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サイクル ロードレース コラム 2025年5月22日

東京五輪覇者のカラパスが6年ぶりジロステージ優勝!前日にタイムを失ったデルトロ、チッコーネも健闘|ジロ・デ・イタリア2025 レースレポート:第11ステージ

サイクルロードレースレポート by 山口 和幸
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カラパスは2019年大会以来、6年振りのジロステージ優勝を飾った

第108回ジロ・デ・イタリアは2025年5月21日、ヴィアレッジョ〜カステルノーヴォ・ネ・モンティ間の185kmで第11ステージが行われ、東京五輪ロードの金メダリスト、リチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)が残り9kmから抜け出して、6年ぶり4回目のステージ優勝を果たした。カラパスは2018年に1勝、総合優勝した2019年に2勝を挙げている。

総合成績ではマリア・ローザのイサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツ・XRG)が10秒遅れの2位グループの先頭でゴールし、ボーナスタイム6秒を獲得。チームメートで総合2位のフアン・アユソ(スペイン)との差を25秒から31秒に広げた。

山岳王のフォルトゥナートがポイントを量産

21ステージで争う大会はこの日がちょうど折り返し地点。ティレーノ〜アドリアティコのスタート地点として知られるリド・ディ・カマイオーレの近く、マリンリゾートのヴィアレッジョを出発する。アペニン山脈の峠が待ち構え、最難関ではないものの決してあなどってはならない山岳ステージだ。

レース前、リラックスした表情でファンと交流するログリッチ

気温19度で快晴。気持ちいい気候の中を171選手がスタート。序盤から抜け出そうとする選手らが続出するが、いったんは51km地点までにすべてが捕らえられる。しかしアタックは止められない。チーム ヴィスマ・リースアバイクのエドアルド・アッフィニ(イタリア)とXDS・アスタナ チームのワウト・プールス(オランダ)のアタックをきっかけに30選手が第1集団を形成。カテゴリー1級のアルペ・サン・ペッリグリーノに突入すると山岳賞ジャージを着用するXDS・アスタナ チームのロレンツォ・フォルトゥナート(イタリア)が単独で抜け出すことに成功した。

総合上位がひしめくメイン集団では、エガン・ベルナル(コロンビア)をエースとするイネオス・グレナディアーズがアルペ・サン・ペッリグリーノでレースを厳しくしたが、UAEチームエミレーツ・XRGも対抗。総合成績の上位選手たちはこの山岳でだれも有利な状況を獲得できなかった。このペースアップによりメイン集団の数が減り、ステージ勝利を争う本命が絞り込まれていく。カラパスは「この展開はチャンスだ」と思ったという。

フォルトゥナートはそのまま単独でアルペ・サン・ペッリグリーノの頂上を通過して山岳ポイントを獲得。1分01秒遅れでこれを追うモビスター チームのナイロ・キンタナ(コロンビア)、バーレーン・ヴィクトリアスのペリョ・ビルバオ(スペイン)、プールス、チーム ジェイコ・アルウラーのルーク・プラップ(オーストラリア)。UAEチームエミレーツ・XRGのラファウ・マイカ(ポーランド)、アユソ、デルトロらのマリア・ローザ集団が1分10秒遅れで峠を通過した。

山岳賞首位を走るフォルトゥナートはこの日も順調にポイントを重ねた

キンタナらは先行していたフォルトゥナートに追いついて5人のグループに。フォルトゥナートは続くカテゴリー2級の山岳でもトップ通過してポイントをさらに積み上げる。162km地点に設定されたレッドブルKMではキンタナが先頭で通過した。後続のメイン集団は1分22秒差でこれを追っていく。

苦手のタイムトライアルで温存し、この日を狙っていた

そして177km地点でマリア・ローザと有力選手らのグループが逃げた選手をキャッチ。すぐさまカラパスがスパートを見せる。デルトロがこれに反応していったんは捕まえたが、残り9km地点でカラパスがさらにアタック。有力選手らに30秒の差をつけたが、デルトロらも懸命にカラパスを追い、その差はゴールまでわずかに縮まっていく。

