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ポガチャルがロンドで2年ぶり2度目の栄冠、波状攻撃で強敵ファンデルプールらをふるい落とす【Cycle*2025 ロンド・ファン・フラーンデレン:レビュー】
サイクルロードレースレポート by 山口 和幸優勝タデイ・ポガチャル、2位マッズ・ピーダスン、3位マチュー・ファンデルプール
第109回ロンド・ファン・フラーンデレンが2025年4月6日にベルギーのフランドル地域で開催され、UAEチームエミレーツ・XRGのタデイ・ポガチャル(スロベニア)が独走で2年ぶり2度目の優勝を果たした。1分01秒遅れの2位にリドル・トレックのマッズ・ピーダスン(デンマーク)。大会単独最多の4勝目を狙ったアルペシン・ドゥクーニンクのマチュー・ファンデルプール(オランダ)は3位。地元ベルギーのワウト・ファンアールト(チーム ヴィスマ・リースアバイク)は4位。
世界チャンピオンのジャージを着用したポガチャルが、ファンデルプールに敗北したミラノ〜サンレモ以来のスタートラインに登場した。「目標は勝つこと。(合計3回上る)オウデ・クワレモントの1回目から勝負をしかける作戦だ」。レース後の記者会見でポガチャルが戦いの前の胸中を語っている。ライバルは数多い。鉄壁の布陣で臨むチームがどうやってポガチャルを有利な展開に持っていけるか? 気温20度近くの快晴の中でレースがスタートした。
序盤は強い向かい風。数人のアタッカーが逃げを試みたがなかなか成功しない。長い膠着状態が過ぎて、8選手が抜け出してなんとか第1集団を形成することができた。チーム ジェイコ・アルウラーのエルマール・ラインダルス(オランダ)、チーム ピクニック・ポストNLのショーン・フリン(英国)とティモ・ローセン(オランダ)、イネオス・グレナディアーズのコナー・スウィフト(英国)、Q36.5プロサイクリング チームのローリー・タウンセンド(アイルランド)、XDS・アスタナ チームのアレッサンドロ・ロメレ(イタリア)、チューダー・プロサイクリングチームのマルコ・ハラー(オーストリア)、チーム フランダース・バロワーズのヴィクトル・フェルクーイェ(ベルギー)だ。EFエデュケーション・イージーポストのマックス・ウォーカー(英国)とワグナー・バザン・WBのイェンス・レンデルス(ベルギー)もこの動きに加わろうとしたが、これは失敗した。
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【ゴールシーン振り返り】ロンド・ファン・フラーンデレン|Cycle*2025
今年はブルージュから出発
UAEチームエミレーツ・XRGはレースの早い段階で、ティム・ウェレンス(ベルギー)とジョナタン・ナルバエス(エクアドル)がクラッシュによってリタイアを余儀なくされた。これはポガチャルにとっては想定外だ。しかし、ニルス・ポリッツ(ドイツ)とフロリアン・フェルミールス(ベルギー)がクラッシュによる遅れを挽回し、世界チャンピオンを助けるためにメイン集団に戻ったのは幸いだった。
逃げる8選手を追うこのメイン集団はアルペシン・ドゥクーニンクのシルヴァン・ディリエ(スイス)とUAEチームエミレーツ・XRGのミッケル・ビョーグ(デンマーク)が先頭に立って主導権を握り、最大でも4分35秒の差にとどめて逃げをコントロールした。こうしてレースはフィニッシュ地点オーデナールデの近郊に突入し、12カ所・合計16回の登り坂と7つの石畳区間が始まると緊張が急激に高まる。勝負どころはポガチャルが名指ししたオウデ・クワレモントと、そして2回上るパテルベルクだ。
ポガチャルにとって最大の難敵はファンデルプールだ。ミラノ〜サンレモではファンデルプールを突き放すことができず、最後のゴールスプリント勝負で敗北した。ところが残り126km地点、ファンデルプールがまさかの落車に巻き込まれた。一時はポガチャルがいるメイン集団と1分の差がついたが、チームメート2人の援護でファンデルプールは集団に復帰することができた。一緒に転倒したチーム ピクニック・ポストNLのジョン・デゲンコルプ(ドイツ)はリタイアしているので間一髪の出来事だったに違いない。
フィニッシュまで100kmを残してレースは一気に活性化した。チーム ヴィスマ・リースアバイクのティシュ・ベノート(ベルギー)は、モーレンベルグの後でアタックを開始し、グルパマ・FDJのシュテファン・キュング(スイス)らがこれに加わった。イネオス・グレナディアーズのフィリッポ・ガンナ(イタリア)を含むグループが残り93km地点で前を行く第1集団に追いついた。
快晴のロンド・ファン・フラーンデレン
