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サイクル ロードレース コラム 2025年7月21日

ポガチャルのアシスト役、ベルギーチャンピオンのウェレンスが40kmを独走して初のステージ優勝|ツール・ド・フランス2025 レースレポート:第15ステージ

サイクルロードレースレポート by 山口 和幸
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ツールで初ステージ制覇のウェレンス、この日はアシストから主役へ

ツールで初ステージ制覇のウェレンス、この日はアシストから主役へ

第112回ツール・ド・フランスは7月20日、ミュレ〜カルカッソンヌ間の169.3kmで第15ステージが行なわれ、UAEチームエミレーツ・XRGのティム・ウェレンス(ベルギー)が8人の先頭集団の中から残り40kmで単独アタック。ゴールまで逃げ切って初優勝した。タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ・XRG)は他の有力選手と6分07秒遅れのメイン集団の中でゴール。総合1位のマイヨ・ジョーヌを守った。

総合2位と3位の落車遅れにポガチャルがペースダウンを指示

3日間をかけてピレネー山岳を走った選手は2000m級の峠が連なるスペイン国境近くを離れ、フランス南西部の丘陵地へ。トゥールーズの南部に位置するこのエリアはフランスの中でも広大なひまわり畑が多く、カラフルなジャージを着用した選手らが突っ走るのは、黄色をイメージカラーとしたツール・ド・フランスの象徴的なシーンだ。選手はかつての城塞都市カルカッソンヌを目指した。

この日を含めてステージ優勝の数はあと7つしかない。ツール・ド・フランスでの1勝を目標として開幕地にやってきた選手も残るチャンスの少なさに現実の厳しさを痛感しているに違いない。第15ステージは前半が平坦で、後半にカテゴリー3級、3級、2級の山岳ポイントがある。逃げを成功させたい選手が決意を新たにスタートしていった。

スタート地点は気温27度で曇り空が、その後晴れ間が広がる。途中で夏の嵐に見舞われて雹が降る可能性もあると予報されていたが、ゴール付近は気温30度の夏らしい気候になった。

第15ステージ、風景は一転、夏の南仏へ、カルカッソンヌを目指す166人がスタート

第15ステージ、風景は一転、夏の南仏へ、カルカッソンヌを目指す166人がスタート

166選手が13時28分に0km地点を通過。トゥールーズを発着とする第11ステージで、スタートからゴールまで逃げたウノエックス・モビリティのヨナス・アブラハムセン(ノルウェー)とチーム ジェイコ・アルウラーのマウロ・シュミット(スイス)シュミットがこの日もアタックの口火を切った。それを追うアタッカーが相次いで出現し、スタート直後から激しい動きになった。

17km地点で集団がクラッシュし、チューダー・プロサイクリングチームのジュリアン・アラフィリップ(フランス)、総合3位でヤング・ライダー賞のフロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)、山岳賞のレニー・マルティネス(フランス、バーレーン・ヴィクトリアス)が巻き込まれた。アラフィリップはメディカルカーで手当てを受け、左肩を負傷したリポヴィッツはチームメートのヨルディ・メーウス(ベルギー)とジャンニ・モスコン(イタリア)が残って集団に復帰させようと牽引を開始した。

ステージ勝利を目指してアタックした選手は20km地点で約40人になり、第1集団を形成。チーム ヴィスマ・リースアバイクヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク)は落車の混乱でメイン集団から遅れ、チームが復帰を手伝いにかかった。リポヴィッツはさらにその後方だ。この状況を受けたUAEチームエミレーツ・XRGが無線を通じてポガチャルに、「ヴィンゲゴーとリポヴィッツが後ろにいるので集団を遅らせるように」と伝えた。メイン集団はスローダウンして2選手の復帰を待つことになる。

「クラッシュに巻き込まれてしまい、転倒したけどたいしたことはなかった。チームが全力を尽くして私を復帰させてくれたので、本当にうれしかった」とリポヴィッツ。明確な目標を設定せずにツール・ド・フランスに出場したというが、ここまで想定以上の活躍をするリポヴィッツ。最終週の走りによってはパリの表彰台とヤング・ライダー勝獲得が実現する。

