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マイケル・マシューズが30人に絞られた集団スプリントで快勝、今季初勝利で春を締める【Cycle*2025 エシュボルン・フランクフルト:レビュー】
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介マイケル・マシューズがスプリントで強さを見せた
メーデー恒例のワンデーレース、エシュボルン・フランクフルトは、中盤の丘陵地帯で集団が割れ、最前線に残った30人が優勝をかけたスプリントへ。チームメートに守られながら最終局面での勝負に持ち込んだマイケル・マシューズ(チーム ジェイコ・アルウラー)が一番にフィニッシュラインを駆け抜けた。
「なかなか勝てなかったフランクフルトで勝利することができて本当にうれしいよ。チームも僕も、完璧なパフォーマンスだった」(マシューズ)
62回目を迎えたドイツ最高峰のワンデーレースは、ローレンス・ピシー(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)とピエール・ティエリー(アルケア・B&Bホテルズ)の飛び出しで幕開け。スタートから30kmを過ぎたところでメイン集団との差は6分15秒まで広がったが、フェルトベルク(登坂距離11km、平均勾配5%)の1回目登坂をきっかけにその差は徐々に縮小。山岳賞が設けられた頂上はティエリーがトップ通過している。
一度下って、マンモルスハイン(2.3km、8.3%)の1回目登坂でピシーが遅れると、ティエリーひとり逃げの態勢。ここもトップで頂上通過したが、その頃にはメイン集団がペースを上げていて、すぐにやってくる2回目登坂までにティエリーは引き戻された。
まだレースは半分近く残している状態ながら、メイン集団ではフェルトベルク、マンモルスハイン2カ所の上りを使って絞り込みを本格化。2回目のフェルトベルク(7.6km、6.5%)では、自国でのレースで期待されていたニルス・ポリッツ(UAEチームエミレーツ・XRG)が遅れ、ドイツをホームとするレッドブル・ボーラ・ハンスグローエもロジャー・アドリアを失う。さらにはジュリアン・アラフィリップ(チューダー・プロサイクリングチーム)までもが集団のペースについていけず。頂上通過後のダウンヒルを終える頃には、集団の人数は35人程度となっていた。
この流れを構築したのは、チーム ジェイコ・アルウラーとコフィディス。丘越え後の平坦区間からはウノエックス・モビリティも加勢し、後続ライダーの集団復帰を許さない。春のクラシックで活躍したティボー・ネイス(リドル・トレック)やヨナス・ルッチ(アンテルマルシェ・ワンティ)、アントニオ・モルガド(UAEチームエミレーツ・XRG)らがおおよそ1分差で集団を追いかけたが、ハイペースを維持する最前線まで届くことは最後までなかった。
J SPORTS サイクルロードレース【公式】YouTubeチャンネル
【フィニッシュシーン】エシュボルン・フランクフルト|Cycle*2025
マンモルスハインには沿道に大勢のファンが押し寄せる
フィニッシュまで40kmを切り、最後の丘越えとなるマンモルスハインの3回目でニールソン・パウレス(EFエデュケーション・イージーポスト)がアタック。アルバート・ウィゼンフィリプセン(リドル・トレック)もカウンターから仕掛けると、集団は一気に活性化。急斜面から緩斜面へと切り替わったタイミングでマキシミリアン・シャフマン(スーダル・クイックステップ)が飛び出すと、グレゴール・ミュールベルガー(モビスター チーム)、アンドレアス・レックネスン(ウノエックス・モビリティ)がチェック。この勢いのまま下りへと移って、集団から15秒ほどのリードを得る。
ただ、ミュールベルガーとレックネスンがほとんど先頭交代に応じず、逃げに持ち込みたいシャフマンのねらい通りにはいかない。約10km先行したところで集団へと戻ることとなり、そこからは散発的に数人がアタックを試みるもどれも決まらない。ウノエックス・モビリティが先頭を固めた状態で、最終盤のフランクフルト市街地周回へと入った。
残り10kmを切ってエミル・ヘルツォーク(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)が何度かアタックしたものの、スプリントに向けスピードが上がる一方の集団を崩すのはさすがに難しい。マグナス・コルトで勝負するウノエックス・モビリティに、マシューズを軸とするチーム ジェイコ・アルウラーが応戦。コフィディスやモビスター チームも隊列を組んでポジションを上げると、いよいよ残りは1km。フレドリク・ドゥヴァーシュネスが長く牽き続けるウノエックス・モビリティが先頭を譲らず、コルトにとっては絶好の状況となった。
そして残り200m。先に腰を上げたのはマシューズ。続けてコルトが加速を開始するが、スプリント力で勝るマシューズにとっては、前にさえ出られればあとはフィニッシュラインへ突き進むだけ。コルトやヨン・バレネチェア(モビスター チーム)が食らいついたが、その位置をキープするので精いっぱい。マシューズが初のエシュボルン・フランクフルト制覇を決めた。
激しいチェイスで目が離せないレース展開
「ずっと自分にピッタリのレースだと思っていたんだ。だけどなかなか勝てなかった。やっとこの日が来たね。チームメートには感謝しかないよ……今日勝てたのは彼らのおかげだ」(マシューズ)
勝因を問われ、マシューズは「2回目の長い上り(フェルトベルク)」と答える。ここでのアシスト陣のペースメイクによって、大多数の選手が遅れていったことがその後のレース展開を優位なものにできたと振り返る。今回出場していた選手の中ではナンバーワンスプリンターと見られていたヤスペル・フィリプセン(アルペシン・ドゥクーニンク)もこの上りで力尽き、最終的にはリタイアしている。いまのプロトンにおいて、「上れるスプリンター」の顔でもあるマシューズにとっては、おあつらえ向きのレース展開だった。
今シーズンはミラノ〜サンレモで4位。アムステル・ゴールドレース5位、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ11位と、上位戦線にいながら表彰台まであと一歩届かずにいたが、ついにやってきた今季初勝利。
「この春はコンディション自体は悪くなかったのだけど、トップレベルには達していなかった。ただ、ここにきて急激に調子が上がってきて、今日は自信をもって臨めていたんだ。フランクフルトで勝てて、安心して春のレースを終えられるよ」(マシューズ)
2位のコルト、3位のバレネチェアもそれぞれに充実感を得てレースを終えた。「僕にとっては寒くならなかったのが好結果の要因」とコルトが言えば、「ドイツのレースはいつだって楽しい。ムードが僕を後押ししてくれる」とバレネチェアも続く。表彰台を押さえた3人はそれぞれに、持ち場でその力を発揮した。
サイクルロードレースシーンは、この一戦を機に、ワンデーレース主体からグランツールをはじめとするステージレースがメインのプログラムへと移っていく。最高気温29度と、さながら夏の陽気となったフランクフルト。熱き夏の戦いが音を立てて近づいていることをわれわれに実感させるものとなった。
文:福光 俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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