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サイクル ロードレース コラム 2025年7月14日

メルリールが今大会2勝目!ファンデルプールが序盤から逃げるも僅かに届かず…。|ツール・ド・フランス2025 レースレポート:第9ステージ

サイクルロードレースレポート by 山口 和幸
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メルリールがスプリントを制し今大会2勝目

メルリールがスプリントを制し今大会2勝目

第112回ツール・ド・フランスは7月13日、シノン〜シャトールー間の174.1kmで第9ステージが行なわれ、スーダル・クイックステップティム・メルリール(ベルギー)がリドル・トレックジョナタン・ミラン(イタリア)らをゴールスプリント勝負で制して優勝。第3ステージに続く今大会2勝目、大会通算3勝目。アルペシン・ドゥクーニンクマチュー・ファンデルプール(オランダ)は0km地点からアタックし、残り700m地点まで逃げたが捕まった。個人総合成績ではタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ・XRG)がトップとタイム差なしの第1集団でゴールし、その座を守った。

0km地点からリカールトとファンデルプールがアタック

ヴィエンヌ川沿いの城とワイン生産で有名なシノンをスタートし、カヴェンディッシュシティという愛称もあるゴールスプリントの名所、シャトールーにゴールする。24.2km地点に中間スプリントポイントがあるだけで、山岳ポイントは一つもない。タイムトライアルを除いた集団スタートのレースで山岳ポイントがないのは今大会でこのステージだけだ。

第9ステージはシノンからシャトールーまでのコースで行われ、唯一の山岳ポイントがないステージ

第9ステージはシノンからシャトールーまでのコースで行われ、唯一の山岳ポイントがないステージ

シャトールーは2008年、2011年、2021年と、ツール・ド・フランスの直近3大会でマーク・カヴェンディッシュが優勝している。しかも2008年は23歳でツール・ド・フランス2度目の挑戦となったカヴェンディッシュが大会初優勝した特別な町だ。同選手は大会単独最多の35勝を挙げて2024年に引退している。そういった意味では次世代のスーパースプリンターの台頭を予想する舞台になった。

この日も青空が広がり、気温は30度を超えて、選手にとっては暑いレースが続くことになった。風はスタート時こそ穏やかだったが、時間が経つにつれて徐々に強まり、ステージ後半には突風が発生する予報があった。常に追い風だが、横風に変わる場合もあって集団分断には注意する必要があると選手らは指示を受けていた。

176選手が13時25分にシノン郊外に設定された0km地点を通過。アルペシン・ドゥクーニンクのヨナス・リカールト(ベルギー)がすぐにアタックし、マチュー・ファンデルプール(オランダ)がこれに加わった。チームにスプリンターを擁する選手はゴール勝負に持ち込む必要があるため、集団の先頭に位置取りをしていたが、アルペシン・ドゥクーニンクのまさかの奇襲作戦を受けてこの時点は追いかけることなく見送った。

アルペシン・ドゥクーニンクは序盤から奇襲を仕掛け、ファンデルプール&リカールトがアタック

アルペシン・ドゥクーニンクは序盤から奇襲を仕掛け、ファンデルプール&リカールトがアタック

その差が1分30秒に達すると、総合順位で1分29秒遅れの5位にいるファンデルプールがバーチャルマイヨ・ジョーヌとなる。ポイント賞のマイヨ・ヴェールを着るミランのチームメート、ティボー・ネイス(ベルギー)、エドワルト・トゥーンス(ベルギー)、トムス・スクインシュ(ラトビア)が集団を引っ張り始めた。8km地点でその差は1分50秒にまで広がる。

中間スプリントポイントはファンデルプール、リカールトの順で通過してファンデルプールが20点、リカールトが17点のポイントを獲得。集団は3分40秒遅れで通過し、ミランがその先頭で15点を獲得した。ファンデルプールはこれまでポイント賞を積極的には取りにいっていなかったため、前日までのポイント賞で1位ミランの182点に対し、4位の108点だ。ポイント賞の浮上をねらうというより、ステージ優勝を取りにいったのだ。

大物の逃げに総合を争う有力チームが全力で追う

この日、第7ステージの終盤で落車して、肋骨骨折をしながらレースを続行していたUAEチームエミレーツ・XRGのジョアン・アルメイダ(ポルトガル)がレース途中でリタイア。第6ステージまでは1分59秒遅れの総合7位にいて、ポガチャルとともに多様な作戦が取れるはずだったが、残念な結果になった。

大物の逃げに総合上位チームが全力で追撃し、レース終盤に緊張が高まる

大物の逃げに総合上位チームが全力で追撃し、レース終盤に緊張が高まる

一方、リカールトは2020年に現チームでプロになったベルギー選手。同年にドワルス・ドール・ヘット・ハーヘラントで唯一の勝利をあげているが、近年はヤスペル・フィリプセン(ベルギー)の牽引役としてツール・ド・フランスに欠かせない存在。ツール・ド・フランスはこれまで2021年と2023年に完走し、2024年は途中リタイア。フィリプセンが第3ステージにケガをしてツール・ド・フランスから去ったため、この日の積極果敢な走りが見られることになった。

