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サイクル ロードレース コラム 2025年7月26日

アレンスマンが今大会2勝目に「夢を見ているよう」ポガチャルはマイヨ・ジョーヌ堅守で最後の山岳ステージ終える|ツール・ド・フランス2025 レースレポート:第19ステージ

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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第14ステージに続き2勝目をあげたアレンスマン

第14ステージに続き2勝目をあげたアレンスマン

初のステージ優勝に感激したのが6日前。それからも積極姿勢を貫いてきたテイメン・アレンスマン(イネオス・グレナディアーズ)に、再び神様はほほ笑んだ。今大会最後の本格山岳となった第19ステージ。前回の勝利は逃げからだったけど、今度はマイヨ・ジョーヌグループから飛び出して勝ってみせた。今大会2勝目だ。

「信じられないよ。逃げて勝ったときだってビックリしたのに、今度はマイヨ・ジョーヌグループから勝ったんだ。世界最高のライダーを相手に、僕はすごいことをしてしまったよ。本当に夢を見ているよう。何をしたのか説明を求められても、それができないくらいに状況を整理できずにいるよ」(アレンスマン)

93.1kmに短縮されたレース

アルプス2連戦の最後。今大会を通じても、最後の山岳ステージである。

前夜にコースの短縮が決まった。1級山岳セジー峠の牛の群れで、伝染性結節性皮膚炎の発生が確認されたという。主催者A.S.O.は、この地域の農家の悲しみに寄り添うとともに、レースの円滑な進行を考慮してセジー峠の回避を決めた。

当初129.9kmで予定されていたレース距離は、93.1kmに。前半部で上る予定だった2カ所の登坂区間がカットされた。

コース変更により93.1kmという短い距離に超級山岳が2つ詰め込まれた

コース変更により93.1kmという短い距離に超級山岳が2つが詰め込まれた

1992年冬季五輪の開催地だったアルベールヴィルをスタートしたプロトン。リアルスタートと同時にリドル・トレックがコントロールに入り、前日同様にジョナタン・ミランのポイント獲得を狙う。中間スプリントポイントは12.1km。誰にも邪魔をさせず、ミランを1位通過に導いた。

他選手にとっては、ミランのミッションコンプリートが動きの合図。地元のアレックス・ボーダン(EFエデュケーション・イージーポスト)が逃げを狙うと、アレンスマンやプリモシュ・ログリッチレッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)らが合流。この日最初の上り、超級山岳コル・デュ・プレ(登坂距離12.6km、平均勾配7.7%)へと入った。

この上りで先頭メンバーの入れ替わりが何度かあって、頂上まで5kmを残した段階でログリッチとレニー・マルティネスバーレーン・ヴィクトリアス)、エイネル・ルビオ(モビスター チーム)、ブリュノ・アルミライユ(デカトロン・AG2Rラモンディアール チーム)の4人に。やがてログリッチとマルティネスが抜け出して、そのまま頂上へ。マルティネスが1位通過をして、山岳ポイントを加算させている。

先頭にはヴァランタン・パレパントル(スーダル・クイックステップ)も加わり、3人で次の上り、2級山岳コル・メ・ロズランへ。再びマルティネスが1位通過して、山岳賞での逆転に執念を見せる。

レース序盤はログリッチ、レニー・マルティネスらが逃げを形成

レース序盤はログリッチ、レニー・マルティネスらが逃げを形成

ツール2勝でジロのリベンジ

20km近く続くダウンヒルでは、ログリッチがV・パレパントルとマルティネスを引き離す。下りでの最高時速は94.6kmをマーク。個人総合で5位につけ、上位選手とのタイム差的に総合表彰台圏内までジャンプアップする可能性を残している。しかし、メイン集団もペースを上げていて、ラ・プラーニュ入口を目前にメイン集団へと引き戻された。

今大会最後の超級山岳ラ・プラーニュ。登坂距離19.1kmで平均勾配は7.2%。16人のパックで上りを始めると、フィニッシュ手前14.5kmでアレンスマンが1回目のアタック。反応したのはタデイ・ポガチャルUAEチームエミレーツ・XRG)とヨナス・ヴィンゲゴーチーム ヴィスマ・リースアバイク)だ。

「チーム無線で“何ができるか試してみる”と伝えたんだ。上りの手前までトビアス(フォス)と一緒にいたのだけど、彼は明日のステージ向きだから、今日は僕がやってみようとね。上り始めてみたら、かなり調子が良かった。これはいけるんじゃないかと思ったね」(アレンスマン)

