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サイクル ロードレース コラム 2025年7月11日

ヒーリーが42kmを独走して初のステージ優勝!逃げに加わったファンデルプールが1秒の差でマイヨ・ジョーヌ奪還|ツール・ド・フランス2025 レースレポート:第6ステージ

サイクルロードレースレポート by 山口 和幸
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単独の逃げを成功させ見事自身初となるツールステージ優勝を成し遂げたヒーリー

単独の逃げを成功させ見事自身初となるツールステージ優勝を成し遂げたヒーリー

第112回ツール・ド・フランスは7月10日、バユー〜ヴィール=ノルマンディー間の201.5kmで第6ステージが行なわれ、EFエデュケーション・イージーポストのベン・ヒーリー(アイルランド)が残り42kmで8人の第1集団から単独で抜け出して初優勝した。アイルランド選手として大会通算15勝目。チームとして12勝目。総合成績では1分28秒遅れの総合6位マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)がヒーリーを含む8人の逃げに加わり、首位タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ・XRG)に1分29秒差をつけてゴールし、マイヨ・ジョーヌを奪還した。

ポイント賞と山岳賞のバーチャルリーダーが目まぐるしく変わる

ツール・ド・フランスに夏の日差しが戻ってきた。そうはいっても酷暑ではなく、乾いた空気を通して明るい日差しがふりそそぎ、沿道の観衆にとってもちょうどいいと感じる気候だ。第6ステージはヴィール=ノルマンディー地方が舞台。うねりのある丘陵地を貫くもので、山岳ポイントは6カ所にあって山岳賞争いも本格化する。残り6km地点から4級山岳とはいえ最大勾配11%の上りがあり、ゴール手前700mからは山岳ポイントではないものの思わぬ激坂が待ち構える。

ポガチャルがマイヨ・ジョーヌ、ミランがマイヨ・ヴェールを着用してスタート

ポガチャルがマイヨ・ジョーヌ、ミランがマイヨ・ヴェールを着用してスタート

ツール・ド・フランスの4賞ジャージのうち3枚を手中にしているポガチャルは、最も価値があり優先度が1番の個人総合成績、マイヨ・ジョーヌを着用した。ポイント賞のマイヨ・ヴェールは同2位のジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック)が繰り下がって着用。山岳賞のマイヨ・ブラン・ア・ポワ・ルージュに関しては、同賞1位のポガチャルがマイヨ・ジョーヌを着るために繰り下がり。ところが同2位のティム・ウェレンス(UAEチームエミレーツ・XRG)が優先着用の義務があるベルギーチャンピオンジャージを持っているため、同3位のヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、チーム ヴィスマ・リースアバイク)が着ることになった。

この日はスタートして22.2km地点に中間スプリントポイントがあって、ポイント賞を争うミランがトップ通過する。この時点でミランはポガチャルを逆転してポイント賞のバーチャルリーダーになる。最終的にミランは苦手なアップダウンでメイン集団から脱落するが、このとき獲得したポイントでステージ終了後にポイント賞1位が確定した。そして山岳賞争いでは2つ目の山岳ポイントでウェレンスがトップ通過。この時点でチームメートのポガチャルを上回って山岳賞のバーチャルリーダーに。ウェレンスも最終的に山岳賞1位になった。

逃げのヒーリーが42kmを独走してゴールを単独で目指す

中盤になって8人の第1集団が形成された。総合成績の上位からファンデルプール、ヒーリー、チーム ジェイコ・アルウラーのエディ・ダンバー(アイルランド)、チーム ヴィスマ・リースアバイクのサイモン・イェーツ(英国)、リドル・トレックのクイン・シモンズ(米国)、XDS・アスタナ チームのアロルド・テハダ(コロンビア)、チューダー・プロサイクリングチームのマイケル・ストーラー(オーストラリア)、モビスター チームのウィリアム・バルタ(米国)だ。125km地点でメイン集団との差は1分40秒になった。

中盤に8人の逃げ集団が形成。125km地点ではメイン集団に対して1分40秒のリード

中盤に8人の逃げ集団が形成。125km地点ではメイン集団に対して1分40秒のリード

8選手の逃げが3分になると、UAEチームエミレーツ・XRGのニルス・ポリッツ(ドイツ)がメイン集団の先頭に出て追いかけ始めた。チーム ヴィスマ・リースアバイクは第1集団にサイモン・イェーツを送り込むことができたので、追いかける必要はなく体力温存だ。そして後半に山岳ポイントが断続的に出現すると第1集団がペースアップ。この影響で2つの集団のタイム差が広がり、残り53kmで3分25秒に。さらに残り42kmでヒーリーが単独アタックして勝負に出た。

ヒーリーは逃げのスペシャリストで、2023ジロ・デ・イタリアでも50kmを逃げて勝利した実績がある。今回はその時と似た状況だ。2024年にツール・ド・フランスに初出場し、5ステージで逃げた。しかしステージ5位が最高で勝利はつかめなかった。残り27.2km地点にある5つ目の山岳ポイントでヒーリーは後続に45秒差をつけた。メイン集団はすでに6分も遅れている。

