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サイクル ロードレース コラム 2025年5月23日

オラフ・コーイがスプリント勝負を制して2年連続勝利…首位デルトロはレッドブルKMボーナス2秒獲得|ジロ・デ・イタリア2025 レースレポート:第12ステージ

サイクルロードレースレポート by 山口 和幸
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オラフ・コーイがゴールスプリントを制し、2年連続2回目のステージ優勝

オラフ・コーイがゴールスプリントを制し、2年連続2回目のステージ優勝

第108回ジロ・デ・イタリアは2025年5月22日、モデナ〜ヴィアダーナ間の172kmで第12ステージが行われ、チーム ヴィスマ・リースアバイクのオラフ・コーイ(オランダ)がゴールスプリント勝負を制し、2年連続2回目のステージ優勝を遂げた。総合成績では首位に立つUAEチームエミレーツ・XRGのイサーク・デルトロ(メキシコ)が、レッドブルKMで2秒のボーナスタイムを獲得し、総合2位のチームメート、フアン・アユソ(スペイン)との差を31秒から33秒に広げた。

スプリンターを擁するチームがラスト勝負を計画

スプリンターにとっては1週間ぶりに活躍できる舞台設定だ。ステージ前半の100kmは緩慢なアップダウンがあるが、ラスト70kmはほぼフラット。6、4、2秒のボーナスタイムが獲得できるレッドブルKMは残り33km地点のブレシェッロに設定されている。レースはいったんヴィアダーナのゴールラインを通過した後、約27kmの周回コースに入ってフィニッシュする。

171人の選手がモデナを出発!曇り空の中、フェラーリゆかりの地・マラネッロを通過するルート

171人の選手がモデナを出発!曇り空の中、フェラーリゆかりの地・マラネッロを通過するルート

曇り空、気温22度のモデナを171選手がスタートした。このあたりはイタリアの自動車産業の中心地で、11.6km地点にあるマラネッロはフェラーリが創業した町。フェラーリにモデナという車種があるが、世界のモータースポーツ界になくてはならないエリアなのだ。そんなステージでイタリア勢が積極的に動いた。アルケア・B&Bホテルズのジョスエ・エピス(イタリア)、チーム ポルティ・ビジットマルタのアンドレア・ピエトロボン(イタリア)、VFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネのマヌエーレ・トロッツィ(イタリア)が5km地点からアタック。26km地点で2分46秒差を開いた。

これに対してメイン集団はアルペシン・ドゥクーニンク、チーム ヴィスマ・リースアバイク、デカトロン・AG2Rラモンディアール チームがペースメークを始める。3チームにはそれぞれカーデン・グローブス(オーストラリア)、コーイ、サム・ベネット(アイルランド)というスプリンターがいて、集団ゴールに持ち込みたいという意図があるからだ。

カテゴリー3級の山岳と中間スプリントで激しい競り合いを見せる

カテゴリー3級の山岳と中間スプリントで激しい競り合いを見せる

この日は38km地点にカテゴリー3級の山岳、57km地点に中間スプリント、93.6km地点にカテゴリー3級の山岳、116.1km地点に中間スプリントが設定されていて、先頭の3選手が奪い合いを見せる。徐々にリードは失われていき、残り50kmで20秒差、残り40kmで10秒差に。ステージ勝利争いは予想通りに最後のスプリントで決着しそうな気配が漂ってきた。

残り33km地点のレッドブルKMまであと3kmというところで逃げていたエピスとトロッツィは吸収された。ピエトロボンはそのまま逃げ続けてレッドブルKMをトップ通過。しかしメイン集団はすぐ背後まで近づいていて、イネオス・グレナディアーズのキム・ハイドゥク(ドイツ)が2着通過、そしてマリア・ローザのデルトロが3着で通過してボーナスタイム2秒を獲得した。

ファンアールトの牽引でコーイがスプリントを制した

ヴィアダーナのゴールラインを1回目に通過したところでピエトロボンがメイン集団に吸収された。やはりこの日はゴールスプリント勝負だ。残り5kmから各チームが位置取りを巡ってハイペースで走行を開始。ポイント賞で大量リードするマッズ・ピーダスン(デンマーク)を擁するリドル・トレック、そしてチーム ヴィスマ・リースアバイクが激しく競り合う。

