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サイクル ロードレース コラム 2025年4月13日

フェランプレヴォが初出場の「北の地獄」で逆転勝利、最後は独走で地元フランスファンが大歓声【Cycle*2025 パリ~ルーベ ファム:レビュー】

サイクルロードレースレポート by 山口 和幸
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パリ~ルーベ ファム

優勝フェランプレヴォ、2位ボルゲージ、3位ウィーベス

第5回パリ〜ルーベ ファムが2025年4月12日にフランス北部で開催され、チーム ヴィスマ・リースアバイクのポーリーヌ・フェランプレヴォ(フランス)が残り20kmでアタックを成功させて独走でフィニッシュした。フランス選手がこの大会を制したのは初めて。EF・オートリー・キャノンデールのレティツィア・ボルゲージ(イタリア)が58秒差で2位、チーム SDワークス・プロタイムのロレーナ・ウィーベス(オランダ)は1分01秒遅れのスプリント勝負でトップを取って、チーム ヴィスマ・リースアバイクのマリアンヌ・フォス(オランダ)とEF・オートリー・キャノンデールのアリソン・ジャクソン(カナダ)を制して3位に。世界チャンピオンのロッテ・コペッキー(ベルギー、チーム SDワークス・プロタイム)は中盤に主導権を握ったが最後は力を使い果たして2分04秒遅れの12位。

ロード、マウンテンバイク、シクロクロスの三刀流、まずはフェランプレヴォのこれまでの実績を世界タイトルだけに限定して列記しておきたい。もともとはロードをメインにしていて2014年に世界選手権エリート女子ロード優勝。2015年にシクロクロス世界選手権優勝。マウンテンバイク世界選手権ではXCO(クロスカントリーオリンピック)で2015、2019、2020、2022、2023年に優勝、XCC(クロスカントリークリテリウム=日本名称クロスカントリーショートトラック)で2022、2023年優勝。ミックスリレーで2014、2015、2016年、マウンテンバイクマラソンで2019、2022年に世界タイトルを獲得。五輪では2024パリで金メダル。またグラベル世界選手権でも2022年に優勝している。

2025年からロードレースに本格復帰し、すでに今季はトップレベルの走りを見せつけている。石畳を走るパリ〜ルーベは初参加だったが、「3年前にボーイフレンド(ディラン・ファンバールレ)が優勝しているので」とパリ〜ルーベには特別の思いを込めてチャレンジしたことを優勝後の記者会見で語っている。

J SPORTS サイクルロードレース【公式】YouTubeチャンネル

【ショートハイライト】パリ~ルーべ ファム|Cycle*2025

「ここ2日間体調が悪かったので、今朝はパリ〜ルーベに出場するかどうかさえ分からなかった。でも、『よし、とにかく行く。(チームメートの)マリアンヌのためにベストを尽くす』と覚悟を決めた。そして念願のスタートを切ることができただけで、本当にうれしかった」という。

レース当日は快晴で、絶好の気象条件だった。135選手が午後1時にドゥナンをニュートラルスタートし、10分後には郊外に出てリアルスタートした。コースは2014年と全く同じ148.5kmで、17カ所・合計距離29.2kmの石畳区間が待ち受けていた。

パリ~ルーベ ファム

序盤から逃げていた2選手

最初の20kmは逃げ集団を作ろうと絶えず試みる選手がいたが、最終的にリブ・アルウラー・ジェイコのクインティ・トン(オランダ)とウィンスペース・オレンジシールのオーレラ・ネルロ(ポーランド)が抜け出し、33km地点でメイン集団に対して1分のギャップを築いた。そのアドバンテージは50km地点で2分20秒にまで広がり、最初の石畳区間として66km地点から始まるセクター17に2分50秒先行して突っ込んだ。ここまで順調に走ってきた2選手だったが、石畳走行に手こずってアドバンテージを一気に失っていく。

セクター16になると初代女王のエリザベス・ダイグナン(英国、リドル・トレック)が時速49kmで引っ張るメイン集団から徐々に脱落選手が出現し、集団が二分される。それでも優勝候補は先頭を追うメイン集団の中でしっかり走っている。延長2.4kmのセクター16の終わりにさしかかり、先頭の差が1分に迫るとメイン集団から経験豊富なリドル・トレックのエレン・ファンダイク(オランダ)がアタック。残り62km地点で2人に合流して、先頭は3人になった。しかしメイン集団も27秒遅れで巡航していて、まだまだ勝負を分ける決定打は見られなかった。

パリ~ルーベ ファム

落車もあったが1人抜け出すことに成功したフェランプレヴォ

セクター13でファンダイクはここまで先頭で逃げていた2人を突き放して単独に。続くセクター12の入口でクラッシュが発生し、落車した選手の後ろを走っていたフェランプレヴォも停車を余儀なくされた。コペッキーは落車選手の前に位置していて、石畳の上でアタックを開始。これにチームメートのウィーベスが追従。残り52.6km地点で先頭を走っていたファンダイクに追いつき、後方から必死に追い上げてきたフォスとジャクソンが加わった。

セクター11をクリアした時点で先頭集団はわずか6人。コペッキーのペースが速く完全にレースを掌握しているように見えた。さらにコペッキーはセクター9で再びアタックを試みたが、抜け出すことができなかった。その石畳区間を過ぎるとすぐにフェランプレヴォを含む後続集団が先頭に追いついてきた。残り35km、残り8つのセクターを残して先頭集団は20人という大集団になった。

ファンダイクが最初に仕掛けたが成功せず。残り32km、セクター8の直後に2021年6位のエマセシル・ノルスゴー(デンマーク、リドル・トレック)が逃げ出し、残り28kmで後続に36秒を広げた。残り25km、優勝候補がひしめくグループからフェランプレヴォがついにアタックした。セクター6の入口で数mのリードを獲得し、さらに引き離してノルスゴーを追いかけ、すぐに追いついた。この先頭2人は、後続グループに27秒のリードを保ってセクター5に到着。ここでフェランプレヴォはすぐにノルスゴーを置き去りにした。残り10kmでノルスゴーに25秒、集団に1分差をつけた。

最後の数kmで集団はノルスゴーに追いついたが、フェランプレヴォには届かなかった。ルーベのセクター1、延長0.3kmの短い石畳を猛スピードで駆け抜けたフェランプレヴォは、歓声を上げるフランスファンの熱狂的な拍手の中、単独でベロドロームを周回した。

パリ~ルーベ ファム

初出場でみごと独走勝利

「パリ〜ルーベの参加は初めてで、もしかしたらこれが最後かもしれない」と優勝したフランスのスーパースター。

「石畳の区間ではとにかくサバイバルすることだけに集中していた。セクター12の手前でクラッシュしてしまったので、追いかけなければならなかったが、マリアンヌが先頭を走っていたので、どうしようか迷っていた。トップ集団に合流してからはとにかくアタックを仕掛け、その後は最後まで全力で走り続けた。3年前にボーイフレンドが優勝し、今度は私が優勝できた。本当に信じられない気持ち!」(フェランプレヴォ)

文:山口和幸

山口 和幸

ツール・ド・フランス取材歴30年超のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、東京中日スポーツ、ダイヤモンド・オンライン、LINEニュース、Pressportsなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)、講談社現代新書『ツール・ド・フランス』。青山学院大学文学部フランス文学科卒。

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