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サイクル ロードレース コラム 2025年8月6日

【輪生相談】科学的な観点や選手たちの話、栗村さんの実体験など、暑い日、効果的に体を冷やせる場所があれば教えて下さい。

輪生相談 by 栗村 修
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寒い時期も終わり自転車が楽しい季節になりました。今の心地良さが続けば良いのですがそういう訳にもいかず、また暑い夏がやってきます。今年の夏もまた暑くなるのでしょうか。去年の暑い日、友人とサイクリングに出かけた私は、休憩時に誤って水をこぼしてしまい、(男性の)デリケートゾーンを盛大に濡らしてしまいました。そのまま走り出したところ、デリケートな箇所がとてもヒュンヒュン致しました。私は何か気付きを得たように思いまして、積極的に走りながら同じ個所を濡らしてみたところ、火照った体が冷やされていくような気がしました。それなりの冷却効果が得られたように感じたのです。ロードレース中継では首筋に氷を入れて走る選手たちの姿をよく見かけますが、首筋以外は、選手たちはどこを冷やしているのでしょうか。科学的な観点や選手たちの話、栗村さんの実体験など、暑い日、効果的に体を冷やせる場所があれば教えて下さい。

(男性 会社員)

 

近年の夏の暑さは、サイクリストにとっても切実ですね。昔に比べると、夏の到来は1か月早まり、終わりは1か月遅くなり、4か月近くも夏が続く感じです。そして、パフォーマンスはもちろん、ときには健康にもかかわる問題になっています。そんな中、質問者さんはとても重要なことに気づかれたようです。

海外のレース中継を見ていると、今の選手たちは積極的に水をかぶり、体を冷やしているのがわかります。とくに、首や太ももの付け根など、体表近くに太い血管がある部位に水をかけて冷却するのは効果的なようです。質問者さんが間違って水をかけてしまった大事な部位も、太ももの付け根に近いですね。こういった部位に、氷嚢や保冷剤を当てたり、水をかけて気化熱で冷却するのは、今後の暑い夏にはとても重要になってくるでしょう。さらに、手のひらや足裏を冷やすのも効果的です。コンビニで「アイスパック」などを購入し、手のひらや足裏に当てて冷却し、溶けた水をボトルに移して補給すると良いでしょう。

それともう一つ、暑さを乗り切るテクニックに「暑熱順化」があります。これは、あえて暑い環境下で運動することでパフォーマンス向上を狙うものです。具体的には、同じ出力でも心拍数が低下することや、発汗量の増大、乳酸閾値アップ、酸素消費量の低下などなどといった効果が、ある程度科学的に確認されているようです。

ようするに、暑い環境でトレーニングすることで、涼しい環境でも持久力と回復力を高める効果が期待できるわけです。

実は僕は、夏に強い選手でした。正確に書くと、暑くなり始めるくらいの、夏の手前の時期にはちょっとパフォーマンスが落ちるのですが、真夏になって周囲の選手たちがヘバっていくにつれ、彼らほどは弱らない僕は相対的に強くなっていくわけです。

当時は「オレって夏に強いな」と思っていたのですが、今思うと、これは本格的な夏になる前に暑熱順化トレーニングをしていた効果だったのではないでしょうか。

当時の僕は、夏だからといって涼しい場所でトレーニングをするわけにはいきませんでしたし、困ったことに朝が苦手だったので、早朝に走るのも無理でした。なので、「暑くてやだなあ」と思いながら日中トレーニングをしていたのですが、これが暑熱順化になっていた可能性は高いと思います。いやあ、朝が苦手でよかったです。もっとも、今の暑さで日中にトレーニングするのは無謀なので、止めましょう。

そして、僕が自己流の暑熱順化トレーニングの最中にやっていたのが、どんどん水をかけて体を冷やすことでした。当時はあまり水を浴びる選手がいなかったので、僕は変わった奴だと思われていた気がします。

家を出る際に全身をずぶ濡れにし、その後は公園の水道でこまめに水分を補給しつつ、頭から水をかぶっていました。また、自動販売機でスポーツドリンクを購入し、ミネラル類を補給していました。真夏のレースではスタート前に水をかぶって全身を濡らしていました。

ちなみに、暑熱順化とは直接関係ありませんが、100km前後のレースにはエアロスーツを着用して参加したりしていました。実は時代を先取りしていたと、ここで胸を張って宣言しておきます。

とはいえ、暑熱順化トレーニングも暑さが身体に強い負担をかけることを前提にしていますし、今の日本の暑さは殺人的です。熱中症になってしまったら暑熱順化どころではなく命の危険がありますし、中長期的にパフォーマンスを下げるリスクもあります。少なくとも、35℃を超えるような日中に走るのは止めましょう。

一方、暑熱対策のためにサウナを利用する手もありますね。サウナは運動時の高温環境に近い状況をもたらすので、発汗反応が敏感になるのに加え、深部体温の急上昇を抑えることが期待できるようです。結果として、涼しい環境下でも運動パフォーマンスが向上することが報告されています。

こういった手法を、実走トレーニングによる暑熱順化と組み合わせることで、脱水や過度な疲労のリスクを減らしつつ、安全で効率的に、暑さに耐えられる体づくりができそうです。気温が上昇し始める時期に導入してみてはいかがでしょうか。

その上で、外を走る際には少し涼しい時間帯を狙って、十分な水分補給や水かけなど暑さ対策を万全にした上で暑熱順化トレーニングを試みるのは、これからの地球でロードバイクを楽しむためには欠かせない習慣になるかもしれません。

サウナは暑熱対策としても活用できる

文:栗村 修・佐藤 喬

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栗村 修

中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。 17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。 引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。

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