人気ランキング
コラム一覧
自転車界屈指のマルチタレント。本来の姿を取り戻したワウト・ファンアールト|ジロ・デ・イタリア2025
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介徐々に本来の姿を取り戻しつつあるワウト・ファンアールト
「このジロには満足しているよ」。そう語るのはサイクルロードレース界のトップスターのひとり、ワウト・ファンアールト(チーム ヴィスマ・リースアバイク)。初のジロ・デ・イタリア出場でステージ1勝を挙げたほか、スプリント時の発射台、前待ち、山岳アシストと、チームプレーヤーとしてマルチに活躍。エースのサイモン・イェーツが総合表彰台に近づいているが、ワウトの貢献なくしてはこの結果は得られなかったかもしれない。
あわせて読みたい
第9ステージでシーズン初勝利
今季のワウトは2月半ばにレース活動を開始。そこには、北のクラシックとジロをシーズン前半のターゲットに据える意図があった。
しかし、北のクラシックではタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ・XRG)やマチュー・ファンデルプール(アルペシン・ドゥクーニンク)、マッズ・ピーダスン(リドル・トレック)らの勢いに圧され、無冠に終わる。4月2日のドワーズ・ドール・フラーンデレンにいたっては、最終局面に残った4人中3人がヴィスマ勢だったにもかかわらず、戦術ミスで敗れる大失態。自国ベルギーの関係者やファンの批判を真正面から受けた。
そんなこともあって、波に乗り切れないままジロを迎えていた。「大会序盤のアルバニアステージでマリア・ローザを着たい」と意気込んではいたものの、第1ステージで2位、第2ステージの個人TTでは11位に終わり、バラ色は夢に消えた。オラフ・コーイの発射台に回った第4ステージでも、あと一歩のところで勝利に導けなかった。
待望のシーズン初勝利をキッカケに完全復活なるか
しかし、力づくでも状況を打開するのがワウトである。大会全体のハイライトにもなるであろう第9ステージ。トスカーナの未舗装路が採用され、荒れに荒れた1日をモノにした。ライバルたちの混乱をよそに、悪路を突き進んだワウト。3月に開催されるストラーデ・ビアンケがそのままジロへやってきたかのような難儀なステージで、シーズン初勝利。この日を境に、完全に流れを引き寄せた。
引き寄せた流れをチームに還元
こうなれば、ワウトのターンである。第12ステージでは、ついにコーイとのホットラインが完成。エーススプリンターをステージ優勝へと押し上げる。続く第13ステージで自身が2位とまとめて以降は、山岳アシストへシフトチェンジ。第3週初日・第16ステージでは前待ちを講じて、レース終盤はメイン集団の牽引役も務めた。
今大会最難関の第19ステージでは自身の前線合流はならず、チームメートにその役割を託した。この日はサイモンがライバルのイサーク・デルトロ(UAEチームエミレーツ・XRG)らのアタックに対応できず、個人総合3位をキープするのが精いっぱい。サイモンがレース後に「チームメートが集団を牽く必要はなかった」とアシスト陣との連携ミスを指摘すると、ワウトも「プランに引っ張られすぎた。レースの流れに沿って、もっと本能的に走っても良かったと思う」とエースに寄り添った。
ときにエースとなり、ときにアシストとしての重責を担う。そんなワウトだから、グランツールの最前線で戦うエースの気持ちが理解できる。走りだけでなく気持ちの面でも、チームプレーヤーとしての働きをまっとうしているのである。
残されたミッションは2つ
ステージを問わずフル回転するワウトの姿で思い出されるのは、2022年と2023年のツール・ド・フランス。ヨナス・ヴィンゲゴーの総合2連覇に大きく貢献したマルチぶりは、シクロクロッサーとして世界を席巻し、鳴り物入りでロードシーンに飛び込んだ彼のイメージを新たにし、同時に完全に決定づけた。
表彰台を目指すチームにとって彼の献身的な走りは必要不可欠
あのときは「脚質:ワウト・ファンアールト」なんてフレーズで盛り上がったけれど、このジロでもまた、彼らしさが見られている。ここしばらくは落車負傷で戦列を離れたり、大事なレースで勝ち切れない…なんてシーンが多く見られたが、いよいよワウトの真の姿が戻ってきた印象だ。
今大会で残るミッションは、ふたつ。サイモンの総合表彰台確定と、最終・第21ステージのローマでコーイをスプリント勝利へガイドすること。これらの完遂でもって、ワウト完全復活のインパクトとしたい。
文:福光 俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
あわせて読みたい
-
サイクル ロードレース コラム
-
サイクル ロードレース コラム
五輪採用へ重要なシーズンに? 激戦必至のワールドカップが開幕|シクロクロス2025/26 WC第1戦・第2戦:プレビュー
-
サイクル ロードレース コラム
-
-
-
J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題
ジャンル一覧
人気ランキング(オンデマンド番組)
-
Cycle* UCIシクロクロス ワールドカップ 2025/26 第1戦 ターボル(チェコ)
11月23日 午後10:10〜
-
Cycle* UCIシクロクロス ワールドカップ 2025/26 第2戦 フラマンヴィル(フランス)
11月30日 午後11:00〜
-
Cycle* J:COM presents 2025 ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム
11月9日 午後2:30〜
-
【2025シーズン一挙配信!】史上初のアフリカ開催!Cycle*2025 UCI世界選手権大会 男子エリート ロードレース
9月28日 午後4:40〜
-
10月11日 午後9:00〜
-
【2025シーズン一挙配信!】Cycle*2025 パリ~ルーベ
4月13日 午後6:05〜
-
【2025シーズン一挙配信!】Cycle*2025 ツアー・ダウンアンダー 第1ステージ
1月21日 午後12:30〜
-
Cycle*2025 宇都宮ジャパンカップ サイクルロードレース
10月19日 午前8:55〜
J SPORTSで
サイクル ロードレースを応援しよう!
