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サイクル ロードレース コラム 2025年4月22日

ウィメンズプロトンを率いるクライマー集結の“クイーン・オブ・ザ・ヒル” 難攻不落のユイの壁を一番に駆け上がるのは誰か!?【Cycle*2025 ラ・フレーシュ・ワロンヌ フェミニーヌ:プレビュー】

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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ラ・フレーシュ・ワロンヌ フェミニーヌ

昨年の勝者カタジナ・ニエウィアドマ

春のクラシックは後半戦、アルデンヌクラシックが進行中。ウィメンズシーンにおいて最も歴史あるレースのひとつ、ラ・フレーシュ・ワロンヌ フェミニーヌが4月23日に行われる。

1998年に初開催され、今年で28回目を迎える。この数年で男子レースとの併催や同時開催が急速に進むウィメンズレースシーンにあって、このラ・フレーシュ・ワロンヌ フェミニーヌは早くから行われてきた。もちろん、“女王”を決めるのはユイの壁。大観衆が「丘の女王」決定の証人ともなる。

「丘の女王」と書いたけれど、今年は特にその空気感が色濃くて、主催者であるA.S.O.(アモリ・スポル・オルガニザシオン)が“クイーン・オブ・ザ・ヒル”と打ち出して、ユイの壁決戦への注目度を高めている。それもそのはず、ウィメンズプロトンの今をときめくヒロインたちがこぞって、この一戦にフォーカスしているのだ。

ラ・フレーシュ・ワロンヌ フェミニーヌ

コースマップ

注目選手を挙げる前に、コースをチェックしておこう。ユイはベルギー南部、リエージュから40kmほど西に位置する街で、その中心に位置するグランプラス(大広場)から全行程140.7kmのレースはスタートする。1周約100kmの大周回をめぐってユイの街に戻ると、“ユイの壁”を含む小周回へ。ユイの壁は2回登坂することになり、1回目を上り終えたのち約40kmの小周回を走って2回目へ。この2回目の登坂がすべてでもあり、頂上に敷かれるフィニッシュラインめがけての激坂勝負が繰り広げられる。

ラ・フレーシュ・ワロンヌ フェミニーヌ

高低差図

公式データでは登坂距離1.3km、平均勾配9.6%とされるユイの壁。街を抜けて上り始めると、はじめの500mほどは5%ほどの勾配だが、中腹で急激に変化。最大で22%と言われる急斜面は、実際には29%に達しているとの説も。その後13%まで緩んで(それでも急坂だが…)フィニッシュラインへと到達する。勝負は2回目のユイの壁登坂で決まるのは濃厚で、優勝を狙う選手・チームはそれまでの間に逃げをキャッチし、最後の上り一本に賭ける態勢を整えることが求められる。そして、フィニッシュまで爆発力をキープした選手が“クイーン・オブ・ザ・ヒル”を戴冠する。

ラ・フレーシュ・ワロンヌ フェミニーヌ

難攻不落のユイの壁

実は、4月20日に行われたアムステル・ゴールドレース・レディースエディションでは、中盤に形成された最大23人の逃げがそのまま優勝争いへ転化。予想のはるか上を行く展開となって、各チームのエースクラスがメイン集団待機のままレースを終える事態となった。ただ、今回はコース的に考えても同様の流れにはなりにくく、何より多くのチームがエース勝負に持ち込もうと躍起になるはずである。

難攻不落のユイの壁に挑むライダーたち。昨年の勝者カタジナ・ニエウィアドマ(キャニオン・スラム・ゾンダクリプト)は、ここでの勝利から一気にツール・ド・フランス ファムでの個人総合優勝まで駆け上がった。今季はまだ静かな印象だが、そろそろトップギアに上げてくることだろう。

デミ・フォレリング(FDJ・スエズ)がアルデンヌクラシック3冠を達成したのが2023年。そのときは、ユイの壁一本でライバルに5秒以上の差をつける完勝だった。先日のアムステルで敗れたため2年ぶりのアルデンヌ3冠はならないが、今回は当然チームとして彼女を盛り立てることになる。力通り走れれば、ユイの壁を一番に攻略する選手であることは確か。

そのフォレリングの“師匠”であるアンナ・ファンデルブレッヘン(チーム SDワークス・プロタイム)が、4年ぶりにユイへ戻ってくる。2021年シーズン限りでの引退後はチームカーのハンドルを握り、当時自チームに属していたフォレリングらの走りをサポート。個人コーチも務め、フォレリングをプロトンのトップに押し上げた張本人でもある。もっとも、大会最多となる7度の優勝を誇り、フォレリングらの前にこのレースで一時代を築いたのがファンデルブレッヘン。風邪の影響でコンディションを落としているとの情報もあるが、チーム SDワークス・プロタイムはスーパーエースのロッテ・コペッキーをメンバーに加えて必勝態勢。ファンデルブレッヘンはアシストに回ることが想定される。

ラ・フレーシュ・ワロンヌ フェミニーヌ

クリケリオン・コーナーが立ちはだかる

今季はここまでコンスタントに上位を押さえているプック・ピーテルセ(フェニックス・ドゥクーニンク)も、上り一発勝負に適性を示す可能性のあるひとり。昨年のツールでステージ1勝を挙げ、いまやオフロードでは抜群の強さを誇る彼女が初挑戦となるユイの壁でどんな走りを見せるか。思わぬ化学反応がみられるかもしれない。

2位が1回、3位が3回と、優勝まであと一歩届いていないエリーザ・ロンゴボルギーニ(UAE・チーム・ADQ)の悲願達成はなるか。4月6日のロンド・ファン・フラーンデレンでの落車で脳震盪を起こし、慎重に復帰プログラムをこなしていたが、同18日のブラバンツ・ペイルでの劇的勝利で復調をアピール。アムステルではチームメートの勝負を託したが、走りそのものは問題なし。急速に調子が上がっているあたりがプラスに働くか。

レースフィニッシュは、現地時間で17時45分頃(日本時間24時45分頃)。この1時間前には男子レースがフィニッシュを迎えており、熱気そのままに“クイーン・オブ・ザ・ヒル”決定の瞬間が訪れる。

文:福光 俊介

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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