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サイクル ロードレース コラム 2025年7月9日

プロ通算100勝目をツールで飾ったポガチャル!マイヨ・ジョーヌはファンデルプールが死守|ツール・ド・フランス2025 レースレポート:第4ステージ

サイクルロードレースレポート by 山口 和幸
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ファンデルプールにリベンジを果たし、プロ通算100勝目をあげたポガチャル

ファンデルプールにリベンジを果たし、プロ通算100勝目をあげたポガチャル

第112回ツール・ド・フランスは7月8日、アミアンメトロポール〜ルーアン間の174.2kmで第4ステージが行なわれ、UAEチームエミレーツ・XRGタデイ・ポガチャル(スロベニア)が第2ステージで負けたアルペシン・ドゥクーニンクマチュー・ファンデルプール(オランダ)に勝利。ボーナスタイムにより、総合時間でポガチャルとファンデルプールが並んだが、これまでの4つのステージの着順合計により、ファンデルプールがマイヨ・ジョーヌを死守した。

ステージ優勝を目指して4人の個性派アタッカーが先行

いよいよノール・ド・フランス(北フランス)を離れ、フランスを左回りに1周する旅が始まった。8日の第4ステージはアミアンメトロポールで、開幕地のオー・ド・フランス地域圏に別れを告げた。目指すのはノルマンディー地方のルーアンだ。終盤に波状的に5つの上り坂が出現するコースで、思わぬタイム差が生じる可能性もある。この日は最高気温が20度に満たないものの快晴に恵まれて181選手がスタートした。

アミアン郊外に設定された0km地点を通過するとバーレーン・ヴィクトリアスレニー・マルティネス(フランス)がアタック。ウノエックス・モビリティのヨナス・アブラハムセン(ノルウェー)がこれに反応。トタルエネルジーのトマ・ガシニャール(フランス)もあとからこれに加わり、さらにメイン集団からEFエデュケーション・イージーポストのカスパー・アスグリーン(デンマーク)が単独で抜け出して追いつき、19.5km地点で4人の先頭集団が形成された。

19.5km地点でマルティネス、アブラハムセン、ガシニャール、アスグリーンの4人による逃げ集団が形成

19.5km地点でマルティネス、アブラハムセン、ガシニャール、アスグリーンの4人による逃げ集団が形成

マルティネスはマウンテンバイクの元世界チャンピオンを父に持つフランス期待の選手。初日から疾病を患ってしまい、単独で脱落するなど我慢のレースを続けていた。アブラハムセンは常にアタックを繰り出す選手で、2024年のツール・ド・フランスでは第2ステージから第4ステージまでポイント賞、初日から第10ステージまで山岳賞のトップを守った。アスグリーンは長距離アタッカーとして果敢な走りが信条。ガシニャールは元ラグビー選手だ。

4選手とメイン集団のタイム差が2分を超えると、アルペシン・ドゥクーニンクの牽引役シルヴァン・ディリエ(スイス)がメイン集団の先頭に立って巡航を始めた。4選手の中でも最も総合成績がいいのは3分32秒遅れの52位につけるアスグリーン。アルペシン・ドゥクーニンクとしてはそれを超えないタイム差で追いかけていけばいい。ディリエの堅実な働きがあって、タイム差は2分をわずかに上回る程度に落ち着いて中盤を迎える。

最後はポガチャル、ファンデルプールの実力者勝負

先頭の4選手は残り55kmで1分20秒までタイム差を縮められ、ここから一転してアタック合戦が始まった。残り46km地点の4級山岳の上りでアブラハムセンが仕掛けるとアスグリーンがこれを追い抜いてトップ通過。中間スプリントポイントで再びアブラハムセンがアタックし、ガシニャールがたまらず脱落。ここで満を持していたのがマルティネスだ。アスグリーンとアブラハムセンがメイン集団に吸収されても単独になってゴールを目指した。

他3人が集団に吸収された後も単独で逃げ続けたマルティネス

他3人が集団に吸収された後も単独で逃げ続けたマルティネス

マルティネスは残り23kmでメイン集団との差が10秒に。そして残り21kmでメイン集団に追いつかれると、勝負は新たなフェーズへ。フィニッシュまではまだ3つの峠がある。ここで先頭に出たのが前日に山岳賞ジャージを獲得したUAEチームエミレーツ・XRGのティム・ウェレンス(ベルギー)だ。ウェレンスは残り12.1km地点にある4級山岳をトップ通過してさらに山岳ポイントを積み重ねる。

しかしチーム ヴィスマ・リースアバイクも負けていない。隊列を組んで集団をペースメークし、エースのヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク)が有利な位置で勝負できるように誘導する。ウェレンスは体力を使い果たして脱落し、エースのポガチャルと離れてしまった。こうして有力選手が含まれるメイン集団はルーアンの中心地に突入した。

