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サイクル ロードレース コラム 2025年5月24日

ピーダスンが激坂勝負でファンアールトを制す!デルトロがさらにタイムを稼ぎマリア・ローザ堅持|ジロ・デ・イタリア2025 レースレポート:第13ステージ

サイクルロードレースレポート by 山口 和幸
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ファンアールトとの熱戦を制し、ピーダスンがステージ優勝を果たす

ファンアールトとの熱戦を制し、ピーダスンがステージ優勝を果たす

第108回ジロ・デ・イタリアは2025年5月23日、ロヴィーゴ〜ヴィチェンツァ間の180kmで第13ステージが行われ、ポイント賞1位のマリア・チクラミーノを着用するリドル・トレックマッズ・ピーダスン(デンマーク)が、チーム ヴィスマ・リースアバイクワウト・ファンアールト(ベルギー)を最後の激坂勝負で封じ込めて優勝。今大会4勝目、大会通算5勝目を挙げた。

総合1位のマリア・ローザを着るイサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツ・XRG)は2秒遅れの単独3位でフィニッシュ。後続の4位集団に3秒差をつけるとともに、レース途中とゴールでボーナスタイムを獲得。この日もわずかだが秒差を稼いで総合2位のチームメート、フアン・アユソ(スペイン)との差をじわりと広げた。

久々のジロ訪問を全力で祝うロヴィーゴの人々に応援されスタート

久々のジロ訪問を全力で祝うロヴィーゴの人々に応援されスタート

レッドブルKMでアユソが4秒、デルトロが2秒獲得

スタートから120kmは平坦路。残り60kmを切ってから起伏のあるルートになり、ヴィチェンツァに入って25kmの周回コースを一周する。ヴィチェンツァの象徴である聖マリア聖堂がそびえるモンテ・ベリコに2回上る。頂上の聖堂前にフィニッシュラインがあるが、1度ここを通過して2度目の登坂でフィニッシュとなる。レッドブルKMはこの周回コース上にあって、残り10.4km地点。上位3人の通過者にボーナスタイム6、4、2秒が与えられる。

ステージ優勝の大本命は単なるスプリンターではなく、上り坂も苦にしないパンチャータイプのピーダスンだ。
「今回のジロ・デ・イタリアだけでなく、今のところシーズン全体が私にとって本当にいいものになっている。私は世界でトップクラスの選手の一人だとは言わないけど、自分自身が得意とする分野ではトップ5の選手の一人。これまでの努力が今実を結んでいる。春のクラシックでもいい成績を残し、ジロ・デ・イタリアの序盤もいい結果を出した。だから最終日のローマまでその状態を維持するように努めている」とピーダスン。

171選手が気温18度、快晴のなかをスタートしていった。13km地点でグルパマ・FDJのスヴェンエリック・ビーストルム(ノルウェー)がアタックし、これをアルケア・B&Bホテルズのルカ・モッツァート(イタリア)、バーレーン・ヴィクトリアスのフラン・ミホリェヴィッチ(クロアチア)、デカトロン・AG2Rラモンディアルのドリース・デボント(ベルギー)、グルパマ・FDJのロレンツォ・ジェルマーニ(イタリア)、モビスター チームのロレンツォ・ミレージ(イタリア)、チーム ピクニック・ポストNLのクリス・ハミルトン(オーストラリア)、チーム ポルティ・ビジットマルタのダヴィデ・バイス(イタリア)、VFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネのフィリッポ・マーリ(イタリア)が追い、9選手の第1集団が形成された。

2分差でこれを追うメイン集団は、ファンアールトを勝たせたいチーム ヴィスマ・リースアバイクをはじめ、リドル・トレック、Q36.5プロサイクリング チームがペースをコントロール。9選手を終盤までに捕らえられる射程距離内で走り続けた。

中盤になって起伏が出現すると第1集団の中で体力を使い果たした選手らがこぼれ落ち始めた。ジェルマーニが単独で先行する作戦に出たが、132km地点ではメイン集団が8秒差まで追いついてきた。その状況で、メイン集団から抜け出したXDS・アスタナ チームのクリスティアン・スカローニ(イタリア)が先頭のジェルマーニに合流。イタリア勢としては総合優勝を争う有力選手が動きをためらうこのステージで名を挙げたいという野心がみなぎっていた。

大部分が平坦なステージながら、後半の激坂でパンチャー大戦を展開

大部分が平坦なステージながら、後半の激坂でパンチャー大戦を展開

上り坂になるとこの2人を追ってバーレーン・ヴィクトリアスのペリョ・ビルバオ(スペイン)らがステージ優勝を狙って動いた。メイン集団はそうはさせまいとリドル・トレックがコントロール。先頭のジェルマーニとスカローニは一時52秒までタイムを広げたが、リドル・トレックが先頭を引く集団は徐々にその差を縮めていく。序盤から逃げていたジェルマーニがたまらず脱落し、先頭はスカローニだけになった。