3つ目の峠でストーラーがアタック、シモンズ、ウェレンス、カンペナールツが追い、先頭は4人に

3つ目の峠でストーラーがアタック、シモンズ、ウェレンス、カンペナールツが追い、先頭は4人に

さらに総合10位のカルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ)、アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)、ワレン・バルギル(フランス、チーム ピクニック・ポストNL)、アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、イスラエル・プレミアテック)が先頭の4選手に追いつく。ロドリゲスに総合成績で逆転されたくない総合8位トビアス・ヨハンネセン(ノルウェー)のウノエックス・モビリティと総合9位ベン・ヒーリー(アイルランド)のEFエデュケーション・イージーポストがメイン集団の先頭に立ってペースアップを始めた。

残り40kmでベルギーチャンピオンジャージを着用するウェレンスがアタック。シモンズら7選手にすぐに20秒の差をつけた。残り10kmでは1分40秒差に。最後はフェンス際の観客とハイタッチを交わしながら勝利の感激を味わった。前日までのピレネーでポガチャルをアシストしていたウェレンスがツール・ド・フランス初優勝を飾った。カンペナールツが後方から1人で追いかけたが1分28秒届かなかった。

残り40kmでアタック、独走を決めるウェレンス

残り40kmでアタック、独走を決めるウェレンス

ウェレンスは2012年にロット・ベリソルでプロデビュー。山岳スペシャリストではないが上りを得意としていて、ジロ・デ・イタリアとブエルタ・ア・エスパーニャでそれぞれ2勝を挙げている。2023年にUAEチームエミレーツ・XRGに移籍し、2024年はポガチャルの総合優勝にアシスト役として貢献した。「明日の7月21日はベルギーの建国記念日。ツール・ド・フランスの勝利を届けられてとても誇りに思う」とウェレンス。

第2週は予想外に厳しかったとポガチャル

ウェレンス、カンペナールツに続いて、アラフィリップを先頭とした3位集団が1分36秒遅れでゴール。ロドリゲスは同タイムの19位。ヒーリーを先頭とするメイン集団は6分07秒遅れでゴール。その結果ヨハンネセンは総合8位を守ったが、ロドリゲスが9位に上がり、ヒーリーが10位に落ちた。

総合成績では首位ポガチャル、4分13秒遅れのヴィンゲゴー、7分53秒遅れのリポヴィッツは変わらず。

レース後の記者会見で、ポガチャルはウェレンスといっしょに並んで気分上々でインタビューに臨んだ。

「ティムが優勝して本当にうれしい。彼は年間を通して私の最高のアシストの1人。クラシックレースでもトレーニングキャンプでも、そして今月も私がマイヨジョーヌを守れるよう、本当に一生懸命練習してくれた」というポガチャル。

ウェレンスが追走者とのタイムを広げていくのをチーム無線で聞いていたという。自らの勝利よりもチームメートの勝利の方がうれしいとも口にした。「彼はチャンスを掴み、それを最大限に活かした。本当に素晴らしい」

総合成績は変わらず、首位ポガチャルが笑顔でチームメートの勝利を讃えた

総合成績は変わらず、首位ポガチャルが笑顔でチームメートの勝利を讃えた

ポガチャルによればいつものツール・ド・フランス2週目は比較的楽な山岳が続き、逃げ切りが成功しやすいという。ところが今年はコンディションと地形のせいで、独走状態のポガチャルにしてもこれまでで最も厳しいレースとなっているという。すでに大差は開いているが、残り7日もあるので気を抜くことはできないと言い切る。

「ツール・ド・フランスにおける私たちの最大の、そして唯一の目標はこのマイヨジョーヌを守り抜くこと。特にステージ優勝を狙う日はない。ヴィンゲゴーは昨日、非常に高いレベルでレースを戦っていることを証明した。第3週の山岳で彼が我々を攻撃してくることを期待している」

大会は7月21日に2回目の休息日を過ごす。22日の第16ステージはモンペリエをスタートして、プロヴァンスにあるモン・ヴァントゥに上る注目ステージ。さらに1ステージを挟んでいよいよ終盤の勝負どころ、アルプスの山岳ステージとなる。ポガチャルが2年連続4度目の総合優勝に向けて盤石だが、順風満帆でパリに凱旋できるのか? ライバルたちの反撃はあるのか? 最後の6ステージも必見。

文:山口 和幸

山口 和幸

ツール・ド・フランス取材歴30年超のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、東京中日スポーツ、ダイヤモンド・オンライン、LINEニュース、Pressportsなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)、講談社現代新書『ツール・ド・フランス』。青山学院大学文学部フランス文学科卒。

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