ところが最後の坂で先頭に立ったのはポガチャルを擁するUAEチームエミレーツ・XRG勢だ。ジョアン・アルメイダ(ポルトガル)の活躍で猛烈なペースを刻む。頂上の300m手前からポガチャルがアタックし、ヴィンゲゴーが追従。マイヨ・ジョーヌのファンデルプールがこれについていけない。頂上を越えたポガチャルとヴィンゲゴーは先頭交代しながらフィニッシュを目指す。しかしファンデルプールを含む他の有力選手も必死の走りで2選手を吸収。最後は8選手の争いとなり、アルメイダのアシストを受けたポガチャルがファンデルプールをわずかに制してステージ優勝した。3位はヴィンゲゴーだ。

猛アタックを仕掛けたポガチャル、それに必死に食らいつくヴィンゲゴー

猛アタックを仕掛けたポガチャル、それに必死に食らいつくヴィンゲゴー

3選手は同タイムでゴールしたが、ポガチャルがボーナスタイム10秒、ファンデルプールが6秒、ヴィンゲゴーが4秒を獲得。総合成績でファンデルプールとポガチャルがタイム差なしで並んだ。タイムが同じ場合、通常は切り捨てられるタイムトライアルの1/100秒単位の記録を加えて比較し、タイムの少ない選手が総合上位に立つというルールがあるが、今大会はまだタイムトライアルが行なわれていない。そのためここまでの全ステージの順位を合計し、累計の少ない選手が上位に立つというルールが適用された。この結果ファンデルプールが合計54、ポガチャルが92となり、ファンデルプールが総合1位を守ったのである。

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マイヨ・ジョーヌはタイム差なしでファンデルプールが死守

2日目にファンデルプールに敗れたポガチャルは、第4ステージで見事にリベンジを果たした。プロ通算100勝目、ツール・ド・フランス通算18勝目。現ロード世界チャンピオンがツール・ド・フランスでステージ勝利したのは、2021年のジュリアン・アラフィリップ(フランス)以来の記録となった。

「今日よりいいフィニッシュは夢でもかなわない。ロードレース界で世界トップクラスの選手の一人を、フィニッシュで破り、ツール・ド・フランスで世界チャンピオンのアルカンシエル(ジャージ)を着ながら100勝目を達成できたことは、信じられないほど素晴らしい」と快挙を達成したポガチャル。

「上りは全力で走るつもりでした。どれくらいの距離があるのか正確には分からなかったので、頂上付近でもう少しペースを上げられたかもしれないけど、ヨナス(ヴィンゲゴー)も着いてくると思っていた。ある意味、完璧だった。全員の脚が疲れていて、次のアタックも思ったほど力強くなかったからね。

アルメイダの走りに助けられた。素晴らしい仕事をして僕をリードしてくれた。チームには本当に満足しているし、誇りに思う。こんなに素晴らしいライダーたちがお膳立てしてくれて最後の勝負となるから、常に緊張感がある。なにが起こるか全く予測できないけどアドレナリンが湧き上がる。美しいレースで、本当に楽しかった。

明日こそが本当の試練だ。脚力の強さが問われる。F1じゃなくて自転車競技だ。プッシュするには脚力が必要だ」(ポガチャル)

ポガチャルと同タイムとなったが、着順合計でファンデルプールがマイヨ・ジョーヌをキープ

ポガチャルと同タイムとなったが、着順合計でファンデルプールがマイヨ・ジョーヌをキープ

対するファンデルプールは首位を守ったものの敗北感が漂う。
「マイヨ・ジョーヌで勝ちたいと思っていたが、ポガチャルは強すぎた。最後の上りで彼は攻撃して、もう限界だった。なんとか追いついたけど疲れ果てていた。スプリントを試してみたが、ポガチャルには対抗できなかった。

金曜日のミュール・ド・ブルターニュで再び勝利を目指すつもりだが、ポガチャルの勢いを見ると、勝つのは非常に難しい。マイヨ・ジョーヌを守れてうれしいけど、現実的に考えれば明日のタイムトライアルで失う可能性は高い。それでも、2021年のようにマイヨ・ジョーヌを着てタイムトライアルを走れるのはうれしい」(ファンデルプール)

第5ステージは33km個人タイムトライアル。マイヨ・ジョーヌを狙う選手が絞り込まれてくるはずだ。

文:山口 和幸

山口 和幸

ツール・ド・フランス取材歴30年超のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、東京中日スポーツ、ダイヤモンド・オンライン、LINEニュース、Pressportsなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)、講談社現代新書『ツール・ド・フランス』。青山学院大学文学部フランス文学科卒。

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