残り27.2kmの山岳ポイントでヒーリーが45秒リード、メイン集団との差は6分以上に拡大、独走が続く

残り27.2kmの山岳ポイントでヒーリーが45秒リード、メイン集団との差は6分以上に拡大、独走が続く

そしてマイヨ・ジョーヌまで入れ替わった

ヒーリーは2020年と2023年にアイルランドチャンピオンに。上り坂を得意とするワンデーレーサーで、2023アムステルゴールドレース2位、2025リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ3位の実績を残している。これまでの最大の勝利はもちろんジロ・デ・イタリアだ。

そんなヒーリーが死力を振り絞り、後続を突き放して単独でゴール。2分44秒遅れの2位に米国チャンピオンのシモンズ。ファンデルプールは最後に疲れ果て、第1集団に加わった8人のなかでは最後、3分58秒遅れでゴール。ポガチャルがいるメイン集団はそのとき大きく遅れていた。最後まで力を残していたポガチャルが最後にペースアップしたが、トップのヒーリーから5分27秒遅れ。ファンデルプールとポガチャルの差は1分29秒で、総合成績でファンデルプールがわずかに1秒上回る。この結果、ファンデルプールはたった1日でマイヨ・ジョーヌを奪い返すことになった。

「ツール・ド・フランスでステージ優勝できたなんて本当に信じられない。今年だけでなく、ずっとこの勝利のために努力してきたんだ。そして、私を支えてくれたすべての人たちにも、こうして恩返しができて本当にうれしい」とヒーリー。

「ツール・ド・フランスを見て育ち、いつか自分もそこに立てたらいいなと夢見ていた。ツール・ド・フランスに出場すること自体が偉業なのに、ステージ優勝をつかめたなんて素晴らしい。昨年の初参加は本当に衝撃的で、自分も勝てると確信した。それ以来、ずっと努力を重ね、自分のレーススタイルを磨いてきた。そして今日、その努力が実を結んだ。

今日のステージは本当に私にピッタリだった。最初からこんな日をターゲットにしていた。そして、最初のトライでステージ勝利を達成できるなんて。スタートから一気に攻めた。逃げに入るためにペダルを踏みすぎたかもしれないけど、それが僕のやり方なんだ。第1集団が形成されてからは、後続に追いつかれないために本当に苦労した。一日中ペダルを漕いでいたよ。

8人の第1集団から抜け出す必要があることは分かっていた。タイミングを見計らって、そのタイミングもよかったと思う。少しだけ彼らを驚かせることができたかな。それから、自分がなにをすべきかは知っていた。ひたすら頭を下げて、フィニッシュまでベストを尽くすだけだったね」(ヒーリー)

僅か1秒差で上回りファンデルプールがマイヨ・ジョーヌを奪還

僅か1秒差で上回りファンデルプールがマイヨ・ジョーヌを奪還

「最初から逃げ集団に加わることを目指していた。本当に厳しいステージで、スタートから超高速レースだった。8人のグループが抜け出すまでには時間がかかり、抜け出したとしても、その差を広げるためには必死に戦わなければならなかった。今日はコンディションとしてベストな1日ではなくて、最終的には自分自身との戦いになった」とマイヨ・ジョーヌのファンデルプールは疲れ果てた表情で語った。

7月11日の第7ステージはサンマロ〜ミュール=ド=ブルターニュ・ゲルレダン間の197kmで行われる。ミュール=ド=ブルターニュは「ブルターニュの壁」という意味で、このあたりで有名な激坂。今回は残り15.3kmでいったん上り、周回コースを走って2度目の登坂でゴールする。勾配値は一部15%。ポガチャルが得意とする舞台だが、一方で2021年、ミュール=ド=ブルターニュにゴールする第2ステージで初勝利し、初めてマイヨ・ジョーヌを獲得したのがファンデルプールだ。

「私にとって特別な場所、ミュール=ド=ブルターニュにマイヨ・ジョーヌで行けるのはうれしい。でも、タデイ(ポガチャル)の走りを見ると、もし明日彼がアタックしたら、あるいはヨナス(ヴィンゲゴー)がアタックしたら、あの上りで私だけでなく集団は着いていくのは難しくなる。今日はこれからできる限り回復できるよう全力を尽くしたい。明日の結果次第だけど、まずはマイヨ・ジョーヌを楽しんでいきたい。おそらく1日だけだと思うけど」(ファンデルプール)

文:山口 和幸

山口 和幸

ツール・ド・フランス取材歴30年超のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、東京中日スポーツ、ダイヤモンド・オンライン、LINEニュース、Pressportsなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)、講談社現代新書『ツール・ド・フランス』。青山学院大学文学部フランス文学科卒。

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