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雌雄を決する最終章。魔の「山岳2連戦」にマリア・ローザの行方は委ねられた!|ジロ・デ・イタリア2025
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介上位3名は僅差だがその中でもポールポジションに立つのはデルトロ
史上初のアルバニア開幕で盛り上がったジロ・デ・イタリアも、残すところあとわずか。イタリアに舞台を移してからの激動の日々も、やはりジロだからこそ。最後の週末を前に、マリア・ローザ争いは僅差のまま。新王者誕生か、はたまたベテランの復権か。それを知っているのは、第19・第20両ステージだけである。
第19ステージは今大会の最難関
もはや魔の山岳2連戦である。確かに、最も過酷なサイクルロードレースと言われるジロだけあって、大会終盤が易しくなるわけはない。それにしたって、ハードすぎる。今年のジロのステージ編成は不均衡だとの声も聞かれるが、最後の最後に山岳比重が急激に高まるあたりは、その評はあながち間違っていない気がする。
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そんなことを言っても何も変わらない。第19・第20両ステージは、マリア・ローザの行方を決める山岳最終決戦である。
第19ステージは今大会の「クイーンステージ」との呼び声も高い。リアルスタートから3kmで山岳区間へ突入するが、最初の上りである3級クローチェ・セッラの入口は15%の急坂。これを機に、166kmの行程は上りと下りの繰り返しとなる。
中間地点を前に上る1級山岳コル・ツェコーレは、登坂距離16km・平均勾配7.7%。頂上手前で10%超の急坂に切り替わって、上り終えたら今度はテクニカルなダウンヒル。
ローマで祝福を受けられるのは山岳決戦を制した選手ただひとり
アオスタバレーの奥地へと入っていき、レース後半は1級山岳コル・サン・パンタレオン(16.5km、7.2%、最大勾配12%)、1級山岳コル・ド・ジュー(15.1km、6.9%、12%)を連続して上る。長く急な登坂を強いられるのはもちろん、どこまでも続くつづら折りが選手たちの体力とメンタルを削っていく。
コル・ド・ジューを終えたら、フィニッシュまでは約20km。2級山岳アンタニョー(9.5km、4.5%、11%)も勝負どころとしては十二分に機能しそうだ。頂上から4km下ったら、フィニッシュまで残り1kmしかない。下りを使った仕掛けに出る選手が現れるかもしれない。しかもコーナーが連続し、フィニッシュに向かっては石畳の路面である。
第20ステージは未舗装区間で大差がつく可能性も
事実上の総合争い最終戦は、第20ステージ。205kmに設定されるコースは、前半が難易度低め。ただ、これはその後の激闘への伏線でしかない。
最後の50kmが運命を左右する。選手たちの前に立ちはだかるのは、コッレ・デッレ・フィネストレ。登坂距離18.5km、平均勾配9.2%を上った先は、標高2178m。上り始めに最大勾配14%区間があり、その後は10%前後の傾斜をひたすら進んでいく。今大会のチーマ・コッピ(最高標高地点)でもある。
ここをただ上るだけではない。頂上までの8kmは未舗装路なのである。残雪の影響で路面が緩んでいることも考えられ、攻略はなかなかに難しい。しかも、この区間の途中にレッドブルKMが置かれるのも勝負をより厳しくする。
ジロでこの山が初採用されたのが2005年。以降3回コースに組み込まれていて、2018年の第19ステージだけレース中盤に上っている。その際は、クリストファー・フルーム(現イスラエル・プレミアテック)がアタックに成功し、80kmもの独走劇を演じている。また、昨年のツール・ド・ラヴニールでも採用されていて、パブロ・トレス(現UAEチームエミレーツ・XRG)が2位に3分43秒差をつけて圧勝。このジロでも、ちょっとしたことをきっかけに思わぬ大差が生まれるかもしれない。
いったん下って、最後は3級山岳セストリエーレの頂上へ。標高2033mのフィニッシュ地点でマリア・ローザに袖を通した者こそが、ジロ・デ・イタリア2025の頂点へ王手をかけることとなる。
最終日前日でのマリア・ローザ入れ替わりは近年で5回
最後の週末を前に、個人総合トップ3は僅差。現時点でトップを走るイサーク・デルトロ(UAEチームエミレーツ・XRG)から41秒差でリチャル・カラパス(EFエデュケーション・イージーポスト)が、さらに10秒差でサイモン・イェーツ(チーム ヴィスマ・リースアバイク)が続いている。この3選手が最終決戦の中心人物となる。
初のジロ制覇を目指すデルトロはグランツールの実績から見て、これだけの山道を戦い抜けるかが未知数。本格山岳コースを走った第16ステージではライバルに後れを取ったが、「バッドデイだった」と振り返っており、翌日には勝利し立て直している中でいかに走ってみせるかが楽しみ。チームは2選手がリタイアし厚みを失いつつあるが、ラファウ・マイカやアダム・イェーツといったベテランクライマーがデルトロを全力で守る。
勢いに乗るカラパスは逆転劇での総合優勝を狙う
ここまでの戦いを見るに、山岳での勢いがもっともあるのはカラパスだ。要所でのアタックは他の追随を許さず、再三再四ライバルに脅威を与えている。上りでEFトレインが集団を牽き始めたら、戦いのゴングが鳴ったとみて良いだろう。カラパス発射までのカウントダウンである。当然、第19ステージから動いてくる。
サイモンも大崩れなく大会終盤までやってきた。チームとして苦戦した昨シーズンから一転し、プロトン最強チームのひとつとしての存在感をジロで取り戻した印象だ。やはり、ワウト・ファンアールトが集団牽引や逃げでレース構築しているあたりは、チーム全体に好影響をもたらしているといえよう。来る山岳2ステージでも、逃げに入るようだと前待ちでサイモンの上位押し上げを図っていくことになる。
ジロにおける「最後の週末」は、これまで多くの波乱が起きてきた。総合トップ3が入れ替わったのは過去10年で8回。そのうち5回は最終日前日にマリア・ローザの主が変わっている。前記したように今回も僅差である。大逆転劇を生み出す要素は整っている。
ちなみにカラパスは、2022年大会で“大逆転劇”の当事者になった。第20ステージ、最後の山岳でまとめられずジャイ・ヒンドレー(現レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)にマリア・ローザを奪われている。今回はその逆を演じられるか。
大会の終着地点・ローマが近づいてきた。バチカンでは、新ローマ教皇・レオ14世が選手たちを出迎える予定になっている。バラ色を身にまとい、祝福を受けるのは誰になるだろう。山岳2連戦ですべてが決まる。
文:福光 俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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