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ゴデュが大本命のピーダスンをスプリントで撃破!首位ヴィンゲゴーは区間3位でボーナス4秒獲得|ブエルタ・ア・エスパ-ニャ2025 レースレポート:第3ステージ
サイクルロードレースレポート by 山口 和幸5年ぶりの区間優勝を笑顔で飾ったゴデュ
第80回ブエルタ・ア・エスパーニャは大会3日目となる8月25日、イタリアのサン・マウリーツィオ・カナヴェーゼからチェーレスまでの134.6kmで第3ステージが行われ、グルパマ・FDJのダヴィド・ゴデュ(フランス)がリドル・トレックのマッズ・ピーダスン(デンマーク)を制して、5年ぶり3回目のステージ優勝を飾った。首位のヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、チーム ヴィスマ・リースアバイク)は区間3位。ゴデュが10秒、ヴィンゲゴーが4秒のボーナスタイムを獲得し、両者は個人総合時間成績で並んだが、これまでのステージ着順の合計によりヴィンゲゴーが首位を守った。
アタッカーがレース開始から飛び出す!これを潰しにかかるのがリドル・トレック
大会史上初めてのイタリアでの戦いは3日目。この日は65.8km地点にカテゴリー2級の山岳があり、ゴールのチェーレスもカテゴリー4級の上り坂。これはもう立派な山岳ステージである。第1ステージでスプリント勝利し、第2ステージで首位のマイヨ・ロホを失ったアルペシン・ドゥクーニンクのヤスペル・フィリプセン(ベルギー)は、「今日はスプリント勝負にはならないね」と自らの活躍に期待はできないとコメント。ピーダスンのように上り坂があっても最後の勝負に残れる選手が勝つだろうというのが大方の予想だった。
この日も正式スタートの0km地点を通過してレース開始のフラッグが振られるとすぐにアタック合戦が始まった。ヴィンゲゴーがマイヨ・ロホを着用するため、繰り下がりで山岳賞ジャージを着用する同賞2位のアレッサンドロ・ヴェッレ(イタリア、アルケア・B&Bホテルズ)、EFエデュケーション・イージーポストのショーン・クイン(米国)、チーム ジェイコ・アルウラーのパトリック・ガンパー(オーストリア)、アンテルマルシェ・ワンティのルーカ・ファンボーヴェン(ベルギー)の4選手がアタックを成功させて第1集団を形成した。
この日もスタート直後から激しいアタック合戦が繰り広げられた
メイン集団はリドル・トレックが先頭に陣取ってペースをコントロール。逃げを潰してピーダスンに勝たせるための戦略だ。序盤はダーン・ホーレ(オランダ)がその役割を担う。5.8km地点を頂上とするカテゴリー2級のイシリオに向かうルートでは、その上りはじめで第1集団とメイン集団との差は2分25秒。さらに上りでこの日最大の2分30秒差になった。アマヌエル・ゲブレイグザビエル(エリトリア)がホーレと交代して集団の先頭を走る。
カテゴリー2級の山岳ポイントは1着5点、2着3点、3着1点の山岳賞得点が手に入る。前日までの山岳賞は1位のビンゲゴーが5点、2位のヴェッレが3点で、当然のようにヴェッレがこの日の第1集団に加わったのは山岳ポイントを取りにいくためだ。上り坂でヴェッレがペースアップすると、ガンパーとファンボーヴェンが脱落。ヴェッレが山岳ポイントを1着で通過して5点を獲得し、ここで山岳賞ランキングで首位に立つ。クインが粘ってヴェッレの次に通過した。メイン集団は2分差で後れを取っている。
クインは78.5km地点となるクオルニェの中間スプリントポイントを先頭で通過した。ここはイネオス・グレナディアーズのエガン・ベルナル(コロンビア)が名誉市民となっている町だ。コロンビア出身のベルナルは、2016年にアンドローニ・ジョカトーリでプロとしてのキャリアをスタートさせたが、その当時はこの地で生活し、トレーニングを行っていたからだ。
コースは起伏に富んだ地形となり、リドル・トレックはゲブレイグザビエルに加えてカルロス・ベローナ(スペイン)が先頭に出てペースアップ。この動きで集団に分裂が生じ、フィリプセンもここでメイン集団から脱落してしまう。
先頭集団にもう少し人数が必要だったけど、これからも逃げ切りに挑戦したい(クイン)
残り39km地点、この日の目的を達したヴェッレはメイン集団を待つことになり、クインが単独トップに躍り出る。集団との差は55秒。膝の怪我に悩まされたシーズンを経て、最高峰の舞台に復帰した元全米チャンピオンは、ステージ優勝を目指して突き進む。しかし残り19km地点で捕らえられた。
単独トップに躍り出るも残り19kmで捕まるクイン
「トップで走るのはうれしいし、挑戦する価値はあった。今日はうまくいかなかったけど、努力を続ければ必ずうまくいくと分かっている。だから、今後もあきらめずに頑張りたい」とクイン。
「多くのチームが終盤の集団スプリントに持ち込もうと意欲的だったことは分かっていたが、集団に勝つために先頭集団にもう少し人数が必要だったと思う。カテゴリー2級の上りで私たちは2人だけになってしまった。今日はうまくいかない状況だったが、これからも挑戦し続けたい」
