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サイクル ロードレース コラム 2025年5月31日

プロドムが最難関のステージで初優勝!デルトロがカラパスを逃さず総合優勝に前進|ジロ・デ・イタリア2025 レースレポート:第19ステージ

サイクルロードレースレポート by 山口 和幸
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初優勝手にして歓喜の表情を浮かべる二コラ・プロドム

第108回ジロ・デ・イタリアは2025年5月30日、ビエッラ〜シャンポルク間の166kmで第19ステージが行われ、デカトロン・AG2Rラモンディアルのニコラ・プロドム(フランス)が初優勝。総合成績では首位のマリア・ローザを着るイサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツ・XRG)がEFエデュケーション・イージーポストリチャル・カラパス(エクアドル)の連続アタックを封じ込めて区間2位でフィニッシュ。ボーナスタイムを獲得し、ライバルとの差をさらに開いて初の総合優勝に近づいた。

5つの山岳が待ち受ける今大会の最難関コース

ステージ優勝と総合優勝を目指す2つの争いが同時進行

2025ジロ・デ・イタリアもいよいよ最終決戦の2日間へ。第19ステージは距離こそ短めだが、5つの山岳が待ち受けている今大会の最難関。獲得標高は今大会最大の4950mというから壮絶だ。スタート地ビエッラからわずか3.7kmでカテゴリー3級山岳クローチェ・セッラ(登坂距離11.2km・平均勾配4.6%)の上りが始まる。続いて67km地点を頂上とするコル・ツェコーレはカテゴリー1級山岳(16km、7.7%)。さらに129.3km地点にカテゴリー1級コル・サン・パンタレオン(16.5km、7.2%、最大12%)、145.4km地点に1級コル・ド・ジュー(15.1km、6.9%、12%)。そして残り5km地点に2級山岳のアンタニョー(9.5km、4.5%、11%)。

気温26度という夏を思わせる陽気の中を、ここまで走り続けてきた161選手がスタート。序盤からステージ勝利を狙った伏兵たちが抜け出しを図った。5km地点でレッドブル・ボーラ・ハンスグローエのヤン・トラトニク(スロベニア)、EFエデュケーション・イージーポストのゲオルグ・シュタインハウザー(ドイツ)、そしてこの大会でいい走りを見せているプロドムがアタック。スーダル・クイックステップのマティア・カッタネオ(イタリア)とチーム ヴィスマ・リースアバイクのバルト・レメン(オランダ)もこれを追いかけた。

沿道の大声援を間近で受ける選手集団

さらにレッドブル・ボーラ・ハンスグローエのジャンニ・モスコン(イタリア)、バーレーン・ヴィクトリアスアントニオ・ティベーリ(イタリア)とペリョ・ビルバオ(スペイン)、チーム ピクニック・ポストNLロマン・バルデ(フランス)、チーム ヴィスマ・リースアバイクのワウト・ファンアールト(ベルギー)らがこれに加わり、50km地点で33選手の第一集団が形成されることになった。総合優勝を争うチームに所属するシュタインハウザーやファンアールトは、終盤にチームエースが合流してきたときのアシスト役として先行集団に送り込まれた駒だ。

67km地点のコル・ツェコーレでこの第一集団とメイングループの差は2分52秒。その差はさらに3分32秒まで開くが、カテゴリー1級のコル・サン・パンタレオンの上りで逃げ集団がペースアップすると次第に脱落する選手が出始めた。これを追うメイン集団はUAEチームエミレーツ・XRG、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ、チューダー・プロサイクリングチームが先頭に立って追い上げていく。コル・サン・パンタレオン頂上ではプロドムが先頭で通過した。35日前のツール・ド・アルプス第5ステージに続き、プロとして2勝目を目指して積極的に走った。

コル・ド・ジューへの上りが始まると実力者のティベーリとビルバオがアタック。これを追いかけたのがプロドムだ。山岳に強いプロドムは2人を追い抜いて単独になって上る。マリア・ローザの集団はこの時点で1分08秒差まで追い上げてきていて、そして頂上1km手前で総合成績の逆転を狙ってカラパスがアタックするなどで本格的に動き始めた。総合3位のサイモン・イェーツ(イギリス、チーム ヴィスマ・リースアバイク)がこれに反応し、マリア・ローザのデルトロも付いていく。頂上はプロドムが単独トップで通過し、デルトロのアシスト役であるラファウ・マイカ(ポーランド)、ジュリオ・ペリツァーリ(イタリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)、カラパス、サイモン・イェーツ、デルトロら有力選手がこれに続いた。

「今日は勝利を目指して戦うことにした」二コラ・プロドム

リスクを追わなければ勝利はつかめない(プロドム)

