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サイクル ロードレース コラム 2025年5月3日

連覇に挑むフォレリングか、ロード完全転向のフェランプレヴォか? そしてまさかの師弟対決も実現!【Cycle*2025 ラ・ブエルタ フェメニーナ:プレビュー】

サイクルロードレースレポート by 山口 和幸
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ラ・ブエルタ フェメニーナ

スペインを走るラ・ブエルタ フェメニーナ

女子ワールドツアーのラ・ブエルタ フェメニーナが5月4日から10日まで、スペイン北部を舞台として全7ステージで開催される。FDJ・スエズのデミ・フォレリング(オランダ)が大会連覇を狙うが、マリアンヌ・フォス(オランダ)とポーリーヌ・フェランプレヴォ(フランス)のダブルエースで参戦するチーム ヴィスマ・リースアバイクなどライバルたちが勢揃い。

女子ワールドツアーは1月に南半球のツアー・ダウンアンダーで開幕。ステージレースとしては2月に中東でUAEツアー・ウイメンが開催されているが、いよいよ欧州でステージレースが展開する季節になった。スペインで行われるラ・ブエルタ フェメニーナは女子版のブエルタ・ア・エスパーニャであり、グランツール男女6大会の緒戦となり、女子の注目選手たちがスタートラインに並ぶ。

2015年にブエルタ・ア・エスパーニャの女子レースとして創設された。2023年にハイパーマーケットのカルフール・エスパーニャがタイトルスポンサーとなり、ラ・ブエルタ フェメニーナに名前が変更された。大会としては2025年が11回目、女子グランツールとしての位置づけを確立したラ・ブエルタ フェメニーナとしては3回目となる。

2024年の大会は当時チーム SDワークス・プロタイムに所属していたフォレリングが、ピレネー山脈にゴールする第5ステージで独走勝利して首位に。第6ステージでライバルとの差を開くと、最終日の第8ステージで再び独走勝利。2023年、アネミエク・ファンフルーテン(オランダ)に逆転負けして9秒差の総合2位に終わったフォレリングが悲願の初優勝を手中にした。

大会の最多勝利は2021年から2023年まで3連覇したファンフルーテン(現在は引退)で、オランダ勢は4連覇中、大会通算5勝を誇っている。今大会もオランダ勢を中心に、フランスのフェランプレヴォがキーとなることは確かだ。

ラ・ブエルタ フェメニーナ

全体図

●2025ラ・ブエルタ フェメニーナ日程
5月4日(日)第1ステージ バルセロナ〜バルセロナ 8.1km(チームタイムトライアル)
5月5日(月)第2ステージ モリンス・デ・レイ〜サンボイ・デ・リュブレガート 99km▲
5月6日(火)第3ステージ バルバストロ〜ウエスカ 132.4km
5月7日(水)第4ステージ ペドロラ〜ボルハ 111.6km▲▲
5月8日(木)第5ステージ ゴルマヨ〜ラグナス・デ・ネイラ 120.4m▲▲▲
5月9日(金)第6ステージ ベセリル・デ・カンポス〜バルタナス 126.7km
5月10日(土)第7ステージ ラ・ロブラ〜アルト・デ・コトベリョ(アストリアス) 152.6km▲▲▲
(▲は山岳の難易度)

ラ・ブエルタ フェメニーナ

左から敢闘賞、個人総合時間賞、ポイント賞、山岳賞ジャージ

ラ・ブエルタ フェメニーナのリーダージャージは4つだが、男子レースとは異なる点に着目したい。個人総合時間賞は真紅のマイヨ・ロホ、ポイント賞は緑色のマイヨ・ヴェールでこの2つは共通。山岳賞ジャージは黄色・水色・赤のパステル調で、男子の青ドットとはデザインが異なる。ヤング・ライダー賞は2004年1月1日以降に生まれた選手の中で、各ステージをトップでフィニッシュした選手に与えられる。ステージごとの表彰であり、総合時間では争わないのでリーダージャージはない。

代わって、前日の敢闘賞受賞者が着用するコンバティビティジャージが設定されている。デザインは白地にピンクのハートマークがちりばめられたものだ。最終日の受賞者はそれを着用してレースする機会がないので、最終表彰台に登壇してコンバティビティジャージに袖を通す。またツール・ド・フランスのように最終日に総合敢闘賞が発表されるというわけではなく、敢闘賞はステージごとに選出された選手に与えられる。

これ以外に各ステージ優勝と、チーム賞がある。チーム賞はチーム内でステージの上位3選手の所要時間を合計して、最も少なかったチームに与えられる。7日間を通しての総合成績も設定されている。

ラ・ブエルタ フェメニーナ

初日にチームタイムトライアルが行われる

コースは地中海に面したバルセロナから西を目指して突き進む。開幕地のバルセロナではチームタイムトライアルが行われるが、その設定は男子の2026ツール・ド・フランス初日と同じなので興味深い。「自転車による観光促進と持続可能な社会の両立を掲げるバルセロナ市は、推進キャンペーンの一環として2023ブエルタ・ア・エスパーニャと2026ツール・ド・フランスの開幕地を引き受けたのだが、今回のラ・ブエルタ フェメニーナ開幕もホストする。3大会ともすべてチームタイムトライアルである。

コースはバルセロナの観光名所を巡る。特に今回は、建築家アントニ・ガウディ設計のカサ・ミラ近くからスタートし、折り返し地点はペドラルベス宮殿の庭園。距離はわずか8kmなので10分ほどの勝負。選手は観光どころではないが、テレビ視聴者はこの上なく楽しいはずだ。

ラ・ブエルタ フェメニーナ

第5ステージ 高低差図

第2ステージは序盤に起伏があるコース。第3ステージは平坦路。第4ステージが中規模の山岳コースで、第5ステージが本格的山岳。第6ステージで再びスプリンターたちの活躍の舞台が設定されている。