そしてレース後半になると逃げる2選手とメイン集団との差が徐々に縮まっていく。メイン集団ではミランまでもが先頭交代に参加。さらに残り60kmを切ると、スイスチャンピオンのマウロ・シュミット(チーム ジェイコ・アルウラー)が先頭に出てハイペースで引っ張り始めた。チューダー・プロサイクリングチームなども加わり、タイム差は残り54kmで3分になった。

さらにチーム ヴィスマ・リースアバイクがメイン集団の先頭で一列になってペースアップすると、首位ポガチャルや総合2位レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)らもその背後について追従する。タイム差が1分近くまで縮まるとたとえ1位のボーナスタイムを獲得してもファンデルプールの首位奪還はなくなる。それでも必死で逃げるアルペシン・ドゥクーニンクの2選手。0km地点から逃げ切るのか? それとも予想通りの大集団によるスプリント勝負か?

メルリールがミランを逆転して今大会2勝目

残り10kmで50秒。メイン集団はミランを勝たせたいリドル・トレックが集団の前に集まった。ウノエックス・モビリティら他チームも主導権争いを開始。残り6kmでリカールトがすべてのパワーを使い果たして脱落し、ファンデルプールが単独となってゴールを目指す。残り3kmでその差は13秒。そして残り1kmでわずかな差。スタート直後から逃げていたファンデルプールはゴールラインまであと700mというところで吸収された。

 あと700mのドラマ…ファンデルプールの挑戦届かず、メルリールが逆転勝利

あと700mのドラマ…ファンデルプールの挑戦届かず、メルリールが逆転勝利

シャトールーはスプリント勝負という言葉通り、最後はゴール勝負となり、ミランが右側フェンスのギリギリで抜け出すが、ゴールライン手前でメルリールが逆転した。メルリールは2024年に欧州選手権で勝利していて、今回は欧州チャンピオンジャージを着用して出場している。2020年にプロ転向し、3年間アルペシン・フェニックス(2022年から名称がアルペシン・ドゥクーニンクに)に所属していたときはファンデルプールとチームメートだった。2023年に現チームに移籍し、総合優勝を狙うチームにいながらステージ優勝を狙っていた。

「終盤の横風で集団がエシュロン(分断)する状況になって、最後の60kmはちぎれないようにするのに忙しくて水分補給ができなかったため、少しオーバーヒートしてしまった。それ以外は緊張したけど、今日はまずまずだった」とメルリール。

ファンデルプールら2選手の逃げに手を焼いたという。一時はその差が5分半になり、ペースもかなり速かったので、スーダル・クイックステップも追撃に参加した。総合2位のエヴェネプールも加わった。前日、メルリールはパンクによってゴール勝負に加わることができず、エヴェネプールは本当にがっかりしていたというが、勝利を目指すチームの雰囲気はよくて、それがこの日の勝利につながったという。

「彼は本当に強かった。普段は僕が彼をサポートするんだけど、エシュロンではできる限りお互いを守ろうとした。今日は彼が僕を助けてくれた方が大きかったと思う。最後の2kmで牽引役のベルト・ファンレルベルへ(ベルギー)を見つけた。彼の後ろについている時は、本当に自信が持てる。彼が何をするか分かっているので、リラックスできる。少し追い込まれたが、その後は全力で走り切り、思い通りのスプリントができた。ミランに勝てたのはこれで2回目だが、彼は本当に強いスプリンター。2人で素晴らしいバトルが繰り広げられるのはうれしい」(メルリール)

対するミランは2連勝できなかったが、ポイント賞の得点を積み上げた。
「難しいスプリントとなり、2位に終わった。もちろんもっといい結果が欲しかったけど、勝つこともあるし、こういう結果になることもあるので、そこから学びたい。我々は直後からスタートから集団を引っ張っていて、前方に位置していたから多くのチームメートの体力を費やした。ファンデルプールらを逃してしまったのも想定外だった。ポイント賞でメルリールが迫ってきたので、これからも得点を積み重ねていきたい」(ミラン)

ツール・ド・フランスは大会10日目となる第2週の月曜日に1回目の休息を取るのが慣例だが、7月14日がフランス革命記念の祝日となるため、レースは10ステージ連続で続行。今大会初めての山岳ステージとして中央山塊を舞台として戦う。カテゴリー2級の山岳が7つ、3級が1つという厳しいものだ。

文:山口 和幸

山口 和幸

ツール・ド・フランス取材歴30年超のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、東京中日スポーツ、ダイヤモンド・オンライン、LINEニュース、Pressportsなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)、講談社現代新書『ツール・ド・フランス』。青山学院大学文学部フランス文学科卒。

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