人気ランキング

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

コラム一覧

サイクル ロードレース コラム 2025年7月7日

マチュー・ファンデルプールが上りスプリントを制してマイヨ・ジョーヌ! ポガチャルとヴィンゲゴーもボーナスタイムをゲット|ツール・ド・フランス2025 レースレポート:第2ステージ

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
  • Line
激闘の第2ステージ、なだれ込むような上りスプリントは、ファンデルプールが勝利

激闘の第2ステージ、なだれ込むような上りスプリントは、ファンデルプールが勝利

大方の予想通り、ツール・ド・フランス2025第2ステージは大きな動きのある1日となった。終盤にかけて待ち受けたアルデンヌクラシック級の登坂が勝負できる選手たちを選別し、最前線に生き残ったのは26人。なだれ込むような上りスプリントは、マチュー・ファンデルプールアルペシン・ドゥクーニンク)が勝利。前日にチームメートのヤスペル・フィリプセンがつかんだマイヨ・ジョーヌをチーム内でバトンタッチした。

「僕だけじゃなく、チームとして夢のような日々を送ることができているんだ。ここまでの出来事はすべてボーナスだよ。個人的にもステージ優勝という目標が達成できて本当にうれしい!」(ファンデルプール)

コフィディスにバイク盗難被害

第2ステージは、夜半からの不穏な動静で不必要に慌ただしくなった。

前夜から明け方にかけて、コフィディスのチームトラックが襲撃された。11台のバイクが盗まれ、その被害総額は14万5000ユーロ(約2500万円)にも上るという。レースで実際に使用するメインバイクを失った選手が多く、スペアバイクまたは急遽新調したもので走ることを余儀なくされた。

大雨の影響で混乱が生じ、ロヴァン=プランクでのスタートは15分遅れることとなった

大雨の影響で混乱が生じ、ロヴァン=プランクでのスタートは15分遅れることとなった

また、この日の北フランスは朝から大雨。この影響で、初めてスタート地を務める小さな村ロヴァン=プランクへの導線が大混乱。スタート時刻の30分前になっても大多数のチームが会場入りできず、関係者駐車場では幾台もの車両が泥にハマりスタック。主催者は出発を15分遅らせる判断をして、スタート前のピンチをしのいだ。

アクシデントこそあれど、ツールは進む。レース距離は今大会最長の209.1km。雨は止まず、視界が不良な状況で9.5kmのパレード走行を行ってリアルスタートが切られた。開幕前の熱波はどこへやら。そんな不況を切り裂くように、4人が飛び出して第2ステージの火ぶたが切られた。

レースが進むにつれ天候が回復

メイン集団は、マイヨ・ジョーヌで出走するフィリプセンを擁するアルペシン・ドゥクーニンクと、ビニヤム・ギルマイで上位進出を狙うアンテルマルシェ・ワンティが早々にコントロールを担った。先頭4人とのタイム差は3分までは容認。やがて天気が回復し、大多数の選手がスタートから着用していたレインジャケットを脱した。それがきっかけとなったか、集団のペースが軌道に乗り、前を行く選手たちとのタイム差が徐々に縮まっていった。

天候が回復し、集団の速度が上がり先頭との差が縮まる

天候が回復し、集団の速度が上がり先頭との差が縮まる

先頭では、エフゲニー・フェドロフ(XDS・アスタナ チーム)とアンドレアス・レックネスン(ウノエックス・モビリティ)が落車に見舞われたが、慌てることなく先頭に復帰。コースなかばに設けられていたこの日最初の4級山岳では、レックネスンが1位通過している。

フィニッシュまで90kmを切ったあたりから、メイン集団ではチーム単位で隊列が組まれ、前方に集まり始めた。おのずとペースは上がって、先頭グループを捉えるのは時間の問題だ。逃げる4人は154.6km地点に設定された中間スプリントポイントまでは粘って、フェドロフが1位通過。15秒ほどの差で集団も続いて、ここはティム・メルリールスーダル・クイックステップ)が全体の5番手で通過。その脇ではギルマイとジョナタン・ミランリドル・トレック)が言い争い、ブライアン・コカール(コフィディス)はポール・ペンウェット(グルパマ・エフデジ、フランス)に何やら強く言っている。ただ、彼らのスプリント時の動きが通過順位に直接影響したようには見られなかった。

終盤の丘越えで集団の人数が絞り込まれる

中間スプリントポイントを通過した直後に、メイン集団は前の4人をキャッチ。ここからしばらくは一団のまま進行していくこととなる。残り33kmで頂上となる3級山岳コート・デュ・オー・ピショに向かって、再び各チームが隊列を編成すると、ワウト・ファンアールトチーム ヴィスマ・リースアバイク)がヨナス・ヴィンゲゴーを引き上げながら先頭へ。呼応するようにUAEチームエミレーツ・XRGも主導権争いに加わり、一時的に集団が割れた。