密集した集団が上り坂のフィナーレへと猛烈な勢いで進む中、リドル・トレックとチーム ヴィスマ・リースアバイクは距離2.6km、勾配値3.6%の最後の上りで猛烈なペースを叩き出す。ピーダスンが残り250mでスプリントを開始して先頭に立ち、残り50mで最終コーナーを攻める。しかし、前日も区間3位に入って好調のゴデュがゴールまで全力でプッシュしてピーダスンを抜き去り、2020年のラ・ファラポナとラ・コバティージャでの勝利に続き、大会通算3勝目を挙げた。
ラスト50mの最終コーナーでトップに立ったゴデュがピーダスンをかわしフィニッシュ
リドル・トレックはピーダスンを勝利に導くために全力を尽くしたが、2位に甘んじなければならなかった。前日にはジュリオ・チッコーネ(イタリア)がヴィンゲゴーにゴールライン手前で抜かれ、ステージ優勝をさらわれただけにチームとしては悔しさが残る結果となった。
ゴデュとヴィンゲゴーは3日間の合計所要時間で並んだが、これまでのステージ順位を合計するとヴィンゲゴーが45、ゴデュが53。この結果、ヴィンゲゴーが総合1位となり、マイヨ・ロホを守った。
「ピーダスンに勝てると思っていなかったが、最後にゴデュが爆発的に抜いていった。それでも3位でボーナスタイム4秒が獲得できたのでまずまずの結果」とヴィンゲゴー。
総合3位は8秒遅れでチッコーネ、4位は14秒遅れでベルナル。Q36.5プロサイクリング チームのトーマス・ピドコック(英国)、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエのジャイ・ヒンドレー(オーストラリア)、UAEチームエミレーツ・XRGのフアン・アユソ(スペイン)らが16秒遅れで続く。
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ピーダスンにスプリントで勝てたのだから、これはもう驚きでしかない(ゴデュ)
ゴデュはフランス勢きってのクライマーで、2022年のクリテリウム・デュ・ドーフィネの最終ステージでワウト・ファンアールトを破って以来、UCIワールドツアーでの勝利を収めた。
「驚きだ。このステージはピーダスンのためにあると思っていたが、今朝チームから、パンチ力があるから勝てると言われた。彼らは一日中、私を集団の前方に導いてくれた。本当に素晴らしい仕事をしてくれた。自分にとってもチームにとっても、優勝できてとてもうれしく、誇りに思う。最高の気分だ」とゴデュ。
「本当に厳しいシーズンだ。2022年のクリテリウム・デュ・ドーフィネでワウト・ファンアールトに勝利して以来、ワールドツアーのレースで勝てなかった。これでマッズにスプリントで勝てたという話を加えることができる」
再び山岳賞の首位に立ったヴェッレ
山岳賞の首位に立ったヴェッレは、「明日は母国イタリアを出発するので、山岳ジャージを肩にかけて出発したかった。今日はトライして、うまくいった。計画はカテゴリー2級の上りで1位か2位になることで、EFの選手(ショーン・クイン)の前に位置するのは本当に全力で走らなければならなかった。彼と話をして、最終的に1位で通過することができ、その後はできるだけ一緒に走った。脚の調子はあまりよくなかったけど、とにかく山岳ポイントまでの65kmを目標にした」とまずまずの表情。
アユソはチーム最上位の総合9位とヤング・ライダー賞1位をキープ。
「とてもハードで、とても慌ただしいフィニッシュだった。先頭を走らなければならない山頂フィニッシュと、大混乱のスプリントフィニッシュが混在していた。通常のスプリントステージや山岳フィニッシュよりも、誰もが先頭に立ちたいので、とてもカオスだった。でも、タイム差もなくクラッシュもなかったので、全体的にはいい1日だった。ライバルにタイムを離されないようにしていたが、ヴィンゲゴーに4秒のボーナスタイムを奪われたのは誤算だった」
大会4日目、26日の第4ステージはイタリアのスーザをスタートしてフランスのヴォワロンを目指す距離206.7km。37.8km地点にある国境のモンジュネーブル峠を越え、ツール・ド・フランスで有名なガリビエ峠直下のロータレ峠を通過する。つまり本格的なアルプスの山岳ルートである。ブエルタ・ア・エスパーニャがアルプスを舞台とするのはめったにないので要注目!
文:山口 和幸
山口 和幸
ツール・ド・フランス取材歴30年超のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、東京中日スポーツ、ダイヤモンド・オンライン、LINEニュース、Pressportsなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)、講談社現代新書『ツール・ド・フランス』。青山学院大学文学部フランス文学科卒。
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