レッドブルKMではスカローニがなんとか1着で通過したが、メイン集団から飛び出してきたアユソとデルトロがスカローニに続いて通過。この日のレッドブルKMでスカローニが6秒、アユソが4秒、デルトロが2秒のボーナスタイムを獲得した。

平坦路の最後は心臓が飛び出るくらいの激坂バトル

すぐにスカローニが集団に吸収され、レースが振り出しに戻ると、ここで動いたのがリドル・トレックだ。172km地点でマティアス・ヴァチェク(チェコ)がアタックし、これにチーム ピクニック・ポストNLのロマン・バルデ(フランス)が反応。残り2kmで後続との差は12秒。アルペシン・ドゥクーニンク勢が逃げを潰しにかかる。残り1kmでわずか5秒。そして2選手は最後の激坂のフィニッシュラインまで500mというところで捕らえられる。

リドル・トレックが作戦変更した。残り300mでピーダスンが先行し、これをファンアールトが追う。さらにマリア・ローザのデルトロが追従。止まるようなスピードまで落ちたラストのもがき合いはそのポジションのままフィニッシュへ。ステージ優勝はピーダスンで同時にボーナスタイム10秒を獲得。タイム差なしの2位はファンアールトでボーナス6秒。2秒遅れの3位がデルトロでボーナス4秒。5秒遅れの4位集団としてレッドブル・ボーラ・ハンスグローエプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)、バーレーン・ヴィクトリアスのアントニオ・ティベーリ(イタリア)、アユソらの有力選手たちが一緒にゴールした。

総合成績の1位デルトロと2位アユソのタイム差を整理してみよう。デルトロがゴールで3秒先着し、レッドブルKMでボーナス2秒、ゴールでボーナス4秒を獲得。アユソはレッドブルKMでボーナス4秒を獲得したため、2人の差は前日の33秒から38秒に広がった。

最後のスプリント勝負に勝ち、チームメイトに感謝するピーダスン

最後のスプリント勝負に勝ち、チームメイトに感謝するピーダスン

「今日のようなフィナーレでは、戦いのきっかけを見極める必要がある。私はワウト・ファンアールトの右側にいて、200m地点の看板を見たときにスプリントを開始しなければならなかったので、フィニッシュラインまでリードを保つのに十分であることを願っていた。最後の激坂はみんなの脚に負担がかかることを知っていた」とピーダスン。

可能であれば、この勝利をヴァチェクに譲りたいとも語ったピーダスン。
「この子は私のためにたくさん働いてくれた。デルトロがスプリントで上位に来ると思っていたので、彼より速くフィニッシュできることを期待していた。チームエースのジュリオ・チッコーネも素晴らしい状態なので、私たちはプレッシャーを分かち合うことができる。彼はプレッシャーを受け入れつつ、リラックスするための絶妙なバランスを持っている。新境地を開拓したチッコーネには総合成績のチャンスがある」

新入りで優勝候補じゃないけどもっと強くなりたい(デルトロ)

「チームと一緒に過ごした本当にいい1日となった。みんなうまくやっていた。私は自分のことをとても誇りに思っている」というデルトロは、これで5日間もマリア・ローザを守ったことになる。今大会は欠場しているタデイ・ポガチャルが2024年は大会2日目から最後までマリア・ローザを着用していて、チームは34ステージ中の25ステージ、実に73%のマリア・ローザ保持率となる。

ステージ3位となったデルトロはマリア・ローザを死守

ステージ3位となったデルトロはマリア・ローザを死守

「ジロ・デ・イタリアの総合1位のために秒数を稼げてとてもうれしい。私たちはチームで一丸となってボーナスを狙うことにしたが、これまでスプリントのために特にトレーニングをしたことはない。1カ月前の高地キャンプで初めてスプリントをした。ボーナスタイムを取るのにそれほどエネルギーを使っているとは思っていないし、少なくともそう信じたい」と作戦を明かしたデルトロ。

「ゴールラインでは先頭の2人と私の間にギャップがあり、私と後ろの集団の間にも別のギャップがあった。総合トップ20人は非常に強力で、彼らはグランツールの勝者であり、表彰台に立つ選手たちばかりだ。私はここでは新入りで、リザルト上では優勝候補ではないかもしれないが、強くなりたい。チームのみんなの話を参考にして成長していきたい」(デルトロ)

翌日の第14ステージは平坦路。トレヴィーゾをスタートし、国境を越えてスロベニアのノヴァ・ゴリツァにフィニッシュする。

文・山口 和幸

山口 和幸

ツール・ド・フランス取材歴30年超のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、東京中日スポーツ、ダイヤモンド・オンライン、LINEニュース、Pressportsなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)、講談社現代新書『ツール・ド・フランス』。青山学院大学文学部フランス文学科卒。

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