国)が76点で2位。フィリプセンが75点で3位。リドル・トレックのジュリオ・チッコーネ(イタリア)が75点で4位。つまり依然として大接戦だ。

ブエルタ・ア・エスパーニャは山岳の要素が強いだけに、今回の各チームはスプリンターをそれほど起用していない。唯一、アルペシン・ドゥクーニンクはツール・ド・フランスの序盤で不運の落車リタイアに終わったフィリプセンを起用。ピーダスンもスプリントを得意とするが、第3ステージでグルパマ・FDJダヴィド・ゴデュ(フランス)にゴール勝負で逆転され、ここまで勝ち星がない。ポイント賞も狙っていきたいが、それよりもピーダスンがほしいのはステージ勝利である。

厳しいブエルタで2勝できれば満足だ(フィリプセン)

この日は山岳ポイントこそないものの、地域の特徴としては風の方向が変わりやすいので注意が必要だった。0km地点を通過してレース開始のフラッグが振られると3人の地元スペイン選手が飛び出した。コフィディスのセルヒオ・サミティエルは、ステージ序盤(11km地点)で故郷バルバストロを通過するため、特にモチベーションが高い。ブエルタ・ア・エスパーニャでの長距離アタックの常連であるカハルラル・セグロスRGAのジョアン・ボウとブルゴス・ブルペレットBHのホセルイス・ファウラという2人のアタッカーがそれに続いた。

レース開始直後に地元スペインのサミティエルら3選手が逃げを形成

レース開始直後に地元スペインのサミティエルら3選手が逃げを形成

この中で最も総合成績がいいのは8分56秒遅れのサミティエルで、マイヨ・ロホのトレーエンを擁するバーレーン・ヴィクトリアスはある程度の逃げを容認した。その差を縮めるのはスプリンターがいるチームの手に委ねられる。3選手のリードはステージ序盤の20km地点で最大となったが、それでも4分10秒差だ。

先頭の3人は風に逆らって見事な連携を見せた。地元の英雄サミティエルが中間スプリントポイントを1着で通過した。2分弱の遅れでメイン集団が到達し、ピーダスンがこの集団のトップで通過して、4着の13点を獲得した。「3選手に先行されたので、中間スプリントで獲得できるのは4番手の13点だった。もちろん全力を尽くさなければならなかった」とピーダスン。

サラゴサ市街が近づくと、サミティエルとボウはペースを上げていく。ゴールの町を周回する最後の23.4kmのループに入ると、ファウラを置き去りにする。ファウラはすぐにメイン集団に吸収された。残り17kmで逃げを組んだ2人もついに捕らえられた。

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アラゴン州の首都サラゴサは、レース史上50回目のゴールだ。ハイペースなフィナーレを前に緊張が高まる。エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)率いるロットが残り1kmで先頭に立つが、残り数mになると実力に優るフィリプセンに誰も抵抗できず、フィリプセンは今大会2回目、大会通算5勝目を挙げた。ツール・ド・フランスでは10勝しているので、グランツール通算15回目の優勝ということになる。現在ベルギー最強スプリンターのフィリプセンは、グスタフ・デロール、ロジェ・ドブラマンク、エディ・プランカールトといったベルギー出身の歴代スター選手たちと肩を並べ、優勝者リストに名を連ねた。

「勝ったんだから文句のつけようがない。最後は牽引してくれるチームメートの姿を見失ってしまった。彼らはまた素晴らしいリードアウトを見せてくれたと思うが、僕はそこにいなかった。コミュニケーションを取ろうとしたが、最後の1kmは難しく、風を切る道を見つける必要があった。脚はコンクリートのようだったが、なんとか勝てたので本当にうれしい」とフィリプセン。

「グランツールでの15勝目? どれも特別な勝利だ。決して簡単なことではない。ここまで来るのに山岳地帯を苦労して走ってきた。厳しいブエルタ・ア・エスパーニャだけに、2勝できれば満足だ」

ポイント賞も需要なレースの一部だが
ステージ優勝のために前を向く(ピーダスン)

フィリプセンはポイント賞で30点を獲得。ステージ2位はヴァーノンで25点。ステージ優勝を目指したピーダスンは9位に沈み9点だった。その結果、ポイント賞の総合成績はピーダスンが120点で1位、ヴァーノンが111点で2位、フィリプセンが105点で3位となった。

「最終スプリントは期待外れだった。上位に入れないのは我々の望みではないけど、現状は仕方ない。今日の結果を変えることはできない。前を向いて、ステージ優勝を目指して努力を続けるしかない。ステージ優勝することが最大の目的で、中間スプリントでのポイント獲得は重要だけど、勝利することが肝心。それがレースなのだ」と悔しさをにじませるピーダスン。

3日連続でマイヨ・ロホに袖を通したトレーエン

3日連続でマイヨ・ロホに袖を通したトレーエン

個人総合成績では、アンドラにゴールした第6ステージで逃げに乗り、総合優勝を争う有力選手に3分25秒差をつける区間2位でゴールして首位に立ったトレーエンがその座を守った。ゴール後の表彰式でマイヨ・ロホを着用するのはこれで3日連続だ。

トレーエンは、「普段はこういったステージはかなり退屈なんだけど、今日は昨日よりも少し楽しめた。ストレスも少なく、ジャージを失うことへの不安もそれほどなかった。だから楽しめた。正直に言うと、コースはあまり確認していない。明日どうなるか見てみようと思う」とコメント。

山岳賞を着るジェイ・ヴァイン(オーストラリア)らUAEチームエミレーツ・XRGはこの日は体力温存に徹した。「今日は体力的には回復日だったけど、精神的にはそれほど休めなかった。横風が吹く可能性もあり、一日中ストレスが溜まった。脚はしっかり回復できたので、また頑張る準備は万端」という。

ポイント賞ではトップを走るピーダスンだがステージ勝利には手が届かなかった

ポイント賞ではトップを走るピーダスンだがステージ勝利には手が届かなかった

「これまでのブエルタ・ア・エスパーニャで経験したような暑さはない。明日、山岳賞ジャージを着て優勝できたら本当に素晴らしいけど、チームの作戦に委ねられる。明日は最後の上り以外にはあまりチャンスがないので、総合優勝を狙う選手たちがここで行くだろう。今回のレースでは、彼らがまだ抜け出せた上りがないので、集団から飛び出すことになると思うが、チームとして対処していきたい」(ヴァイン)

開幕からの第1週は1回目の休息日前日となる第9ステージまでと形容されることが多い。第1週の締めくくりとなる日曜開催の第9ステージはアルファロからエスタンシオン・デ・エスキ・デ・バルデスカレイまでの距離195.5km。中間スプリントポイントが165.5km地点にあり、ゴールは距離13.2km、平均勾配5%のカテゴリー1級山岳。タイム差のつきやすい山頂ゴールである。

ゴールすれば翌日は休息日で、主要選手が体力をどれだけ投入するか、ヴィンゲゴーら実力者に対してトレーエンがどこまで持ちこたえることができるのかが興味深い。

※レース後、斜行によりエリア・ヴィヴィアーニ、ブライアン・コカールはそれぞれ集団最後尾の105、106位へ降格処分が下された。

山口 和幸

ツール・ド・フランス取材歴30年超のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、東京中日スポーツ、ダイヤモンド・オンライン、LINEニュース、Pressportsなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)、講談社現代新書『ツール・ド・フランス』。青山学院大学文学部フランス文学科卒。

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