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サイクル ロードレース コラム 2025年7月2日

【ツール開幕直前!タデイ・ポガチャル徹底分析vol.5】クラシックレースでも無双状態! これまでの選手と何が違うのか

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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ポガチャルは圧倒的な強さを見せ、サイクル界を席巻

vol.4はこちらから

ツール・ド・フランス4度目の頂点を目指すタデイ・ポガチャルUAEチームエミレーツ・XRG)の強さと人柄に迫るコラムの5回目。現代の自転車ロードレースシーンにあって、最高にして最強の男の歩みを振り返っていく。今回は、ツール・ド・フランスにとどまらないポガチャルの強さの本質について。過去のスターと比較して何が違うのか、そして実際の評価についても触れてみる。

どんなレースだって、走る以上は勝ちたい

2025年6月時点で、ツール・ド・フランス3回、ジロ・デ・イタリア1回の個人総合優勝を経験。その強さはグランツールにとどまらず、ワンデーレースにも及んでいる。イル・ロンバルディアは2021年から4連覇中。リエージュ~バストーニュ~リエージュとストラーデ・ビアンケはそれぞれ3回制覇。そして近年は、北のクラシックにも進出。ロンド・ファン・フラーンデレンは2回勝ち、今年初めて挑んだパリ~ルーベは2位。もはや、ルーベ制覇も時間の問題となりつつある。

ここまでの強さを誇る選手は、今後現れないかもしれない。少なくとも、現在のプロトンにおいてはポガチャルを凌駕する選手は存在しない。ステージレースも、ワンデーレースも、山岳も、石畳も、どんな局面でもトップに立ってみせる。現在着用するマイヨ・アルカンシエルも、この先何年と着続けることだって大いにあり得る。

ポガチャルがレースにエントリーした時点で、他の選手は優勝をあきらめてしまう。はじめから2位狙いでスタートラインにつく者や、表彰台の2番目に高いところへ上がり「これは勝利に匹敵する」などと口にする者も。

「どんなレースだって、走る以上は勝ちたい」。ポガチャルの信条であり、堂々と公言もする。グランツールになるとそのスタンスはより顕著になり、リーダージャージを着ていようとステージを獲りにいく姿勢は崩さない。山岳での圧倒的なアタックはもとより、ときに平坦でのスプリントに講じることだってある。

出場する全てのレースでその実力を遺憾なく発揮

マイヨ・ジョーヌ復権を果たした2024年大会を終えたとき、あまりの強さとレーススタイルに、ヨーロッパのメディアは「カニバル2」と表現した。“カニバル”といえば、エディ・メルクスの異名。メルクスも走るレースすべてで勝利を目指し、攻撃的に戦い続けた。ポガチャルも同類というわけか。確かに、勝利に対する執着は両者同等…いや、カニバル2の方が上回っているかもしれない。

能力の高さとメンタルの強さは遺伝的資質

もちろん、ポガチャルの強さには根拠がある。とりわけ持って生まれた資質については、早くから彼を知る関係者にして「磨けば磨くほど輝く宝石だ」とも。

具体的には、筋肉レベルとミトコンドリアレベルの回復力が並外れているのだという。特に細胞内のミトコンドリア量と活性度が高く、血流の良さが顕著だとか。それにより疲労回復が早く、激闘を演じた翌日にはもうベストコンディションに近い体調で走れるまでに戻っている。思えば、2023年のツール第17ステージで衝撃的な大ブレーキに陥りながら、3日後にはステージ優勝を挙げた。あれは意地だけでなく、フィジカル面でつかんだ勝利だったのかもしれない。

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また、母・マルジェタは「タデイの身体能力の高さは遺伝的要素が関係している」との見解を示している。自身の父母、つまりはポガチャルの母方の祖父はサッカー、祖母は器械体操で鳴らしたスポーツ選手だったことを明かしている。加えて、「一家総出で畑仕事を行っていた」ことが、努力の重要性や忍耐力を養うあたりで役立ったのではないか…とも。

それらの優れた才能に、首脳陣が止めないとどこまでも走り続けるほどのトレーニング量が上乗せされ、タデイ・ポガチャルというサイクルロードレーサーが形づくられている。

メルクス、イノーを本当に超えるまで

“カニバル2”と称されたように、メルクスとの比較は今後もついて回ることだろう。メルクス本人は「私の戦い方よりはるかに優れている」ことは認めながらも、「すべてにおいて私を上回ったとは考えていない」とまだまだ手厳しい。ツールで通算5度の個人総合優勝を果たしているベルナール・イノーも「彼は私とメルクスのような存在だ」とし、自身を超えたとはまだ認めていない。

ポガチャルは歴代のレジェンド超えを目指す

彼らがどこか負けず嫌いなところを見せているのがユーモラスではあるが、現代のサイクルロードレースを観る者にとってのインパクトは、ポガチャルがはるかに上を行っている。ただ、真に彼らを超えるとするなら、それはもう、勝利記録でもって示すしかないのかもしれない。

文:福光 俊介

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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