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サイクル ロードレース コラム 2025年7月17日

史上最速の3週間になる可能性も?高速化と共に高まる落車の危険性|ツール・ド・フランス2025

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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2025年大会もいよいよ勝負の2週目に突入

2025年大会もいよいよ勝負の2週目に突入

ツール・ド・フランス2025は第2週に入った。例年より1日多い10ステージで構成された第1週から激動の日々で、ピレネーの奥深くへと入っていく大会中盤戦もドラマが待っていることは間違いない。

そんな今年のツールだけど、高速化が顕著だ。スタートからフィニッシュまでの平均時速が50kmを超えた日もあって、この調子で行くと3週間・全21ステージの平均時速が史上最速となる可能性もあるという。

3週間の平均時速が10年で約3kmアップ

7月13日に行われた第9ステージでは、勝利したティム・メルリールスーダル・クイックステップ)のフィニッシュタイムが3時間28分52秒。アベレージスピードにすると50.013kmで、ツール史上2番目に速いステージとして公式記録になった。

この日は、マチュー・ファンデルプールアルペシン・ドゥクーニンク)らがフィニッシュ直前まで逃げ続け、メイン集団がそれ追ったことがハイスピードになった要因として挙げられる。また、コース前半にかけて追い風だったが、中盤以降横からの風向きとなり、危機感を持ったプロトンが自然とペースアップしていったことも影響していると見られる。

ツール最速記録は、1999年大会第4ステージで記録された平均時速50.36km。これに届かないまでも、近年のツールは高速化が著しい。歴代最速ステージ上位6つのうち、3つはここ3年間に記録されたものでもある。

3週間を見渡しても速さは数字に表れていて、昨年の個人総合優勝者タデイ・ポガチャルUAEチームエミレーツ・XRG)は平均時速41.82kmで走破。ヨナス・ヴィンゲゴーチーム ヴィスマ・リースアバイク)がツール初制覇した2022年は42.031kmで走っている。クリストファー・フルーム(現イスラエル・プレミアテック)が2度目のツール制覇を果たした2015年が39.64kmだったので、この10年の間にかなりの高速化が進んでいることが分かる。

今年のツールは特に高速化が激しい

今年のツールは特に高速化が激しい

高速化の理由は種々挙げられるが、大枠としてはライダーのフィジカル向上、栄養面と摂取方法の変化、バイクの進化、サイクルジャージの空力性能アップ、これらを含むライダーひとりひとりの意識の高さ…といったところ。同時に、レーススタイルの変化や大会主催者によるコースセッティングのスペクタクル性も、高いスピード域での好勝負に効果をもたらしている。

ちなみに、今大会の第7ステージではミュール・ド・ブルターニュを2回上る難コースでありながら、勝ったポガチャルは197kmを平均時速48.117kmで走った。このステージの獲得標高は2450m。2000m超のコースにおける史上3番目のハイスピードだった。

今大会の残りステージで驚異的な高速レースが再び起こるかというと、コースセッティング上、それは少し考えにくい。ただ、針路をおおむね東にとる第2週以降、追い風予報の日が多いあたりは何らかの影響があるかもしれない。ピレネーやアルプスの急峻な山岳での激闘は必至だし、それ以外のステージでも逃げや要所でのアタックでアグレッシブなレースが見込まれる。その意味では、「史上最速の3週間」となる可能性は大いにありそうだ。

スピードと安全面の強化を並行して進めていく必要性

レーススピードの高速化は、クラッシュの危険性と隣り合わせであることも忘れてはならない。第1ステージでのフィリッポ・ガンナイネオス・グレナディアーズ)や、第3ステージでのヤスペル・フィリプセン(アルペシン・ドゥクーニンク)の落車による戦線離脱は観る者に衝撃を与えた。そのほかにも、落車による負傷で大会を去っている選手が複数人出ている。

UAEの重要なアシスト、アルメイダも落車で今大会を離脱した選手のひとり

UAEの重要なアシスト、アルメイダも落車で今大会を離脱した選手のひとり

自転車競技を統括するUCI(国際自転車競技連合)では、重大なクラッシュの発生原因を調査する動きを強化しており、危険な状況を未然に防ぐ取り組みも行っている。今季から導入されたイエローカード制度もそのひとつ。実際に、このツールでもイエローカードが数選手に提示されており、2枚目が出れば大会から除外される。

誰が一番にフィニッシュするかを競う競技である以上、スピードと安全面の重要性は無視できない要素である。ハイスピードレースが展開されていることが一目瞭然のツール2025年大会は、それらのテーマをより一層深みを持たせる機会となるだろう。

文:福光 俊介 from Toulouse, France

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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