スタート直後にトラトニクらのアタックを追った時は、あまり調子がいいとは思えなかったというプロドム。最初の上りですでに脚が硬直していた。それでも1kmごとにペダリングの調子がよくなってきたのが幸いだった。初優勝を目指して走ったが、後続集団との差はそれほど大きくないことを知ると、145.4km地点のコル・ド・ジューでリスクを負わなければなにも進まないと悟ったという。

今大会では第8ステージと第15ステージでいい走りを見せながら結果としては5位だった。その2ステージではステージ優勝を目指した伏兵が最後に飲み込まれて負けるのを見た。この日も逃げている自分とメイン集団の差はそれほど大きくなく、フィニッシュが近くなれば総合優勝候補が何人かアタックしてくるのは確実だ。ステージ優勝するためには早めに仕掛けること。それはリスクだったが、コル・ド・ジューでアタックしなければ栄冠はつかめない。

「2回のステージ5位はリスクを負わなかったからだ。だから今日は勝利を目指して戦うことにした」。プロドムは単独で最後まで逃げる覚悟を決めていた。

デルトロが下り坂でとても強いので、最後に追い抜かれるのではないかとプロドムは心配していた。最後の1kmになるまで勝てると確信できなかった。振り返るとチームカーが後ろに見えたので、追いかけていると聞いていたカラパスとの差は1分あることをここで確認した。結局スタート直後から先頭に出て、最後の28kmは独走を成功させてトップフィニッシュ。

フランス選手がジロ・デ・イタリアでステージ優勝したのは79回目。2024年の第12ステージでジュリアン・アラフィリップが制して以来で、2019年以降、フランス選手は少なくとも1回のステージ優勝を果たしている。チームとしても過去7回のジロ・デ・イタリアで6勝目。総合優勝には関わっていけないが、チームとしては1つの目標を達成した。

「このジロ・デ・イタリアのために、たくさん練習してきた。総合優勝を狙うのではなく、ステージ優勝を目指していた。この勝利を長い間待ち望んでいた。3週間前に初めてレースで優勝したばかりだけど、ジロ・デ・イタリアでワールドツアーの勝利を獲得できたことは、本当にうれしい。素晴らしい1日だった」

28歳のプロドム。学業と自転車競技の両立が難しく、プロになったのはかなり遅かった。3つの異なるチームで練習生として経験を積んだ。その成績はこれまで毎年ステップアップしている。

「ここ数週間、ツール・ド・アルプスでの勝利で、私のキャリアは大きく変わった。その勝利は大きな自信になったけどグランツールのステージ優勝は私にとって大きな喜びだ」

リチャル・カラパスのアタックを封じ込めたイサーク・デルトロ

大激戦のマリア・ローザ争いは最終山岳ステージへ

プロドムのフィニッシュから58秒後に、総合成績の上位選手らがやってきた。区間2位デルトロと一緒にゴールできたのはカラパスだけだ。デルトロは6秒、カラパスは4秒のボーナスタイムを獲得し、総合1位と2位の差は前日の41秒から43秒になった。1分未満でのマリア・ローザ争いはこの10年間で4度目だ。

「向かい風、追い風もあって難しいステージだった。ここ数週間で脚にダメージが残っているけれど、この日もいいパフォーマンスを発揮できたことが信じられない。チームメートがサポートしてくれたからだと思う」と首位を守ったデルトロ。

第16ステージではチーム ヴィスマ・リースアバイクの総攻撃に遭い、イェーツに総合成績で追い上げられたが、この日はEFエデュケーション・イージーポストを含めて反撃を許さなかった。

「ヴィスマはおそらく私を苦しめ、またもや崩れさせようとしたのだろう。EFも逃げ集団にゲオルグを送り込んで揺さぶりをかけてきたけど、首位を守ることができて安心した。明日も今日と同じ展開になるだろう。確実にいくつかのチームがアタックを仕掛けてくるはずだが、チームは団結してそんな動きに注意を払っていく。明日の夕方、コッレ・デッレ・フィネストレの後もこのジロ・デ・イタリアをリードし続けることができたら、それは私にとっては魔法のような瞬間になる」とデルトロ。

最終日前日の第20ステージは4つの山岳ポイントに加えて距離205kmという長さ。残り27.5km地点に今大会の最高地点「チーマ・コッピ賞」が設定されたコッレ・デッレ・フィネストレがあり、その頂上から4.3km手前にボーナスポイントが獲得できるレッドブルKMがある。大会は6月1日に終幕するが、個人総合優勝はこの日にほぼ確定する。

文:山口和幸

山口 和幸

ツール・ド・フランス取材歴30年超のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、東京中日スポーツ、ダイヤモンド・オンライン、LINEニュース、Pressportsなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)、講談社現代新書『ツール・ド・フランス』。青山学院大学文学部フランス文学科卒。

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