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ヴィンゲゴーがチッコーネを制して大会通算3勝目、そして初めてのマイヨ・ロホ…有力選手が上位にひしめく激戦|ブエルタ・ア・エスパ-ニャ2025 レースレポート:第2ステージ
サイクルロードレースレポート by 山口 和幸ブエルタ第2ステージで初のマイヨ・ロホ獲得のヴィンゲゴー
第80回ブエルタ・ア・エスパーニャは大会2日目にして、チーム ヴィスマ・リースアバイクのヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク)が総合優勝を争う有力選手がひしめくゴールスプリント勝負を間髪で制して首位に! 2025年8月24日、イタリアのアルバからリモーネ・ピエモンテまでの第2ステージ(距離159.6km)で総合1位の選手に与えられる真紅のリーダージャージ、ラ・ロハ(マイヨ・ロホ)の本格的な戦いが始まってしまった。
レース開始のフラッグとともに、本格的なアタック合戦が始まった
大会が始まって90年、通算80回大会を記念してのイタリア開幕。初日のノヴァーラでアルペシン・ドゥクーニンクのヤスペル・フィリプセン(ベルギー)がスプリントを制して、まずは総合1位のマイヨ・ロホを手に入れた。この日は、アルバをスタートして、ゴール地点となるリモーネ・ピエモンテで距離9.8km、勾配値5.1%の上り坂に挑む。大会2日目にしていきなりの山頂ゴール設定。これぞ山岳レース、ブエルタ・ア・エスパーニャだ。
大会2日目にして、アルバ発、リモーネ・ピエモンテ着、本格山岳ステージが登場
レッドブル・ボーラ・ハンスグローエのタイムトライアルスペシャリスト、マッテオ・ソブレロ(イタリア)がスタート地のアルバ出身で、大歓声で送り出された。それでなくてもイタリア勢への声援は大きい。ブエルタ・ア・エスパーニャがイタリアを走るなんて奇跡だ。チッコーネをはじめたとしたイタリア選手が優勝を目指さない理由はどこにもない。
レースは郊外に設定された0km地点を通過していきなり本格化。マイヨ・ロホを持つチーム、アルペシン・ドゥクーニンクのガル・グリヴァル(スロベニア)が最初のアタックを仕掛ける。カハルラル・セグロスRGAのヤコブ・オトルバ(チェコ)とロットのリアム・スロック(ベルギー)が続く。グランツールのステージ優勝経験を持つレッドブル・ボーラ・ハンスグローエのニコ・デンツ(ドイツ)が3km地点で彼らに合流して4人の先頭集団を形成した。
スペインの第2カテゴリーチーム、ブルゴス・ブルペレットBHもこの逃げに加わろうと試みる。10km地点でチームのシヌヘ・フェルナンデス(スペイン)がアタック。1分05秒先行している第1集団を追いかけ始めた。その一方で、第1集団からはデンツが脱落してしまう。メイン集団は15km地点でタイム差が2分50秒になったことを知って、トーマス・ピドコック(英国)をエースとするQ36.5プロサイクリング チームがペースメークを開始。29km地点でフェルナンデスは第1集団に加わることができ、再び4選手になった。
マイヨ・ロホを着るフィリプセンはリーダージャージの栄誉を楽しむ
Q36.5プロサイクリング チームのシャビエル・アスパレンが2分前後の差を縮めるためにメイン集団を引っ張る。これに対してマイヨ・ロホを着るフィリプセンは、第1集団にチームメートのグリヴァルを送り込むことができたのでまさにレースを楽しんでいた。
フィリプセンはグスタフ・デロール(1935年の第1回大会優勝者)や2024年大会で2日間総合1位に立ったワウト・ファンアールトに続き、マイヨ・ロホを着用した34人目のベルギー人ライダーだ。しかしフィリプセンはこの日のゴールではマイヨ・ロホを失うと予想していた。7月のツール・ド・フランスでは大会2日目にチームメートのマチュー・ファンデルプールにマイヨ・ジョーヌを譲り、3日目に落車でリタイア。それとは異なるブエルタ・ア・エスパーニャ。2日目にスプリンターが苦手とする山岳ゴールが設定されているのだから、フィリプセンの覚悟も理解できる。
レース後半に雨が降り出し、多くの選手たちが苦戦を強いられた
この日のレース後半は雨になった。濡れた路面でヴィンゲゴーが落車してしまう。幸いにも左ひじにわずかな擦過傷を負っただけで済み、すぐにレース復帰する。
「転倒の影響はないと思う。かなり激しく転倒したけど、それほどひどい怪我はなかったみたいだ。少しあざはできたけど、路面が滑りやすかったから滑っていたんだと思う。だから擦過傷もひどくはなかった」とゴール後のヴィンゲゴー。
グルパマ・FDJのギヨーム・マルタンもこの落車に巻き込まれてしまい、今大会で最初のリタイア選手となった。
残り46km、オトルバが上り坂でアタックをかける。グリヴァルとスロックがオトルバに追従する一方、フェルナンデスはメイン集団に捕らえられてしまう。ゴールまでの上りが始まったところで、先頭3人とメイン集団との差は40秒に。首位のフィリプセンは残り7km地点、グリヴァルとオトルバに追いつこうとハイペース走行を開始したメイン集団からすぐに脱落。メイン集団はその1km後にスロックに追いついた。
チーム ヴィスマ・リースアバイクは力強いペースを刻み、残り1kmまでライバル勢の攻撃を阻止した。UAEチームエミレーツ・XRGのマルク・ソレル(スペイン)とデカトロン・AG2Rラモンディアール チームのフェリックス・ガル(オーストリア)が逃げを狙うが、チーム ヴィスマ・リースアバイクのセップ・クス(米国)が彼らの動きをコントロールした。