ラ・ブエルタ フェメニーナ

第7ステージ 高低差図

最大の勝負どころは最終日の第7ステージだ。スペイン北西部のアストゥリアス地方が2年前と同じような劇的フィナーレを予感させる舞台となった。2023年はラゴス・デ・コバドンガでファンフルーテンとフォレリングの死闘が演じられたのである。今回は距離152.6kmで、後半にはアルト・デ・ラ・コリャドーナ(カテゴリー2級)、アルト・デ・ラ・コリャディエラ(カテゴリー1級)があり、アルト・デ・コトベリョ(カテゴリー1級)にゴールする。獲得標高は2500mを超えるというが、これはスペイン女子グランツールのステージとしては史上最高記録となる。

出場は13のUCI女子ワールドチーム、そしてワイルドカードと呼ばれる主催者推薦が8、UCI女子プロチームとコンチネンタルチームが選ばれた。1チームは7人編成。イタリアのビーピンク・イマトラ・ボンジョアンニも主催者推薦で出場するが、垣田真穂はメンバー入りせず。

ラ・ブエルタ フェメニーナ

2024年の覇者フォレリング

優勝候補の筆頭は28歳のフォレリング。2月の初戦セトマナ・チクリスタ・ボルタ・フェメニーナ・バレンシア(スペイン)で大会4日間にわたって首位を譲らず総合優勝。3月のストラーデ・ビアンケ ドンネ(イタリア)で優勝。クラシックレースではミラノ〜サンレモ(イタリア)4位、ラ・フレーシュ・ワロンヌ フェミニーヌ(ベルギー)2位、リエージュ~バストーニュ~リエージュ ファム(ベルギー)3位と安定感を見せる。この大会を連覇して世界ランキング1位を確保したまま7月26日に開幕するツール・ド・フランス ファムに乗り込みたい。

フォレリングにとって頼もしいのは、これまでFDJ・スエズでエースをはっていたエヴィータ・ムジック(フランス)がチームメートになったこと。ムジックは2024ラ・ブエルタ フェメニーナでステージ1勝を挙げ、最終ステージではフォレリングに続いて区間2位に。総合優勝争いをしたライバルだった。

2014ジロ・ドンネ

2014ジロ・ドンネ。左からフェランプレヴォ、ファンフルーテン、フォス、ロンゴボルギーニ

ただし今シーズンは新たな強敵が出現した。マウンテンバイクやシクロクロスで世界タイトルを何度も獲得してきたフェランプレヴォがロードレースにカムバックしてきたからだ。ストラーデ・ビアンケ ドンネ3位、ロンド・ファン・フラーンデレン ヴロウェン(ベルギー)2位、そしてパリ〜ルーベ ファムで優勝した。

チームにはフォスがいて強力なタッグを組む。フェランプレヴォはロード選手としてラボバンク・Livでデビューしているのだが、その当時からエースだったのがフォスだ。2014年のジロ・デ・イタリア ドンネではフォスが総合優勝したのだが、それをアシストしつつ総合2位とヤング・ライダー賞を受賞したのが、フランスのロードとタイムトライアルのチャンピオンだったフェランプレヴォだった。そのシーズンの大詰めに開催された世界選手権エリート女子ロードではオランダチームのフォスを制してチャンピオンになったのもフェランプレヴォである。

大会を目前にして女子ロード界のレジェンドになりつつあるフォスは、競技生活20年の経験値を踏まえてこう語っている。
「春のクラシックシーズンは調子を落としてしまい、今季はまだ勝ち星がないが、パリ〜ルーベ ファムでチームメートが勝ってくれたから悪い結果ではない。この大会はステージ優勝と総合優勝を目指していて、チームとして勝ち取っていくことが目標。女子ロード史上まれにみる厳しい山岳ステージも用意されているけど、レースを厳しくするのは上りの長さだけじゃない。ペースやチーム戦略などが難しくさせるから、うまく考えて7日間を戦っていきたい」

キャニオン・スラム・ゾンダクリプトのカタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド)は2024ツール・ド・フランス ファムの総合優勝者。第5ステージで首位のマイヨ・ジョーヌを着用していたフォレリングが落車で遅れ、マイヨ・ジョーヌを奪ったニエウィアドマがそのまま逃げ切っている。デビュー当時はラボバンク・Livにいて、フェランプレヴォとともにフォスのアシスト役として走っていたキャリアがある。

ラ・ブエルタ フェメニーナ

春先に行われるグランツール、ラ・ブエルタ フェメニーナ

そしてフォレリングが前年まで所属していたチーム SDワークス・プロタイムは世界女王のロッテ・コペッキー(ベルギー)と欧州女王のロレーナ・ウィーベス(オランダ)を派遣せず。35歳のアンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ)を起用した。ファンデルブレッヘンは2018、2020年の世界チャンピオン、2016リオ五輪の金メダリスト。2021年にジロ・デ・イタリア ドンネで4回目の総合優勝を達成して引退していた。

引退後はチーム SDワークス・プロタイムの監督に就任。2021年にこのチームに入った7歳年下のフォレリングの指導者を務めていたのだから、今回のレースはまさに師弟対決だ。

実力としてはフォレリングが頭一つ抜きん出ている。チーム戦略で挑むフェランプレヴォ&フォス、フォレリングの弱点を知っているはずのファンデルブレッヘン。7日間の戦いは実に興味深い。

文:山口和幸

山口 和幸

ツール・ド・フランス取材歴30年超のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、東京中日スポーツ、ダイヤモンド・オンライン、LINEニュース、Pressportsなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)、講談社現代新書『ツール・ド・フランス』。青山学院大学文学部フランス文学科卒。

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