カラパスは残り1kmのフラムルージュを僅差だが、捕らえきれないタイム差を維持して頑張った。
「このステージは非常に難しいものであり、多くの選手が最初の登りから苦しんでいた。調子がよかったので指示された瞬間に攻撃してチャンスをつかんだ。単独走行になったので、ゴールまでタイムトライアルのようなものだった」というカラパス。

カラパスは総合4位で臨んだ前日の個人タイムトライアルで、2分51秒遅れの59位に沈んでいた。それでも失望しなかった。タイムトライアルが自分の得意分野ではないことを理解していて、できる限りのパワーを温存したという。それがこの日の最後のアタックに生かされた。「コンディションがいい状態であり、戦い続けることができるという確認ができた」とカラパス。最後は2位に差をつけて渾身のガッツポーズで優勝。有力選手らとのタイム差は10秒だったが、ボーナスタイム10秒も獲得し、総合成績で2分10秒遅れの9位から1分56秒遅れの6位に浮上した。

2位は10秒遅れでデルトロ。区間3位はリドル・トレックのジュリオ・チッコーネ(イタリア)で、総合5位のポジションから前日のタイムトライアルで8位に下がったが、この日7位に浮上して山岳での強さを見せつけた。

互いの健闘を称えあうデルトロとカラパス

カラパスは追えたがチームメートを待った(デルトロ)

「このステージを勝つことは特別で感情的なことだ。それは多くの努力の後に訪れたもので、私は家族や友人を喜ばせたかった。今回のジロ・デ・イタリアを勝つために最後まで頑張り続けたい。素晴らしい対戦相手がいる。ローマに到着するまで戦うことをやめない」とカラパス。

チームはこの第11ステージで勝つ可能性が高いと分析し、2024年10月からこの日のコースでいい結果を残せるように取り組んでいたという。ジロ・デ・イタリアが始まったときからこの日の勝利が第1目標だった。

「自分の戦略を活かし、うまくいった。チームメイトのゲオルグ・シュタインハウザーとミッケルフレーリク・ホノレのアシストを活用した。総合成績としては数秒を獲得しただけだが、それにとても満足している。もしかしたらジロ・デ・イタリアの最後になって重要になるかもしれない。ジロ・デ・イタリアの最終週は非常に厳しい。私たちの最終目標は総合成績で可能な限りいい結果を出すこと。今日のステージ勝利がそれを変えるものではない。もっと高い山で戦う準備ができていると感じている」(カラパス)

第11ステージを制したのは独走で逃げ切ったカラパス

マリア・ローザを守ったデルトロも安堵のフィニッシュを迎えた。
「カラパスが非常に強いライダーであることは分かっていた」というデルトロ。アシスト役のマイカがカラパスとの距離を広げてしまったとき、デルトロは「もっとペースを上げてカラパスに追いつこう」と指示したが、風の影響もあってマイカが追えなかった。しかたなくデルトロ自身がアタックした。後方を確認すると追走している選手たちとのギャップを確認。
「チームメイトが全員揃っていて、一緒に走るほうがよかったので、ペースダウンして再び一緒になるのを待った」という。

「調子がいいという感覚を持ててありがたかった。でも、まだ自分がトップライダーの一人であることを実感できていない。マリア・ローザを手に入れるためになにが必要か、どうやって体力消耗を早く回復できるかを学ぼうとしている。明日もマリア・ローザを着て、ピンクのヘルメットをかぶり、ピンクの自転車とバーテープを見るのは信じられない」

翌12ステージのルートは、100kmの丘陵セクションと、ゴールまで一直線の平坦な道が組み合わさっている。最初の部分はモデナの内陸を通り、クワットロ・カステッラに到達する。ここからルートは完璧に平坦になる。ゴールラインを一度通過した後、レースは約27kmの周回コースに入り、広い直線的な道路が続く。再びスプリンターたちの出番か? マリア・ローザを狙う選手は温存か? ジロ・デ・イタリアに見逃してもいいステージは一つもない。

文・山口 和幸

山口 和幸

ツール・ド・フランス取材歴30年超のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、東京中日スポーツ、ダイヤモンド・オンライン、LINEニュース、Pressportsなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)、講談社現代新書『ツール・ド・フランス』。青山学院大学文学部フランス文学科卒。

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