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最後は有力選手らによるゴールスプリント勝負へ。ステージ優勝とともにボーナスタイムが懸かるのだから着順は重要だ。チッコーネが力強いスプリントを仕掛けるが、ヴィンゲゴーがゴール直前でチッコーネを抜き去り、2023年の2勝に続く3度目のステージ優勝を飾った。その年はチームメートのクスとプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)との三つ巴の優勝争いとなったが、ヴィンゲゴーは一度もクスの上位とならなかったので、この日が自身初となるブエルタ・ア・エスパーニャ総合1位。初めて真紅のジャージを手中にした。
チッコーネのスパートをヴィンゲゴーがかわし劇的フィニッシュ
チームメートのギヨーム・マルタンが落車により棄権したため、グルパマ・FDJはダヴィド・ゴデュ(フランス)を動かしてステージ3位を確保した。ヴィンゲゴーがボーナスタイム10秒、チッコーネが6秒、ゴデュが4秒を獲得。イネオス・グレナディアーズのエガン・ベルナル(コロンビア)がヴィンゲゴーと同タイムの4位でフィニッシュした。
区間5位のジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ・XRG)からは2秒遅れとなった。ガルが区間6位、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエのジャイ・ヒンドレー(オーストラリア)が7位、UAEチームエミレーツ・XRGのフアン・アユソ(スペイン)が8位で、総合でも9位となりヤング・ライダー賞を受賞した。
総合成績ではこれらの選手に加えてピドコック、バーレーン・ヴィクトリアスのサンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア)、チーム ヴィスマ・リースアバイクのマッテオ・ジョーゲンソン(米国)、ソレルが浮上。終わってみれば大会2日目にして有力選手が上位にひしめく展開となった。
ブエルタ・ア・エスパーニャを12秒差で勝てるとは思っていない(ヴィンゲゴー)
「ステージ優勝は逃したくなかった。チャンスが見えたから、それをつかんだ。今日は勝利できて本当にうれしい。もちろん勝利したのは久しぶりだ。今日の自分の感触とチームのプレーには本当に満足している。そしてマイヨ・ロホをもらえて本当にうれしい」とヴィンゲゴー。ツール・ド・フランスで27回マイヨ・ジョーヌを獲得しているが、マイヨ・ロホは初めてだ。デンマーク選手としてはラース・ミヒャエルセン(1997年)、ヤコブ・フグルサン(2011年)に続く3人目となる。
「チッコーネが加速した時、彼のホイールに追いついたんだ。正直に言うと最後のコーナー手前では追い抜くのは無理だと思っていたけど、コーナーからゴールまでの距離が思ったより長かったので、なんとか追い抜くことができた」(ヴィンゲゴー)
「グランツールでリーダージャージを着るのは数年ぶりなので、それも本当にうれしい」というヴィンゲゴーだが、実際には2023ツール・ド・フランスで総合優勝を決めた最終ステージ以来だ。
「これからのステージが本当に楽しみになった。今日は自分が目指す場所にいることを証明できた。脚の状態は良好で、これからの19ステージもいい状態を保てればと思っている。まだ終わりではないから集中力を高め、さらにタイムを稼がなければならない。厳しい山岳で脚の状態がさらによくなることを願っている。もちろん、UAEも強力なチームであり、ジュリオ・チッコーネは本当に強い。総合優勝をめぐっては、毎日激しい戦いが繰り広げられると思う」
ヤング・ライダー賞1位のアユソは「白いジャージはいつでも歓迎。2023年に着て、なんとか勝ち取ることができたジャージなので、いい思い出になるし、まだ結論を出すのは早いと思うけど、最終日のマドリードまで着続けられることを願っている」とコメント。
「第6ステージのアンドラがブエルタ・ア・エスパーニャの真の試練になると思う。それまではタイムロスなく、安全に、いい形でステージを走り抜けられることを願っている。それからどうなるか見ていきたい。ヴィンゲゴーがマイヨ・ロホを着ているのは、チームにとってさらにいいことだと思う」とつけ加えた。
ヤング・ライダー賞1位のアユソ
UAEチームエミレーツ・XRGはアユソ、ソレル、アルメイダが、チーム ヴィスマ・リースアバイクはジョーゲンソン、クスが、その他の有力選手もまだヴィンゲゴーから12秒差の位置にいる。「ブエルタ・ア・エスパーニャを12秒差で総合優勝できるとは思っていないよ」とヴィンゲゴーが区間勝利インタビューで答えていた通り、レースはこれからが本格化。第3ステージもイタリアでの戦いが続く。
文:山口 和幸
山口 和幸
ツール・ド・フランス取材歴30年超のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、東京中日スポーツ、ダイヤモンド・オンライン、LINEニュース、Pressportsなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)、講談社現代新書『ツール・ド・フランス』。青山学院大学文学部フランス文学科卒。
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