UAEチームエミレーツ・XRGは依然としてメイン集団のペースを支配し、ポガチャルが優勝のチャンスを失わないようにした。21歳のアントニオ・モルガド(ポルトガル)の走りはすさまじく、残り69kmでペースが落ちたとき、再び先頭に立ち、もう一度決定的な牽引力を発揮。ポガチャルは頭を縦に振って笑顔をみせた。
およそ5km走った後、モルガドは最後のパワーを使って集団を加速させ、ポリッツにバトンチェンジ。ポリッツはサドルから立ち上がり、メイン集団をさらにスピードアップさせた。あまりの速さにメイン集団はオウデ・クワレモントの2度目の上りの手前でバラバラになるほどだった。ここから落車による遅れから復帰していたフェルミールスが先頭に立ち、ポガチャルのこの日最初の攻撃のお膳立てを整える。
オウデ・クワレモントの2度目の上りで、いよいよポガチャルが動いた。ポガチャルが猛烈なアタックを開始すると、他の優勝候補も反応した。ポガチャルの後を追うことができたのは、ファンアールトとチーム ヴィスマ・リースアバイクのマッテオ・ジョーゲンソン(米国)、ファンデルプール、ピーダスンだけだった。
残り44km地点にある石畳の激坂、コッペンベルクは優勝候補の最初の激戦場となった。ポガチャルが再びアタックし、ファンデルプールだけが追従できた。有力選手らは逃げ集団を捕らえ、さらなるアタック合戦を展開する。残り38kmでポガチャルはファンデルプール、ピーダスンとともに抜け出す。ファンアールトとリドル・トレックのヤスペル・ストゥイヴェン(ベルギー)はオウデ・クワレモント3回目の上りの直前にやってきた。
結果的に残り56kmのオウデ・クワレモントの2度目の上りから、残り18kmのオウデ・クワレモントの最後の上りまでの間、ポガチャルは驚異的な攻撃を連発し、ファンデルプールも負けなかった。優勝はこの2人に絞り込まれたように見えたが、ピーダスンとファンアールトも全力を尽くして追いついてきた。
2年ぶり2度目の栄冠は18kmの独走勝利
そして最後のオウデ・クワレモントとパテルベルクの2連続上りで優勝の行方が決定的となった。先手を打ったのはファンアールトだったが、ポガチャルのカウンターアタックで集団は崩壊。最初は対応できそうだったファンデルプールもついにここで遅れた。残り13kmのパテルベルクでポガチャルは25秒リード。フィニッシュまでポガチャルは捕まらないように必死に走った。ファンアールト、ファンデルプール、ストゥイヴェン、ピーダスンが追う。オーデナールデまでは1人対4人の状況だったが、ポガチャルがその差を広げてミンデルブローデルス通りの直線路へ。
2023年の初優勝のときと同じように、独走を決めたポガチャルは振り返ることなくフィニッシュラインで両手を挙げた。残りの表彰台を争うためにピーダスンとファンデルプールがファンアールトを置き去りにしてフィニッシュした。
世界チャンピオンのポガチャルがオウデ・クワレモントを巧みに利用してライバルを倒した18km独走劇。2023年の勝利に続き、2度目のロンド・ファン・フラーンデレンのタイトルを獲得。同時に8度目のモニュメント優勝であり、チームとしての今シーズン24勝目となった。
「目標は勝つことだったが、それを達成するのは大変だった。それでも最終的にチームはそれを成し遂げた。落車という不運もあったけど、チームと今日のレースのやり方をこれ以上ないほど誇りに思う。この世界チャンピオンジャージを着てロンド・ファン・フラーンデレンに勝てて本当にうれしい」とレース後にポガチャルが語っている。
「チーム内でクラッシュがあったにもかかわらず、オウデ・クワレモントから勝負をする計画通りに進んだ。フロリアン(フェルミールス)はクラッシュ後になんとか追いついてきて、オウデ・クワレモントでギリギリのタイミングでうまく動いてくれた。ティム(ウェレンス)とジョニー(ナルバエス)をクラッシュで失ったのは痛かったが、チームは決してあきらめなかった。ミケル(ビョーグ)、アントニオ(モルガド)らチームメイト全員が全力を尽くして計画を実行し、挫折しながらも完璧にやり遂げた。彼らに敬意を表したい」(ポガチャル)
文:山口和幸
山口 和幸
ツール・ド・フランス取材歴30年超のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、東京中日スポーツ、ダイヤモンド・オンライン、LINEニュース、Pressportsなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)、講談社現代新書『ツール・ド・フランス』。青山学院大学文学部フランス文学科卒。
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