チーム ヴィスマ・リースアバイクは第9ステージで勝っているワウト・ファンアールト(ベルギー)がコーイの最終牽引役となった。最後の直線で解き放たれたコーイを第4ステージのスプリント覇者カスペル・ファンウーデン(オランダ、チーム ピクニック・ポストNL)が抜く。それをさらにコーイが逆転してフィニッシュラインをトップ通過。ファンアールトがその後方で片手を上げてチームメートの勝利を祝った。

最後の直線で強烈なスプリントを見せ、コーイがトップでフィニッシュラインを通過

最後の直線で強烈なスプリントを見せ、コーイがトップでフィニッシュラインを通過

コーイはプロ通算40勝目で、今季4勝目。3月のティレーノ~アドリアティコ第4ステージで優勝して以来の勝ち星だ。オランダ勢は第4ステージでファンウーデン、第10ステージのタイムトライアルでダーン・ホーレ(リドル・トレック)がステージ優勝していて、異なる3選手がオランダに3勝をもたらしたのは大会初となるという。

「主導権争いのときにチームメイトを少し失ったが、ワウト・ファンアールトの後ろに入ることができた。ちょうどいいタイミングでお互いに見つけ合うことができてよかった。この大会ではここまでの2ステージでも本当に勝ちたかったが、いくつかのミスがあって次のチャンスを待たなければならなかった」というコーイ。

「ジロ・デ・イタリアの平坦ステージを勝つためのスピードは備えているし、チームも質もあるので、今日はそれを完結させられて本当にうれしい。以前にもワウトと数回レースをした。彼のリードアウトは他のライダーとは違って、彼だけが牽引を長く続けられる。バイクを降りた後も仲がいいのでとても楽しい」(コーイ)

自分のほうが勝ちたいというエゴは抱えていない(デルトロ)

この日は100人以上の選手がトップとタイム差なしの大集団でゴールし、総合成績のトップテン選手はすべてこの中に含まれた。ただし首位のデルトロがレッドブルKMで2秒を獲得したため、2位以下の選手とのタイム差はプラス2秒になった。UAEチームエミレーツ・XRGは依然として首位デルトロ、33秒遅れの2位アユソ、2分18秒遅れの8位ブランドン・マクナルティ(米国)、2分35秒遅れの9位アダム・イェーツ(英国)と4選手がトップテンに位置する。

総合優勝を争う有力選手を擁するチームはスプリンターチームにペースメークを任せることができて、体力温存に努めたといってもいい。デルトロはこれで4日間マリア・ローザを着用することになった。22歳に満たない若い選手が4日間首位を守ったのは21世紀になって初めてだという。

21世紀初!22歳未満のデルトロが4日連続マリア・ローザ着用

21世紀初!22歳未満のデルトロが4日連続マリア・ローザ着用

「風が吹いていたが、チームメートが全員同じメイン集団にいて注意を払っていたので、想定よりも楽な日になるだろうと思っていた。そのため、私たちは少し早めに逃げに追いついてしまった。レッドブルKMで数秒を稼いだが、チームメートと一緒に逃げに追いつくことができればそれでよかった。2秒を稼いだことには満足している」とデルトロ。

「世界中のサイクリストはいつかジロ・デ・イタリアで勝ちたいと思っている。私はこれまで現在のチームメートのために働いてきた。どちらも自分のほうが勝ちたいというエゴの問題を抱えていない。チームで1位と2位にいる状況を利点として利用している。それで幸せで、ストレスはない」

第13ステージは平坦コースだが、ときおり激坂があって、スプリンターよりも一発勝負のパンチャーが活躍しそうだ。またレッドブルKMが残り10kmのアルクニャーノに設定されているが、1kmにわたり平均勾配8.9%、最大値13%のセクターとなっていてかなり難しい。マリア・ローザを争う有力選手が6、4、2秒のボーナスタイムを取りにいく可能性もあるだろう。

文・山口 和幸

山口 和幸

ツール・ド・フランス取材歴30年超のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、東京中日スポーツ、ダイヤモンド・オンライン、LINEニュース、Pressportsなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)、講談社現代新書『ツール・ド・フランス』。青山学院大学文学部フランス文学科卒。

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