その後の下りで後続の大多数が集団へと復帰し、再びチーム単位でのポジション取り。残り10kmを切り、平均勾配が10%超の3級山岳コート・ド・サンテティエンヌ・オ・モンでもヴィスマ勢が牽引し、今度こそ完全に集団が割れた。マッテオ・ジョーゲンソン(チーム ヴィスマ・リースアバイク)の牽きで、残ったのはマチューやヴィンゲゴー、タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ・XRG)ら6人だけ。このメンツだとさすがに牽制が入ってしまう。その間に後ろから選手たちが続々と合流。残り7kmを切ったところで最前線に残った26人が、そのまま最終局面へと向かっていくこととなった。

残り5kmでヴィンゲゴーが一瞬踏み込んだが、さすがにマークが厳しい。代わってケヴィン・ヴォークラン(アルケア・B&Bホテルズ)が再三再四仕掛けてみせた。なかなか決定打までは至らないが、アタックのたびにマチューやジョーゲンソンがチェックを急いだほどにその脚は強力だった。

「本当はアタックを決めて逃げ切りたかった。僕からすると、誰からの協力も得られなかった感じだよ。決めきれなかったのは本当に悔しい。勝てばマイヨ・ジョーヌだと思いながら走っていたのだけどね…」(ヴォークラン)

気鋭のオールラウンダー、フロリアン・リポヴィッツ(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ、ドイツ)が先行する場面もあったが、残り1kmを切ったところで集団がキャッチ。ブーローニュ=シュル=メールの丘に敷かれるフィニッシュラインに向かって、勝負は上りスプリントにゆだねられた。

自転車好きコミュニティサイト(無料)のお知らせ

フィニッシュ前のレイアウトを予習していたマチュー

残り600mでジュリアン・アラフィリップ(チューダー・プロサイクリングチーム)が前に出て、その脇からはヴォークランも腰を上げる。ただ、この状況においても慌てず、そして先頭を譲らなかったのがマチューだった。

残り200mで一気加速、ポガチャル&ヴィンゲゴーを振り切ったファンデルプールの圧巻フィニッシュ

残り200mで一気加速、ポガチャル&ヴィンゲゴーを振り切ったファンデルプールの圧巻フィニッシュ

先頭で牽き続けると、残り200mバナーを合図に一気の加速。付き位置にはポガチャルとヴィンゲゴーがいたが、彼らの追随は一切許さなかった。あとは一番にフィニッシュラインを通過するだけ。そして、勝利を決めると右こぶしを力いっぱいに振り下ろした。

「チームからは最後の500mまで辛抱するように言われていたんだ。フィニッシュのレイアウトを撮影してもらっていたので、しっかりと予習ができていた。イメージトレーニングはバッチリだったよ。だけど、2位(ポガチャル)と3位(ヴィンゲゴー)が誰だったかを思えば、今日のステージがいかに難しかったかが分かるよね。正直、僕もびっくりしているんだ」(ファンデルプール)

幾多のタイトルを手にし、クラシックレーサーとしては現在のプロトン最強で間違いないマチューだが、意外にもツールは2勝目。思えば、初勝利は2021年大会の第2ステージ、ミュール・ド・ブルターニュでの衝撃的な独走劇だった。そして、そのとき以来となるマイヨ・ジョーヌ。4年前は6日間イエローをまとった。今回は果たして。

「そうだね、タイムトライアルステージ(第5ステージ)まで着られたら良いかな。僕としてはジャージを守ることがこの大会の目的ではないから、どんな結果になっても受け入れるつもりだよ。もう、今年のツールは大成功なんだ」(ファンデルプール)

早くもポガチャルとヴィンゲゴーのハイクオリティが際立つ

前日は33人、この日は26人。開幕から2日連続で集団の人数が絞られ、今大会の活躍が期待される選手間で思わぬ総合タイム差が発生している。また、上位戦線の顔触れのシャッフルも起こっている。

第3ステージはマイヨ・アポワ着用するポガチャル

そうした中で、“王者”であるポガチャルとヴィンゲゴーは確実に、堅実にポジションを上げている。このステージでは上位フィニッシュによるボーナスタイムも獲った。個人総合2位と3位につけ、総合タイムでは2秒差。まだ先は長いが、この差は今後どう変化していくのだろうか。

「ヨナスがアクションを起こすのは予想通りだよ。きっちり対処できてホッとしているよ」(ポガチャル)

ポガチャルはレースの流れの中で山岳ポイントを3点獲得。第3ステージではマイヨ・アポワを着て走る。

文:福光 俊介

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

  • Line

あわせて読みたい

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

ジャンル一覧

J SPORTSで
サイクル ロードレースを応援しよう!

サイクル ロードレースの放送・配信ページへ