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サイクル ロードレース コラム 2025年7月19日

ポガチャルと大差をつけられたヴィンゲゴー。雑音振り払い真の強さを発揮できるか|ツール・ド・フランス2025

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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開幕時の「ある騒動」で話題になってしまったヴィンゲゴーとヴィスマ

開幕時の「ある騒動」で話題になってしまったヴィンゲゴーとヴィスマ

ピレネー山脈を進むツール・ド・フランス2025のプロトン。山岳3連戦の行方に注目が集まったが、初日からタデイ・ポガチャルUAEチームエミレーツ・XRG)が本領発揮。圧倒的なクライミングでマイヨ・ジョーヌを手繰り寄せた。一方で、トップを争うと見られていたヨナス・ヴィンゲゴーチーム ヴィスマ・リースアバイク)は、2番手に位置するも大きな差を付けられてしまった。その走りに、レースを追う人たちであれば“ある事柄”が頭をよぎったのではないだろうか。

大事な2ステージを落としたヴィンゲゴー

オタカムの頂上を目指した第12ステージで、ヴィンゲゴーはポガチャルに2分10秒差をつけられた。一発のアタックに屈し、そこからは2番手をキープするのが精いっぱい。個人総合でも2位に浮上こそしたものの、ポガチャルとの差は3分31秒に広がった。

残りステージがある状況で「勝負あり」とはもちろん言い切れない。ちょっとしたことがきっかけで、どんなタイム差でもひっくり返ることがある。ただ、とてもじゃないが3分31秒差は僅差とは言えない。ポガチャルとヴィンゲゴー、双方のコンディションや走りからして「逆転は現実的ではない」というのが、報道や大会関係者、出場チーム・選手の声を総合した現地での見方だ。

チーム ヴィスマ・リースアバイクのスポーツディレクター、グリシャ・ニールマン氏はヴィンゲゴーの第12ステージの走りを「実力を発揮できていなかった」と分析。思えば、第5ステージの個人タイムトライアルでブレーキした際には「何が起きたのか説明できない」とも述べていた。2年ぶりのマイヨ・ジョーヌ奪還に好走が“絶対条件”だった2つのステージでの完敗。この先のレース展開や最終的な結果がどうあれ、この2ステージの苦杯が持つ意味は大きくなるだろう。

第12ステージでポガチャルに完敗し大きくタイムを失った

第12ステージでポガチャルに完敗し大きくタイムを失った

開幕時の“雑音”が走りに影響している?

ヴィンゲゴーの周囲がいささが騒がしかったあたりは、本人の走りに影響していないのだろうか。

妻トリーン=マリーさんが自国デンマークのメディアに語った内容が、ツール開幕の時期に至るところで踊ってしまったのだ。

発言によれば、ヴィンゲゴーとチームとの関係性は「釣り合いがとれていない」という。具体的には、「3週間規模の高地トレーニングを年間に数回実施することで、家族との時間が奪われている。もう少し自宅で過ごす時間を与えられないものか。それに、チームはヨナスにプレッシャーをかけすぎている。精神的に限界が来ていないか心配」といった主旨のもの。

これらの言葉が独り歩きしている可能性も否定はできないので、真意を測るのは難しいが、当のメディアによる発信をきっかけにチームやツールメンバーが火消しに追われた面はある。ニールマン氏は「われわれはヨナスとも、トリーンとも良好な関係を築いている。レースやトレーニングスケジュールについても、彼ら家族と話し合っている」と説明。ワウト・ファンアールトもコメントを求められ、「こうした形で話題になってしまうのは残念。僕たちのアプローチは明確で、実際に多くの成功を遂げてきた。ヨナスも満足しているはず」とした。

ヴィンゲゴー自身は当該記事や報道を見たわけではないとしながらも、「何かの間違いだと思う」とコメント。競技中心の生活で家族との時間が犠牲になっているのは確かだとしながらも、「レースもトレーニングもしっかりできている。大丈夫」とも。

こうしたレースに直接関係しない、いわば“雑音”がライダーの集中力を削ぐ原因になる。しかし、本当に「釣り合いがとれていない」のであれば、ヴィンゲゴーにとって今大会が取り組み方を見直すきっかけになるのかもしれない。実際のところは果たして…。

いずれにせよ、今は不必要な情報に惑わされず、全精力を挙げて最後まで戦ってほしい。

第12ステージではチームとしての戦法に疑問の声も

第12ステージではチームとしての戦法に疑問の声も

戦い方のアレンジが必要か

第12ステージに話を戻すと、この日のヴィスマ勢の戦い方には他チームから批判が上がっている。

レムコ・エヴェネプールスーダル・クイックステップ)は「ただポガチャルを助けただけ。リーダーチームじゃないのに集団を牽く意味が分からない」とし、ゲラント・トーマスイネオス・グレナディアーズ)も、自身のポッドキャストで同様の意見を口にしている。フランスメディアは「ヴィスマは自滅した」と報じた。

ニールマン氏はレース後「最善を尽くした」としながらも、「マッテオ・ジョーゲンソンの状態が良くなく、チームとして計算が狂った」と振り返った。仮にジョーゲンソンのコンディションが良かったとして、チーム戦術でポガチャルに勝てたかどうかは分からない。

翌日の第13ステージの山岳個人タイムトライアルでもポガチャルが1位となり、ヴィンゲゴーは2日連続の2位。このステージだけで36秒差がつき、総合タイム差は4分7秒まで広がっている。ヴィンゲゴーはようやく口を開き、「第12ステージで起きたことは自分でも理解できていない。あれは本来の自分の姿ではない。残りのステージは、自分に何ができるかを考えながら走っていきたい」とした。

ポガチャルとヴィンゲゴーとの差がはっきりとしたことで、ヴィスマはこの先のステージをどう戦うだろうか。ヴィンゲゴーを含む各選手がステージ狙いにフォーカスするのか、なおもヴィンゲゴーで総合逆転を目指すのか。ひとつ明白なのは、次なる戦い方をアレンジングする必要に迫られている点にある。

文:福光 俊介 from Loudenvielle, France

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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