2度目のアタックもポガチャルとヴィンゲゴーがついてきた。ただ、アレンスマンの目には2人がお見合いしているように映った。ならばと、フィニッシュまで13kmを残したところで3度目の攻撃に出た。

「ここまで来たら挑戦するしかなかった。ポガチャルとヴィンゲゴーはとんでもなく強い…エイリアンだよ(笑)。でも、僕みたいな人間でもやれるんだってことを示したかったんだ」(アレンスマン)

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ラ・プラーニュでは、選手たちの到達を前に強い雨が降り始めていた。ときに猛烈に降り殴る中をアレンスマンは突き進んだ。後ろではトップ2がいったん個人総合上位陣のグループに戻っていたが、ポガチャルがみずからスピードを上げてヴィンゲゴー、フロリアン・リポヴィッツ(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)、オスカー・オンリー(チーム ピクニック・ポストNL)に絞り込んでいた。30秒あったタイム差は、確実に縮まっている。

「振り返らず、とにかく全力で走り続けた」(アレンスマン)

残り2kmではリポヴィッツがアタック。ポガチャルとヴィンゲゴーが続き、3人がアレンスマンを視界にとらえていた。最後の1kmでの14秒差は、500m進むと7秒差に。それでも、勝つには十分なリードだった。「出場できるだけで大満足だった」ツールで2勝目を決めた。

「ジロ・デ・イタリアの第3週でひざを痛めてしまい、悔いの残る結果だった。ツールで2勝できてリベンジを果たせたんじゃないかな。最高の気分だよ。やっていることは間違っていなかったね!」(アレンスマン)

アレンスマンは全てを出し尽くし総合勢から逃げ切った

アレンスマンは全てを出し尽くし総合勢から逃げ切った

残り2ステージ、ポガチャルは気を緩めず

一番登頂を果たし、力尽きるように倒れたアレンスマンのすぐ後ろには、ヴィンゲゴーとポガチャルが迫っていた。2人はアレンスマンから2秒差でのフィニッシュ。今回はヴィンゲゴーが先着し、ステージ2位。ボーナスタイムが絡んで総合タイム差が2秒縮まったけど、それでもポガチャルには4分24秒のアドバンテージがある。

「今日はステージ優勝したいと思っていたんだ。ラ・プラーニュにつながる下りからペースを上げていたのだけれど、仕掛けるには少し早すぎたかもしれないね。それからはマイヨ・ジョーヌを守ることも意識しながら、自分に合ったペースで上ることを心掛けた。ヨナスもステージ優勝を狙っているのかと思っていたけど、ただ僕の後ろをついてきているだけだった」(ポガチャル)

最後の山岳ステージを終えて、4度目のツール戴冠が見えてきた…と言いたくなるところだけれど、ポガチャルはまだ気を緩めていない。

「上っている間はパリまでの残り距離を数えていたよ。本当は勝てれば良かったけど、アレンスマンが強かったからね。正直疲れたよ。この天気と、レース後のセレモニーと…まあ、でもこれがツール・ド・フランスだからね。みんなも分かっているように、最後まで何が起きるか予測はつかない。あと2日間、集中して走り続けるよ」(ポガチャル)

レース終盤には、個人総合の上位4人がパックを形成しアレンスマンを追う局面があった。“頂上決戦”にふさわしい、熱い展開。前日のステージで総合タイム差22秒となっていたリポヴィッツとオンリーによる個人総合3位とマイヨ・ブランをかけた争いは、前者に軍配。両者の差は1分3秒に再拡大している。

4度目のツール戴冠まであと2ステージを残すのみとなったポガチャル

4度目のツール戴冠まであと2ステージを残すのみとなったポガチャル

「正直に言うと、今日はオスカーへのマークを徹底していた。うまくレースをコントロールできたと思う。最後の上りは緊張したけど、彼との差が開いたと分かったときは全力で前を目指したよ。ラ・プラーニュに僕の名前がたくさん描かれていて鳥肌が立った。応援してくれたみんなに感謝したい」(リポヴィッツ)

残りは2ステージ。最終日前日、第20ステージはジュラ山脈へ。184.2kmのコースは大小のアップダウンが特徴で、残り僅かなチャンスに賭ける選手たちによる総力戦が見られるだろう。

文:福光 俊介

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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