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「本能で走った」ポガチャル、山岳個人TTも快勝で総合リードを広げる|ツール・ド・フランス2025 レースレポート:第13ステージ
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介別次元の走りでピレネー2連勝を飾ったポガチャル
10.9kmの山岳登坂一発勝負。1級山岳ペイラギュードの頂上を目指す短時間決戦で、またもその構図が顕わになった。マイヨ・ジョーヌがマイヨ・ジョーヌたる所以を示した23分間のクライミング。タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ・XRG)は、ツール・ド・フランス2025の戦いをより優位にした。
「すべては本能だった。スタートからフィニッシュまでのプランは何も考えていなかった。途中の情報も必要なかったので、無線なしで走ったんだ。大事にしたのは自分の感覚だけ。残り3kmで少し苦しくなったけど、慌てず、落ち着いて、深呼吸をして最後まで踏み切ったんだ」(ポガチャル)
ペイラギュード山頂を目指して
今大会2回目の個人タイムトライアルステージ。平坦路でスピードを競った第5ステージとは違い、今回はペイラギュードの山頂めがけてのアタック。登坂自体は8kmだが、平均勾配にして7.9%。フィニッシュ前で最大勾配16%に達する。
スタートは麓の街・ルダンヴィエル。個人総合下位の選手から順にコースへと出て、たくさんの観客が待つ山のてっぺんへ。しばらくは完走狙いの選手たちがイージーに走り終えていたが、40番出走のルーク・プラップ(チーム ジェイコ・アルウラー)が24分58秒をマーク。これが基準タイムになった。
ヴィンゲゴーが失速するレムコを追い抜く
それからは長くタイムの更新がないまま、トップ10ライダーの出走時間を迎えた。
トップタイムの水準を上げたのはログリッチ
まず上々のペースで走ってみせたのが、個人総合7位でスタートしたプリモシュ・ログリッチ(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)。TTバイクで飛び出すと、第1計測からトップタイムをマーク。さらにペースを上げて第2計測でプラップを30秒上回ると、その勢いのままフィニッシュへ。タイムは24分30秒。ここから水準が上がる。
ログリッチのチームメート、同4位のフロリアン・リポヴィッツも続いた。こちらもTTバイクで走り出すと、ログリッチから10秒前後のタイム差で進行。終盤の急坂区間で苦しんだが、それでも遅れは35秒にとどめる。
このステージの注目は、何といってもトップ3の走り。先陣を切ったのは、TT世界王者のレムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ)。TTバイクで序盤を攻め、第1計測でトップに立つ。ところが、中盤にかけてペースを落ち始める。さらにはチェーンが空回りし、走りのリズムが乱れてしまう。そうしているうちに、背後には2分後にスタートしていたヨナス・ヴィンゲゴー(チーム ヴィスマ・リースアバイク)の姿が。
走りが乱れた理由を話すエヴェネプール
「スタートした直後は良かったんだけど、突然脚に力が入らなくなったんだ。いつも通りにウォーミングアップをして、調子の良さを感じていたんだけど…。何でこうなったのか理由が分からないんだ」(レムコ)
対照的に、ヴィンゲゴーの状態は良さそうだ。第1計測をレムコから3秒差とすると、中腹から一気に加速。第2計測でトップタイムを29秒更新すると、やがてレムコを視界にとらえた。近づくマイヨ・ブランの背中を目指し、最終ストレートで猛スパート。フィニッシュ直前で追い抜くと、23分36秒で走破した。この時点でトップに立ち、ポガチャルの走りを待った。
ポガチャルが別次元の走り
最後にコースへと繰り出したマイヨ・ジョーヌは、やはり別次元だった。まるでスプリントかと思わせるスタートダッシュで飛び出すと、上りに入ってさらに踏み込みを強める。第1計測で早くもトップタイムを出すと、その後もペースが落ちる気配は微塵もない。
第2計測では直前にヴィンゲゴーが更新したばかりの中間タイムを23秒上回る。そして、大観衆の待つ頂上へ。歓声を受けながら最終ストレートを駆けると、フィニッシュタイムは23分ジャスト。ヴィンゲゴーより36秒速く10.9kmの上りを走り抜き、右拳を力強く握った。
「コースが発表されたときに、このステージが少し不安に感じたんだ。うまく走りたい、それだけだった。フィニッシュのアーチにタイムが刻まれているのを見て、勝てると確信したよ。無事に終えられて本当に良かった!」(ポガチャル)
大歓声を受けて走るポガチャルは23分で圧巻のフィニッシュ
TTバイクを選んだヴィンゲゴーやレムコとは違い、ポガチャルはエアロロードバイクをチョイス。レース後にはその意図を明かしている。
「どのバイクにするかはかなり重要な要素だった。ただ、普段からロードバイクに乗っていることが多いわけで、昨日(第12ステージ)の成功もあったから同じバイク(※)で走るべきだと思ったんだ。選択は間違っていなかったよ」(ポガチャル)
※第12ステージではアルカンシエルモデルのエアロロードバイクで走ったが、第13ステージでは無塗装の同モデルを使用
ヴィンゲゴー「タデイが強すぎる」
この結果、ポガチャルとヴィンゲゴーの総合タイム差は4分7秒まで拡大。ポガチャルの優勢は明白だ。
「タイム差には満足しているよ。パリまではまだ遠いけど、ミスがなければ大丈夫だと思う。今のところは順調だね」(ポガチャル)
好走を見せたヴィンゲゴーだったがポガチャルとの差は4分7秒まで広がった
大敗した前日はコメントを控えていたヴィンゲゴーも、タイムトライアルを終えて口を開いた。
「昨日は僕に何が起きたのかまったく分からない。はっきりしているのは、普段の走りとは全然違うということ。逆に、今日の走りは満足できるものになった。最高のパフォーマンスのひとつだったんじゃないかな。ただ、タデイが強すぎる。この先は、僕やチームに何ができるかを考えながら走っていこうと思う」(ヴィンゲゴー)
ピレネー3連戦の最後、第14ステージは今大会のクイーンステージとの評。トゥールマレー、アスパン、ペイルスルードとツールではおなじみの山々を上って、最後はスキーリゾート地・シュペルバニエールへ。レース距離182.6km、獲得標高4950mの難コースが選手たちを試す。
タイム差が広がる個人総合上位陣は、どんなプランで走るつもりだろうか。ポガチャルは? UAEは? ヴィンゲゴーは? ヴィスマは?
状況を整理しておくと、総合3番手をキープするレムコが、ポガチャルとは7分24秒差。一方で3位以下が僅差となっており、総合表彰台の最終枠を目指しての駆け引きも本格化しそうだ。
文:福光 俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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